ザックスアパートメント
作者:ススキドミノ


クリスティン・カーター(クリス):精神分析医としてアイザックに面会する。
アイザック・アークエット(ザック):19歳男性。連続殺人犯として拘留されている。多重人格の主人格と目されている。
ブラッドリー・フィッツシモンズ(ブラッド):アイザックの人格の一人。
ジル・ジャーヴィス(ジル):アイザックの人格の一人。



※作中に暴力的な表現や残酷な描写が含まれます。

※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)




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<打ちっぱなしの尋問室内>
<手錠で拘束されたアイザックはゆっくりと顔を上げる>
<鉄のドアが開くと、パソコンを脇に抱えたクリスが入ってくる>

クリス:こんにちは。

ザック:……あなたは?

クリス:話す前に状況を整理しましょう。
    あなたはアイザック・アークエット。
    男性。十九歳。ノースバーンズグレイで、車の修理工をしている。

ザック:……はい、そうです。

クリス:二十四日の夜、ウエストレイク沿いのモーテルに泊まっていたところ、州警察によって逮捕された。
    容疑は殺人。間違いないわね。

ザック:ッ……僕はやってない!

クリス:落ち着いて。いい?
    ここでの会話はすべて録音されている。
    これからここで話すことは、あなたの今後を決める際に重要な資料となる。
    特に、検察側はどんな手を使ってでもあなたを有罪にしたいということ。
    私があなたの味方――になるかどうかは、あなた次第なの。

 <クリスは椅子に座る>

クリス:私はクリスティン・カーター。
    精神分析医よ。

ザック:精神分析医?

クリス:あなたが小さい時、あなたを担当していた精神科医……。
    ヒクソン・レイノルズ医師の資料を読んだの。

ザック:先生は……死んだ。

クリス:ええ、そうね。
    随分と探したわ。彼が受け持っていた患者の情報は彼の死後、多くが失われたから。
    でも、あなたのことは気にかけていたようでね。
    彼が客員教授として働いていた大学に、君のカルテのコピーがいくつか残っていたのよ。

ザック:勝手に見たのか。

クリス:ええ、そうよ。
    でも、私がそんなことを気にするように見える?
    それにあなたに掛けられた容疑は――殺人なのよ?

 <クリスはパソコンの画面をザックに向ける>

クリス:『アイザック・アークエットは、解離性同一症(かいりせいどういつしょう)である。
     同患者の症例の多くは、自身の受ける精神的苦痛を和らげるために、無意識に行う防衛的適応であると考えられているが、彼の症状は常軌を逸している。
     彼の頭の中には常に無数の人格が存在しており、それぞれが異なった性質や性格をもっている』

ザック:……信じてるんですか?

クリス:ええ。信じるわ。

ザック:警察も、その他のスーツ達も、みんなして演技だって言って。
    僕は違うっていったけど、でも――

クリス:時間がないのよ。アイザック。

ザック:ああ……それで、あなたは僕に何をききたいんだ。

クリス:何って、すべてを。

ザック:すべて?

クリス:ええ。すべてを聞かせて頂戴。
    先ずは、そうね。あなたの小さい頃の話を。

ザック:小さい頃の……? なんでそんなことを。

クリス:解離性障害(かいりせいしょうがい)の多くは、幼い頃に受けた心的外傷やストレスによる防衛本能によって発症すると言われているの。
    アイザック。あなたがもし本当に別の人格を持っているのなら、そうなるきっかけがあるはずなのよ。

 間

ザック:ブックリールの農場で、僕は父と母と……ジュリアンと住んでた。

クリス:続けて。

ザック:その農場は叔父さんの持ち物で、叔父さんはいつも父さんを煙たがってた。
    父さんも、叔父さんの悪口をよく言ってた。
    僕は学校には行かせてもらえなくて、母さんが勉強を教えてくれてた。
    勉強以外の時は、農園で働いていた。

クリス:物心ついた頃からその農場で?

ザック:ああ、そうだよ。

クリス:何か印象に残るような出来事はある?
    例えば……ご家族のこととか。

ザック:……父が……。

クリス:お父さんが?

ザック:父さんが、母さんを殴ってた。

クリス:それはいつ?

ザック:九歳の頃だった。確か夏前だった。
    牛小屋の掃除をした後、一度家へ帰ったんだ。それで、キッチンで。

クリス:どうしてお父さんはお母さんを?

ザック:母さんが、叔父さんに色目を使ってるって。
    何度も何度も殴ってた。僕はとっさに、逃げ出したんだ。
    そうしたら、父さんは怒号を上げて追いかけてきたんだ。

クリス:それで?

ザック:納屋に駆け込んで、ずっと頭を抱えてた。
    それで……どれくらい経ったかわからないけど……。

クリス:その時に、どう思ったの?

