歌うように晴れたら 第1話
作者:ススキドミノ
【※最初に】
本台本は有料上演配信使用権付き台本の販売がございませんので、基本的には読み合わせや友人同士の声劇などでお使いください。
登場人物
渡会亮(わたらいりょう):男子高校生。5組。バレー部。
和久井瞳(わくいひとみ):女子高校生。5組。吹奏楽部。
飯塚奏海(いいづかかなみ):女子高校生。5組。女子バスケットボール部。
※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)
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<五組・教室>
瞳:また隣になったね。
亮:おう。
瞳:また、よろしく。
亮:こっちこそ、よろしく。
奏海:うわ! でたぁ……窓際組!
あまりにも見慣れた光景すぎて、進級した気がしないんだけどー。
瞳:仕方ないでしょ、和久井と、渡会なんだから。
亮:うちの担任、席順は出席番号で決めるからな。
奏海:にしても……これで二年連続でしょ?
飽きない?
瞳:奏海だって席一緒じゃないの。
奏海:ん? いやいや、私は変わってもらったけど。
亮:は? 席勝手に変わるのアリなのか?
奏海:アリだけど……え、知らなかった?
瞳:……私は知らなかった。
亮:俺も。
奏海:え。じゃあ……変わるの?
間
瞳:……いや、私はいいかな。窓際の景色、好きだし。
亮:……俺も、別に困ってないしな。
奏海:……ふーん。
瞳:……ふーんって何よ。
奏海:瞳と渡会君の間ってさ、なんか二人だけの空気感あるよね。
瞳:はあ?
亮:何の話だよ。
奏海:この機会にはっきり言わせてもらうとさ!
私! 二人が密かに付き合ってるんじゃないかって疑ってるんだけど!
間
瞳:……昼休み終わるし、ご飯食べよ。
亮:ああ……そうだな。
奏海:流さないでよ! っていうか、ほら! また二人の世界じゃん!
瞳:あのねえ奏海……私はともかく、飯塚君に迷惑だからやめて。
奏海:う……! なんかマジな感じで注意された……!
亮:まあ、俺は言われる分には気にしないけどな。
瞳:……そう?
亮:否定すればいいことだし。
何も話題出されないよりはマシだろ、そういうの。
瞳:うん、そうかもね。
奏海:ほら! こっちが隙を見せたらすぐラブい臭い出す!
ラブ臭がとんでもないよ! むせるよ!
間
亮:あ……今日、卵焼き甘いやつだ。
瞳:いつもしょっぱいやつじゃなかった?
亮:妹が母に甘いのがいいって言ってたから、そっちに合わせたのかもな。
瞳:飯塚君、しょっぱいのが好きなのに、ちょっと残念だね。
亮:まあ、どっちもそんなに変わんないけどな。
奏海:またスルー? っていうか、え? 何? そのお互いのことは何でも知ってますーみたいな会話は……!
亮:別に、知ってるってほどでもないけどな。
奏海:……じゃあさ、飯塚君に問題! 瞳の好きな食べ物は?
亮:は? ……海苔とオムライスだろ。
奏海:……飯塚君の誕生日は? 瞳、知ってる?
瞳:六月十六日。
奏海:飯塚君、瞳の家族構成は?
亮:両親と、兄と妹。
奏海:瞳……! 飯塚君の――
瞳:ご両親とお姉さんが一人。
亮:おお、正解。
瞳:っていうか、本当に昼休み終わっちゃうよ。
ほら、奏海も食べなって。
奏海:ううう……! なんだ……この敗北感は……!
……食べるけど……!
<奏海は瞳の机に弁当を広げる>
奏海:付き合ってるってのは冗談だとしてもさぁ……。
なんかいいよね、二人の関係。
瞳:だから関係とか言わないの。
奏海:アニメとかでもさ? 窓際の後ろの席がテーマになってない?
男女二人でいちゃいちゃとかさぁ。
瞳:何でそんな絡んでくるのかと思ったら……アニメに影響されたわけね。
亮:まあ、確かに教室の中でも、離れ小島みたいな所があるからな。
題材にはいいんだろ。
瞳:何かあった時、必然的にお互い頼らざるを得ないしね。
奏海:何かあった時って、例えば?
亮:あー……教科書忘れたときとか?
奏海:ベタだなぁ。他には?
瞳:そう言われると……席の位置で、あんまり特別なことはないかも。
奏海:そこまでお互いのことわかってるわけだし、なんか秘密があるんじゃないの?
瞳:……知ってるっていっても、誕生日とか家族構成ってそんなにプライベートな情報じゃないし。
奏海:確かに。じゃあさ、瞳って飯塚君の好きな女の子のタイプ知ってる?
亮:おいおい……何聞いてんだよ。
瞳:……知らないわよ。
亮:ちなみに、俺も和久井の好きなタイプは知らないからな。
奏海:うへー! なーんだ! やっぱりそういうのは話さないんだ。
なんでも知ってるわけじゃないもんねぇ!
瞳:何か腹立つ言い方ね……!
奏海:へへへー! 始めて勝った気がするー。
亮:……好きな色は青。海外旅行するならイタリア。
瞳:……え?
亮:猫よりも犬派。好きなのは数学だけど、得意なのは地理。
休みの日は家に居たいタイプ。
奏海:い、飯塚君?
亮:和久井、合ってるか?
瞳:う、うん。
奏海:な、なんだ……! 何が起こったんだ……今……!
亮:……まあ、知らないことはあるけど、知ってることは知ってるってことだよ。
奏海:み、見せつけられたぁ……!
瞳:飯塚君って……時々予想外なことするよね。
亮:何でも予想通りじゃつまんないだろ。
瞳:じゃあ、私も一つ教えてあげる。
奏海:な、何……! これ以上何で殴ってくる気……!
瞳:窓際の後ろの席だから、できること。
<瞳は微笑んで隣の亮を見つめる>
瞳:この席だと……じっと横顔を見てても、誰にも気づかれないんだよ。
亮:……それは、予想外すぎた。
瞳:ふふふ、でしょ。
<奏海は机に突っ伏している>
瞳:奏海? 食べないの?
奏海:色々お腹いっぱいだよぉ!
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