勇者パーティ、授業を受ける
作者:ススキドミノ


勇者:男。元気。
魔法使い:女。勝気。
僧侶:男。真面目。
講師:不問。山中。


※2018年1月18日 台本使用規約改定(必読)




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勇者:……どう思う?

魔使:どう思うって?

勇者:いやさ、なんで俺達こんなところに呼び出されたんだと思う?

魔使:知らないわよ……第一私達は魔王退治の旅の最中なのよ。こんなところで油を売ってられないわ!

僧侶:王国からのお達しですからね。丁度通り道でしたし……もっと進んだ後じゃなくてよかったですよ。

魔使:……確かに、この先のドラゴン山に入ったら、しばらくは攻略にかかっただろうしね。

勇者:どうしよう……俺達クビとかだったらさ。

魔使:そんなわけないでしょ、うちのパーティが一番魔王に近いといわれてるんだから。

僧侶:いまさら切り捨てる理由はないでしょうが……。
   気になりますね、いったいなんなのでしょうか。

魔使:でもまぁ……いいことではないのは確かね。

勇者:どうして?

魔使:現時点でここに呼び出した理由をきかされてないってことは、直接誰かがあいにくるってことでしょ。
   どんな用であれ、面倒なのはわかりきってるわ。

勇者:……なるほど。

講師:いい推測ですね。

 全員、驚いて武器を構える。

講師:うんうんうん、なるほどなるほど……。

勇者:誰だ!

魔使:名乗りなさい!

講師:私は今回、王国の依頼で皆様にお話をさせて頂くことになりました。講師の者です。

勇者:話……? なんのことだ。

講師:いやはや、警戒心が高いですねえ……職業柄仕方が無い事ではありますが……。
   まぁ……いいでしょう。ということで講義を始めさせて頂きます。
   改めまして、どうもこんにちは。私が講師をさせていただく、山中ともうします。よろしくお願いします。
   えー、今回……このアルディニア・シンフォニア神聖王国さんたっての希望で、私、平行世界でございますティキュウという所からやってまいりました。
   この中でティキュウの事を知っている方は?

勇者:ティキュウっていうと……カレーライスか?

講師:はい! そうです、カレーライス。あれはもともとティキュウの食べ物です。
   ただし、ティキュウの中でも地域によって味が違いまして、
   こちらで普及しているカレーライスは主に、ティキュウのニッパウという所で独自にアレンジされた食べ物なんですね。
   ああ、これは蛇足でした。はいこれ、『蛇足』という言葉。
   これはこちら世界の言葉でいうと、毒対策装備でばっちり固めたAランクのギルドパーティが、バジリスクに挑んだ時にーー

魔使:そんなことはどうでもいい!

僧侶:何故、私たちがこのような所に呼び出されたのか、その理由を教えてください。

講師:せっかちですね。成る程……貴方達2人がこのパーティのブレイン。つまり理知的な部分担当というわけですね。
   えっと、そちらの女性が魔法使いさん。そちらの男性が僧侶さんで間違いないですか?

魔使:……ええ。

僧侶:そうですけれど。

講師:で、あるとすると。そちらの真っすぐとした眼の中にそこはかとない阿呆さを感じる方が勇者さんですね。

勇者:うん、そうだよ。

講師:いや、実にわかりやすい!   

魔使:ああもう! なんなのあんた! 随分偉そうにしてるけど……世界の危機だってのに、あんたみたいなのにかまっていられないのよ……!
   こうしている間にも、私たちの村は……!

講師:はいストップ。

魔使:な、何よ!

講師:今回私が派遣されてきた理由はそこなんです。

僧侶:そこ、とは?

講師:ズバリ、『シリアスすぎる』ということでしょうかね。

勇者:シリアス……ってなんだ?

講師:もっと端的に申し上げましょう。貴方達パーティには圧倒的に足りないものがあります。
   それが、『コメディ要素』です。

僧侶:コメディ……失礼ですが、私たちを何かと勘違いしているのではないでしょうか。

講師:勘違い……ですか?