ザック:目が覚めると……父さんと母さんは怯えた顔で僕を見てた。
    リビングは荒れ放題で、僕は――それが自分がやったことだって後で聞いたんだ。

クリス:……それが初めて他の人格が現れた瞬間……?

ザック:わからないけど……僕は……僕は――

 間

クリス:アイザック。

 <ザックは俯いたまま黙り込む>

クリス:アイザック? どうしたの?

ブラッド:つまりはそういうことだよ。クリス。

クリス:……アイザック?

 <ザックの表情が代わると、流暢なイギリス訛りで続ける>

ブラッド:君達のやり方は実にこう……高圧的だ。
     質問に質問、また質問。

クリス:別人格が出てきたようね。

ブラッド:さてどうかな精神科医のクリスティン・カーター。
     君の目に今私はどう映っている。
     答えるまでもない、この瞳には君が映っている。
     君が私達を見つめているようにクリス。
     私達も君を見つめている。

クリス:そのイギリス訛り……あなたは……。

 <クリスは手元のメモを開く>

クリス:ブラッドリー・フィッツシモンズ。

ブラッド:一度で当てるとは腕がいい。
     いや、腕が良かったのはヒクソン医師か。

クリス:あなたはイギリス人で、とても聡明だと書いてある。
    それに医学の知識に精通しているとも。

ブラッド:彼とは色々話したよ。彼は気のいい男だった。
     死んだと聞いたのはついさっきだけどね。残念なことだ。

クリス:彼とは親しかったようね。
    ヒクソン医師もあなたとは特に話をしたと残しているわ。

ブラッド:ヒクソン医師は慢性的に気管に問題を抱えていたようでね。
     肥満体型で、喫煙の癖もあったし、ストレスが多い職業についていた。
     心身ともに健康的とは言い難い状況にありながら、彼はザックや私達について親身になってくれた。
     ご冥福をお祈りするよ。

クリス:……本当に、違う人間が喋っているみたいだわ。

ブラッド:おや……君もまだ、ザックが演技をしているとでも言いたいのかな?

クリス:解離性障害の患者は何人も見てきた。
    でも、ザックのように全く別人のように振る舞うような例は見たことがないのよ。

ブラッド:振る舞う、という考え方が間違いなのだよ。クリス。
     我々はひとりひとりが一つの人格であり、ひとつのアパートに住んでいる。
     アイザック・アークエットはあくまでそのアパートの管理人だと思ってくれればいい。

クリス:いいわ。じゃあ……そのアパートには何人の住人がいるのかしら、ミスターブラッドリー。

ブラッド:それは私にもわかりかねるよ。十か、十五か、或いは――それ以上かもしれない。
     だが――そうだな。今ザックの精神はひどく不安定な状態にある。
     だからこそ、私のような人格が呼ばれた。

クリス:呼ばれた……? 彼が自分の意思で人格を呼んでいるというの?

ブラッド:彼にその認識はなくても、実際に私はこうして人格の中心(スポット)にいる。

クリス:……あなたはアイザックの人格のまとめ役だという認識でいいかしら。

ブラッド:それはザック自身が決めることだとも。
     彼は時にすべての人格を制御できるわけではないし、頼れる人格というのもそう多くない。

クリス:頼れる人格、ね……。

ブラッド:ああ、そうとも君達のやり方は、酷い。

クリス:それは、アイザックに対して?

ブラッド:『芝居をするなザック!
      ふざけるのはよせザック!
      どうして殺した。か弱い少女や気の毒な青年をなぜ殺したザック!』
      君達のやり方はまるで……そう! 人の心を殺すような物言いだ!
      決めつけでひとを追い詰める。

クリス:お言葉だけど……警察側の尋問については私には関係がないことだわ。

ブラッド:まさにそれだ。

クリス:なんですって……?

ブラッド:……君達はザックを一括にして責めている。
     だがそれは、お門違いというものだクリスティン・カーター医師。
     それは君達全員がまるザックが殺人犯であるかのように、こんな薄汚い気の狂うような部屋に幽閉することと同じだ。
     理不尽で、残忍な心の殺人だよ。

クリス:そんな言葉で私を責め立ててもここからでることはできない。
    ここからでるには、色々な材料がいるの、わかるでしょう?
    それに私はアイザックを救う鍵を探しにきた。
    だからこそあなた――いえ、アイザックのアパートに住まうすべての人格に、協力を求めているのよ。

 間

ブラッド:だそうだ。ザック。
     彼女の話なら、聞いてみるべきだと思うけどね。

クリス:ザック……? 彼もそこにいるの?

 <ブラッドの代わりにザックが出てくる>

ザック:……僕は、やってない。

クリス:アイザック……。いえ、ザックと呼んでもいいかしら。
    今もスポットと呼ばれる人格の中心に意図的にいることができるということ?
    自分の中で必要に応じて人格を呼び出すことができるの?

ザック:もう質問は嫌だ……!

クリス:だとしても、あなたには聞かなくてはならないことがたくさんあるの。

ザック:話せることは話してきたさ!

クリス:だとしたらそれを確認するだけでもいい。
    私がそれを聞かなければ、意味がないの。

ザック:……他に何が知りたいんですか。

クリス:じゃあ貴方と他の住人との関係性を教えて。

ザック:昔からたまに……記憶が無くなることがあったんだ。
    小さい頃、それで父さんと母さんは僕を病院へ連れて行った。
    僕のことを、恐れてるみたいだった。
    それで、僕の頭の中にいくつかの人格があることに気づいたんだ。

クリス:中には凶暴な人格もいた。
    あなたが”アウトサイダー”と呼んでいる人格達ね。

ザック:リック、ジェナ、ボブ・ロッド……彼らはチンピラみたいなやつらなんだ。
    高校の時は、彼らが表に出てくる時期があった。
    彼らは暴力事件や窃盗を繰り返して……僕は何度も捕まった。
    一年と少し更生施設にいるうちに、ついに彼らを部屋に閉じ込めることができた。

クリス:スポットから追い出したということね。

ザック:それからはあまり問題は無かったんだ。
    他の人格を統合してくれる人格もいるから。

クリス:それは一体誰?

ザック:ブラッドと、ジル。

クリス:……ジル?

 <クリスは資料をめくるが、ジルの名前はない>

クリス:その、ジルとは話すことはできる?

ザック:ああ。彼女なら……いつもいるよ。

 <ザックからジルに切り替わる>

ジル:どうも。先生。

クリス:貴方がジル……女性なのは声をきけばわかるわ。
    本当に話し方だけではなく、声も変わってしまうのね。

ジル:そうね。ザックは特別なの。
   そして私達はもっと特別。

クリス:ジル。貴方は、今回の事件についてどう考えているのかしら。

ジル:……連続殺人事件?

クリス:ええ。三週間前、カルービアのクラブのトイレで未成年の女性、マリア・パットソンが刺殺されたのを皮切りに、隣町の郊外の林で郵便配達員のグレッグ・クインが絞殺体で見つかった。
    そして五日前、ウエストロッドフィールドに駐車していた車の車内で、会社員のベネット・グレイが刺殺されているのが見つかった。    

ジル:それで、どうしてザックが拘束されたの?

クリス:現場周辺の目撃情報……それと。     ベネット・グレイの殺害現場に付着していた血痕のDNAが、ザックのものと一致したからよ。

ジル:それだけ?

クリス:血液サンプルは決定的な証拠よ。
    疑問の余地はない。

ジル:その血痕が仮にザックのものだとしても、いつ付着したものなのかもわかるもの?

クリス:ええ……死亡推定時刻からいって、犯行時についていたものであることはわかっているわ。

ジル:なら、そういうことよ。

クリス:どういうことなのか、教えてもらえるかしら。

ジル:クリス……今あなた、嘘をついた。

クリス:嘘なんてついてないわ。

ジル:それに、血痕の付着した箇所については意図的に隠したわよね。

クリス:……それは。

ジル:クリスティン・カーター……精神分析医と言っていたけど……そうじゃない。
   あなた、警察の人間ね。

 間

ジル:実際に中立である精神科医を間に入れると、情報が秘匿され法的な証拠を掴めるか不安であり、また精神的な問題が認められれば、ザックを有罪にする前に逃してしまうかもしれない。
   そこであなたが選ばれた。精神分析についての知識はあなたの持つ学位か何かが証明してくれるのでしょうね。
   あなたの目的は……精神科医を偽り、ザックの犯行の証拠を掴むための形を変えた尋問ってところかしら。

クリス:それは――

ジル:いいのよクリスティン。私の目はごまかせない。
   そうね……なら、頭を使ったご褒美に、少しだけ情報をあげる。
   ザックの血痕がついていたのは、被害者の爪の中。
   付着したのは夕方の十六時前。
   ベネットはレンタルビデオショップの店員で、勤務終わりで駐車場に向かう途中、しつこくナンパされたことに腹を立て、相手の腕を力いっぱい引っ掻いた。
   その数時間後、彼女は車内にて何者かに殺害された。

クリス:……つまり、そのナンパをしたのがザックということ?

ジル:正確には違うわ、ナンパをしたのは――

 <ジルは妖艶な表情で唇を舐める>

ジル:私よ。

クリス:……その証言だけでは何も覆らないわ。

ジル:ザックは今までも問題を起こし、逮捕されたことも何度もある。
   指紋やDNAも採取されているでしょうし、殺人犯として検挙されるのはなんら不自然ではないわ。
   でも、証拠は爪の中の血痕だけ――正直に言ってご覧なさい。
   「ザックが犯人であって欲しい」そう思っているだけでしょう?

クリス:ジル……あなたの情報だけが、ヒクソン医師のカルテに無いの。
    あなたは一体何者?

ジル:あの医師は少し面倒だった。
   『貴女と違って』彼は本物の精神科医であり、他の人格とも上手くコミュニケーションが取れたから。
   だから彼と話すのは嫌だったのよ。
   それに――私は女性が好きなの。貴女みたいに美しい女性なら尚更ね。

クリス:……つまり貴女は、ザックは今回の殺人事件の犯人ではないといいたいのね。

ジル:そうは言ってないわ。

クリス:どういうこと?

ジル:ふふふ……クリス、私と取引はいかが?

クリス:取引……?

 <瞬間、ジルの表情が変わる>

ザック:ダメだ!

クリス:ジル? 何がダメなの?

ザック:違う! 僕は――とにかく、取引を呑んじゃいけない!

クリス:ザック……? あなた、ザックね!

ザック:彼女の言うことを信じたらだめだ!
    僕が思っていたのと違った!
    彼女は嘘をつこうとしている!

クリス:一体どういうことなのか説明して!

 <ザックは震える体を机に押し付けた>

ザック:う、ううう……!
    僕を切り離すつもりか……!

クリス:ザック! 一体どういうこと!
    ザック!

 <ブラッドがゆっくりと顔を上げる>

ブラッド:スポットの取り合いだよ。
     これは面白い事態だ。

クリス:スポットの取り合い……。

ブラッド:ご覧の通り、私たちはそれぞれが別の人格であり、それぞれに主張が異なる集団だ。
     だからこそ、こういった事態が起こり得る。

クリス:ブラッドリー・フィッツシモンズ……。
    今、ザックとジルと貴方がスポットを取り合っているということね。

ブラッド:如何にも。私がもっとも冷静であるところから、ここでまとめ役としてスポットをとったというわけだよ。

クリス:わけがわからなくなってきたわ……!

ブラッド:まともな精神で私達を推し量ることはできないんだ、クリス。
     くだらない先入観は捨てて望むことを薦める。
     ただ……話の流れをみるに、どうやら君は本当に医師ではなかったようだ。

クリス:……私が何者かなんてことはどうでもいいでしょう。

ブラッド:私達にとってもそれが都合がいい。

クリス:都合……?

ブラッド:とにかく、真実を知りたければ取り繕うべきではない。
     ここでは何者も正直ではいられないのはわかるだろう。
     考えて、考えて、考えるんだクリス。
     私達の発言の嘘と、世界の在り方を。

クリス:正直に言うわ。貴方達はたちの悪い悪夢のような存在だわ。
    わからないことだらけよ……。
    ……ブラッドリー。ジルとは、何者なの?
    彼女の情報だけ、ヒクソン医師のカルテにも存在しないのよ。

ブラッド:それは本人の口から聞くといい。
     ……ザックは怒りに震えているが、私としては彼女がなにを言うのか興味があるものでね。

 <ブラッドからジルに入れ替わる>

ジル:……全く。ブラッドったら、余計なことを言ってくれるわね。

クリス:ジル……あなたは一体、何をしたというの?

ジル:……私の名前はジル・ジャーヴィス。

クリス:ジル・ジャーヴィス。

ジル:あなたにとってはこっちの名前の方が聞き馴染みがあるかもしれない。
   ”グリムヒルド”

クリス:グリムヒルド……?

ジル:死体の唇を、真紅の口紅で彩ることからその名がついた。
   四年前に東海岸で八人の女性を殺害したシリアルキラー。

 <クリスは椅子を倒して立ち上がる>

クリス:なんなの……何よ……! どうしてグリムヒルドの名前がここで――

ジル:どうして? 簡単なことよ。
   未だその足取りが追えない恐怖のシリアルキラーは、私だからよ。

クリス:嘘でしょ……!

ジル:……嘘ではないわよ。クリス。
   その身体に血のドレスを着せて、美しく化粧をしてあげたのは私。

クリス:ッ! それを鵜呑みにするほど私は馬鹿じゃない……。
   大体、どうしてそれを今私に明かす必要があったの……!

ジル:別に明かすことは大した問題ではないの。
   なぜなら、証拠があるのならもうすでに捕まっている。

クリス:それを信じるも信じないも、私次第ということ?

ジル:ええ。だって、いくら貴方がこのことを調書に書いたところで、それが真実だという証拠が出てくるわけではないから。

クリス:もし、証拠が見つかれば――

ジル:当たり前のことを言わないで頂戴。
   そんなことよりも、取引よ。

クリス:頭がおかしくなりそうよ……!
    一体何をしろというの?

ジル:私達の存在を認めなさい。

クリス:……どういうこと?

ジル:私達が裁判に出席し、証言をする権利が欲しいのよ。

クリス:そんなこと、できるわけがないでしょう……!
    貴方は、アイザック・アークエットなのよ!

ジル:ザックスアパートメントの住人として言わせてもらえば、それは違う。
   我々はそれぞれが個としての存在であり、その存在を認められることこそが私の望みなのよ。
   今回の件についての証言も、我々のうちの誰かが真実を握っている可能性が高い。
   だとしたら、裁かれるべきはその人格ということになる。

クリス:自分がシリアルキラーだと自白した後に、それを言うの……!?

ジル:人間はなぜ罪を犯すのか、考えたことはある? クリスティン。

クリス:一体何を――

ジル:原罪とは、アダムとイヴの犯した罪を引き継いだものであるという説があるわ。
   人間の性と、不完全性を象徴すると共に、神の慈愛の深さを表しているとも。
   少なからず、あなたが振るう『政治』のタクトの根底には、『原罪に対して後悔し悔い改めよ』という教えが存在するのよ。

 <ジルは自らの手のひらをそっと撫でる>

ジル:私は奇妙なデザインの元に産まれてきた。
   だから、神に背くような真似をいくつも冒してきた。
   ……でも、私には一向に贖罪の機会は訪れない。

クリス:……その機会が欲しいということ?

ジル:ええ。そうよ。
   人間として認められるというのなら、正しく罰を受けるのは当然のことだわ。

クリス:どうしたって貴女は――いえ、貴方達を裁くということは、アイザック・アークエットを裁くことになる。

ジル:それは間違っている。ザックはあくまでこの身体を統合した名前であって、私じゃない。

クリス:一体何をどう裁けというの。存在しない人間だけを裁くことなんて不可能よ。

ジル:それを考えるのは貴方達よ。
   取引というのは簡単。
   私は、自分の犯した罪を自白する準備がある。
   それに、他の人格や今回の事件についてもわかっていることを話してもいい。
   でもそれは、ザックの中にいる私を一人の人間として認め、ザックではなく私を正しく裁くことが条件。   

 <クリスは考え込んだあと顔を上げる>

クリス:……嘘。

ジル:なんですって?

クリス:嘘をついている、そうさっきザックは言っていたわね。

ジル:一体何が嘘だというの?

クリス:彼があなたのことを信じてはいけないと言っていた理由がわからないのよ。

ジル:それは――ウッ、ブラッド! 邪魔を――

 <ジルがブラッドと入れ替わる>

ブラッド:いやはや……実に面白い話になってきた。

クリス:ブラッドリー・フィッツシモンズ。
    あなたは随分と自由にスポットを奪えるみたいね。

ブラッド:先程もいったが、今のアパートの中で私が最も冷静であり、最も中立であるが故に、スポットに立つは容易だ。

クリス:主人格のザックですら抑え込めるというの。

ブラッド:或いは、ザックやジル。そしてその他の人格がひどく不安定な状態にあるということでもある。

クリス:二人はそこまで動揺しているのね。

ブラッド:こんなことは稀さ。普段では考えられない事態だ。
     だが、それだけ君の存在はこのザックスアパートメントにとっては大きいということだ。

クリス:私が?

ブラッド:良いかな、クリス。
     私は中立だ。だからこそ君には平等に機会を与えるべきだと考えている。
     そういえば……ジルはザックに対してとても好ましい人格だった。

クリス:好ましい?

ブラッド:彼女はザックにとても優しく、いつも彼を助けてきた。
     私達の中で誰よりも彼との付き合いが長いんだ。

クリス:彼女が、ザックの中で目覚めた最初の人格ということかしら。

ブラッド:ザックの幼い時の話を聞いたのではなかったかな。
     ザックは農園で父と母、そして誰と暮らしていたと言っていたかな?

クリス:ええ。後は叔父と……ジュリアン……?

ブラッド:ザックに兄弟は居ないよ、クリス。

クリス:つまりそのジュリアンというのが、ジル・ジャーヴィス……?

ブラッド:考えるんだ、クリス。
     真実はすぐ側にある。

クリス:……ジルが本当に”グリムヒルド”なのかどうかは置いておいて……。
    それを材料にして彼女は……なんて言った?

 間

クリス:ザックではなく自分を裁け……。

ブラッド:私達を人間として考えるんだクリス――ウッ!
     それはつまり――あああ! スポットが――

 <ブラッドは机に頭を叩きつける>

ブラッド:ウウウウ! やめるんだザック!
     今君は黙っているべきだッ!
     私達に任せて――

クリス:ブラッド! ザック! 落ち着いて――

 <ザックは息を切らしてゆっくりと顔を上げる>

ザック:……取引はしない。

クリス:ザック……ザックね。

ザック:僕はやってない。そしてそれは、僕の中の人間もみんなそうだ。
    ……だから、話は終わりだ。

クリス:……少し、考えさせて。

 間

クリス:落ち着いているの、ザック。

ザック:……ああ、今は落ち着いて話している。
    スポットも、彼らに渡すつもりはない。
    だから、もう出ていってくれ。
    あなたともう、話すことはない。

クリス:……ジルは貴方にとって親友?

ザック:ジルは……僕を守ってくれるんだ。
    いつも僕を落ち着かせてくれる……。
    でも……! 今日は違う!
    僕を騙して、企んでる……!
    僕に成り代わろうとしたんだ!

クリス:そうには見えなかったけど?

ザック:自分の人権を主張するために嘘をついて、僕を利用した……!
    裏切られたんだ……! 僕は……!

 間

クリス:ジルが、”グリムヒルド”というのは本当なの?

ザック:違う! 彼女は殺人鬼なんかじゃない!
    そんなのは嘘だ。
    だから取引なんてできっこない。

クリス:ではなぜ、彼女はそんな話を?

ザック:わからないよ! そんなの!
    僕にはそんなの――

クリス:かばっているんじゃないのかしら?

ザック:そんなことは……。

クリス:(ため息)……認めたくない仮設ではあるけれど、あなたとジルが幼い時から共にいるとしたら……。
    あなたとジルの間には、明確な信頼関係があった。
    ジルが本当に”グリムヒルド”として殺人を犯していたとして、自分自身を裁くように言う理由はなに?
    彼女の話のベースは……そう。聖書の引用。
    ジルがクリスチャンであるとすると……先程の話にも信憑性があるわ。
    それに、今回の連続殺人についても証言できることがあるとも言っていた。
    それだけでも取引の材料になり得たかもしれないのに、わざわざどうして――

ザック:だから! ジルは殺人鬼なんかじゃない……!
    彼女の嘘だ。

クリス:かばっている。そうなのね……。

ザック:僕はかばってなんかいない! 彼女は本当に僕の――

クリス:違うわよザック。かばっているといっているのは、『ジルがあなたを』かばっているということ。

ザック:……ジルが、僕を?

クリス:……殺人の罪を犯したのはあなたなのね、アイザック・アークエット。

 間

クリス:殺人鬼は……他の人格ではなくて、あなた。

ザック:僕は、やってない。

クリス:ザック。あなた……強引にスポットを奪ったわよね。
    それに今も誰も出てくる気配がない。
    随分と落ち着いているし……それに――

 間

クリス:あなたはもしかして……すべての人格を正しく支配しているんじゃないのかしら?

ザック:だとしたら?

 <ザックは昏い瞳でクリスを見つめた>

クリス:あなたは潜在的に問題を抱えた人間で……今回の殺人事件を起こしたのはあなた。

ザック:証拠がない。

クリス:証拠は必要ないわ。あなたが認めさえすれば。

ザック:そんなものはナンセンスだ。どう僕を捕まえる?

クリス:……おどおどしていた印象が随分と変わったわね。ザック。
    今回の件で最も問題視されているのは、証言がとれないことよ。
    だから、あなたが精神的に抱えている問題を洗うことにした。
    実際に解離性障害を抱えていることはわかっているけれど……。
    ジルにも言ったとおり、他の人格に対して罪を問うことは難しい。
    だからこそ、あなたが認めることには意味がある。
    一人の人間がやっていることだとわかれば、状況は全く変わるのだから。

ザック:なるほど……一人の人間の犯行なら、共通性が認められる。

クリス:ええ、そういうことよ……。
    例えば――”グリムヒルド”の事件も、あなたがやったことだとしたら――
    事件も洗うことで何かが出てくるかもしれない。

ザック:それについては詳しく話を聞いてみたいけど……そうだな。

 <ザックは立ち上がる>

クリス:何を……?

ザック:根本的に勘違いしているようだから訂正しておこう。
    僕が行っているのは――転化だ。

クリス:転化……?

ザック:ああそうだ。
    君は少しは考えたことがあるはずだ、僕が演技をしているのではないかとね。

クリス:……ええ。今は強くその疑念を抱いているわ。

ザック:おーっと、いや、うん。そうだね。
    それは大きな間違いだ。僕の中には、確かに沢山の人格が存在する。
    そしてその人格は全て、本当の人間だと思って差し支えない。

 <ザックは微笑んでクリスに近寄る>

ザック:普通の人間の頭に、複数の人間の人格を入れたらどうなる?
    ん? 想像もつかないかい? そうだろうとも。
    だけど実際にやってみると……当たり前のように正常ではいられなくなる。
    感情の波は激しく、不安定で、安らぐことはない。
    毎日頭の中で大きな鐘が鳴らされているような頭痛を味わって、三時間毎に死にたくなる。
    でも、それを抑える方法がある。

 <ザックはクリスに顔を寄せる>

ザック:人を殺すと、おさまるんだ。

クリス:……壊れてる。

ザック:僕は正常だ。君も僕と同じ立場ならそうする。
    ……人間を殺す瞬間、頭の中で暴れている人格が大人しくなっていく。
    僕は魂の転化と呼んでる。人の形を持たない人格に、命が注がれる感覚だ。
    これがなければ、僕はきっと正常ではいられなくなる。

クリス:そうじゃない……。あなたはとっくに狂っているのよ!
    人殺しに理由なんてない! それはあなたの狂気よ!

ザック:すべてのものに等しい理由などないんだ……!
    ……違う。違う違う違うんだクリスティン。
    君を含め、多くの人間の間違いがそれだよ。
    人は人に何かを課したがる。
    僕は僕自身のために生きている。
    その理由を話しただけで、あなたはなぜそれを否定する?

クリス:間違っているからよ! あなたの生きる理由や、その行動が!

ザック:それは僕を殺すと言っているのか。

クリス:殺したのは、人の人生を奪ったのはあなたじゃない!

ザック:一体僕が誰を殺したっていうんだ。

クリス:”グリムヒルド”と、今回の件を合わせたら、少なくとも十人以上を殺したんでしょう!?

ザック:それは僕の事情で、君のじゃない。

クリス:そんな言い分――

ザック:言っただろう。僕が行っているのは転化であると。
    魂の繋がりさえあれば、それは死とは言えない。
    僕の中で永遠に生き続ける。

クリス:認めないわ! そんなもの。
    私は絶対に認めない。

ザック:君は、一体何者だい? クリスティン・カーター。

クリス:何者ですって……? 私は――

 間

クリス:私は……一体、誰だった……?

ザック:どういう設定だった?

クリス:設定……?

ザック:或いは、君の魂がもっと早く僕と出会っていたなら……僕を捕まえることができたかも知れない。
    だが、叶わなかった。

クリス:何を、言っているの……。

 <ザックは両手クリスの肩を掴む>

ザック:……合格だよクリスティン。君は素晴らしかった。

クリス:ヒッ! 手錠は……!
    どうして手錠が外れているの!

ザック:手錠なんて、最初からなかったよ。

クリス:ッ! 誰か来て! すぐに!

ザック:違う違う。ここは、そこじゃない。

クリス:ここは州警察の――


 ◆


 <クリスが周囲を見渡すと、そこはどこかのアパートの一室であった>

クリス:ここは……どこ?

ザック:ここは、僕のアパートだよ。クリスティン・カーター。

 <ザックの背後にはジルとブラッドが立っている>

クリス:貴方達は、誰なの……?

ブラッド:私だよ、クリスティン。

ジル:ようこそ、私達のアパートへ。

ザック:ブラッド。今回も僕が勝つと言っただろう?

ブラッド:私はいつだって中立だ。
     ザック。君が勝つとは思っていたが、少しジルに肩入れしてしまったのはご愛嬌だよ。

ザック:ジル。君はいつも危険な賭けをする。
    だから僕に勝てないんだ。

ジル:ええ、そうね。でも、少し同情してしまったのもあるわ。
   彼女はきっと、ここの住人になることを望まないと思ったから。

 <クリスは呆然と三人の会話を見つめている>

ザック:……わからないかい。クリス。
    ここはもう安全だよ。

クリス:……どういう、ことなの?

ザック:君は、僕のアパートの新しい住人として認められたんだ。

クリス:私が……住人?

ザック:そうだ。

 <ザックはクリスの肩にそっと触れた>

ザック:僕の頭の中には、知性のない人格はいらない。
    それこそ、リック、ジェナ、ボブ・ロッドのような”アウトサイダー”だと、地下室に閉じ込める手間がかかる。
    だから僕はこうして、新しい住人と面談することにしている。

クリス:ちょっと待って……。嘘……。私は……人間ではないということ……?

ジル:いいえ。貴方は人間よ。
   私達は、ただのザックの人格ではない。
   人間として、彼の頭の中で生きている。

ブラッド:しかし、ここにはザックにそぐわない人間も入ってくる。
     それらを選別するのに、しばしばこういったゲームが行われるのさ。
     ジルは新しい住人をあまり好まないから、揺さぶりをかけて追い出そうとするがね。

クリス:嘘……! 嘘よ! さっきのやり取りはすべて演技――いえ!
    あなたの頭の中で起こっていたことだっていうの!?

ザック:いいかい。君は、ブラッドのヒントを理解し、ジルの妨害にも誤魔化されず――
    正しく僕の正体を見破るだけの聡明さと、判断能力を見せてくれた。
    だから、僕の頭の中でも上手くやっていける。

 <クリスは自分の身体を抱いて震える>

クリス:私は……貴方の頭の中で作り出されただけの存在……!?
    アイザック・アークエットの人格の――ひとつ……?

ザック:いいや、君にはもう魂がある。
    僕が――転化したんだ。


 ◆


 <クリスの目の前に、薄暗いモーテルの一室が見える>

ザック:君が見ているのは今、僕が居るモーテルだ。
    流れている音楽は六十年代のブルースミュージック。
    部屋が少し荒れているのは、少しだけ――もみ合ってしまったから。


 ◇


クリスN:数週間前に起こった三件の連続殺人事件の資料を見た瞬間、私は直感的にそれが過去に起きた”グリムヒルド”と同じ人物の犯行だと思った。
     確かに、”グリムヒルド”は女性だけをターゲットにしていたし、奇妙なサインを残すのが特徴だった。
     一見、繋がりは無いように見える、が――犯行の手際の良さや、一見衝動的に見えて一切の証拠を残さない計画性は一致する。
     私は――容疑者リストの中に気になった人物を見つけた。
     アイザック・アークエット――精神障害を持った若者で、事件の前後に街の周囲で目撃情報があった。


ザック:今はちゃんとベッドの上に横たえてる。
    見えるかい。血まみれではあるけど、ちゃんと顔は綺麗にしたんだ。
    胸の所には、大事にしていた家族の写真をもたせているよ。


クリスN:私は先ずアイザック・アークエットの過去の逮捕記録や、担当精神科医のカルテを調べた。
     アイザック・アークエットの解離性障害を原因とする異常な行動について知ることになるのだが、
     ここ数年のアイザックは安定しており、異常行動が一切見られないことも引っかかった。


ザック:ああそうだ。まだわからないなら、これを見ると良い。
    君の胸ポケットから見つけたんだ。
    『クリスティン・カーター特別捜査官』


クリスN:アイザック・アークエットについて詳しく調べていくと、彼と殺人事件の間にある奇妙な共通点に気づいた。
     ”グリムヒルド”の事件よりも数年前、未解決となっている殺人事件の被害者に――


ブラッドN:ブラッドリー・フィッツシモンズ。
      私は医師で、彼に殺されたのは学会の帰り道だった。
      全くもって予想だにしていないタイミングだったよ。
      車に押し入ってきて、あっという間に気道を締められたんだ。


クリスN:ブラッドリー・フィッツシモンズ医師と同じ名前が、アイザック・アークエットの人格としてカルテに記載されていた。
     奇妙な偶然かとも思った。
     しかし調べを進めるほどに、過去の未解決事件の被害者の名前と、アイザック・アークエットの持つとされる人格の名前は一致していった。
     私はこの時点で、彼には何かがあると確信していた。


ザック:僕は頭の中が痛くて、いつもいつも四六時中奇声をあげてた。
    ただのかんしゃくだって医者は言ってた。
    ……でも八歳の夏の日、僕はその機会を得たんだ。
    近くの湖に遊びに来ていた女性が、農園に迷い込んできた時――僕は一人だった。
    彼女にシャワーを貸して、クッキーを振る舞っていると……すぐそこに彼女の後頭部があったんだ。
    その時僕は――そうだ。
    ここに置いてある置物で彼女を殴ってみるのはどうだろう――そう思ったんだ、ジュリアン。

ジルN:ジル・ジャーヴィス。
    私はザックに殺されてから、行方不明ということになっているわね。
    それからはずっと彼と一緒。
    あの時食べたクッキーは美味しかった。


クリスN:私はアイザック・アークエットの足取りを追って州境のモーテルに入った。
     彼の車がその先のレイクウッドに泊まっているのは確認していた。
     明日、接触を試みようと思って――シャワーを浴びて、部屋に戻ると――


ザック:やあ、僕に何かようかな。


クリスN:彼が――居た。


 ◇


ブラッドN:だれかがザックを追っていることはすぐにわかった。
      ヒクソン医師のカルテには、私がロックをかけていたからね。

ジルN:何度か見かける車はチェックしてあった。
    田舎では見かけないナンバーなら特に――
    だから私達はザックに警告をした。

ブラッド・ジル:ヘイ、ザック。あいつは殺した方が良い。


ザック:まさか警察だとは思わなかったけど――でも君は綺麗だった。
    だから殺すのはとても楽しみだったよ。

クリスN:いや……。いや、いやよ! いや……!
     どうして私が死んでいるの!? どうして――
     どうして私は貴方の頭の中にいるのよ!

ザック:そんなことはもう、君には関係ないことだよ。

クリスN:いやよ! ここからだして! 出して頂戴!

ザック:魂は注がれた。
    これからは――ずっと一緒だ。

クリスN:いや――

 <クリスの声が意識の奥へと消えていく>
 <ザックは血まみれのゴム手袋を外すと、カバンの中に放り込む>

ザック:(鼻歌を歌う)

 間

ザック:……これで、少しは静かになる。


 <ザックは鏡で自分の身なりを確認すると、ゆっくりとモーテルを出ていく>


ザック:ようこそ、僕のアパートへ。


 <血まみれのクリスティン・カーターの遺体だけが、ベッドの上に横たわっていた>











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