僧侶:私たちの旅は、魔王の力に困る村や街、国を救いながら力をつけ、魔王そのものを討伐せんとする旅です。
   ただでさえ魔王の力は強大です……今の僕たちの力では到底及ばないでしょう……。
   そんな……そんな命がけの旅の最中に、大衆演劇のごとく僕たちにピエロを演じろというのでしょうか。
   はっきり言いましょう、不愉快です。

魔使:……炎よ、精霊よ、我が手に寄りて形をなせ……(魔法使いの掌の上に炎の球体が浮かぶ)

講師:魔法使いさん、それに、僧侶さんも、『魔法』をむやみやたらと使うのは勘弁していただきたい。
   私は王国の使者だということをお忘れですか?
 
 しばらくの沈黙の後、魔法使いの掌の上の炎が掻き消える。

魔使:(舌打ち)……炎よ、消えろ……。
   何よ、僧侶。あんたも魔法使ってたわけ。

僧侶:……魔法? いえ、僕はなんの呪文も……。

講師:いいや、あなたは今、一つの魔法を使いかけました。
   それも、『魔王の強化』という大魔法をね。

全員:なっ!!

僧侶:な、なんですって!?

講師:この世界における呪文とはいったいなんでしょう。魔法使いさん。

魔使:……それは、言霊に魔力をのせ、精霊に意思を伝え使役するためのーー

講師:ま、まとめると……呪文とは、言葉です。

魔使:それがなによ。

講師:あなた方魔法使いは言葉に魔力を宿らせる際に、その魔力やイメージを正確に精霊に伝えるために、予め用意された呪文を読み上げます。
   しかしこの呪文とは、あくまで先ほどのように「火の玉を出す」ですとか、そういった魔術的超常現象を起こさせるために合理的に組み上げられたプログラム。
   ……ですが、呪文を用いずとも魔法自体は発動すると言ったら。どうしますか?

僧侶:……おっしゃっている意味がわかりませんが……。

魔使:あんたはこう言いたいわけ。普段から喋る言葉にも魔力が宿り、それが魔法として発現することがある、と。

講師:その通り。貴方達のように力のある者達が言う言葉は、呪文として成立してしまう可能性がある。
   というのが最近、王都の魔法研究所で発見された新説です。

勇者:お、俺、急にわからなく……!

魔使:あんたは最初っからわかってないでしょうが……!

講師:いいですねえ。勇者さん、貴方は実に優秀です。
   この何も考えずに思ったことを口に出してしまう間抜けな貴方の言動は、状況を理解している人間の笑いを誘います。
   これを、OWARAI(おわらい)用語で『天然ボケ』といいます。

僧侶:お、おわらい、ですか?

講師:MANZAI(まんざい)師、という職業はご存知ないですよね。

勇者:知らないな……職業を変えてくれるハロワ神殿でも、そんな職業はリストになかったぞ。

講師:それはそうでしょう。MANZAI師、とは今回私が教える『コメディ魔法』のスペシャリスト。上級職なのですから。

勇者:なんか、すごそうだな……。

魔使:それで、私たちを今回MANZAI師とやらにしたいってわけ?

講師:いえいえとんでもない! 
   OWARAIライブから寄席(よせ)、地方営業や劇場、MANZAIコンテストで賞を取る等、
   それこそ幾多の試練を乗り越え、さらにその中でも突出した才能がなければ一人前のMANZAI師にはなれないのです。

勇者:そ、そんなすごい職業があったのか……!

僧侶:では、私たちはいったい何をすれば?

講師:えー……今回皆さんには簡単な『コメディ魔法』を覚えてもらおうかと思います。
   言うなれば、入門編です。

魔使:なるほどね……それが使えれば魔王にも有利になるってことなのよね。

講師:有利? そんなレベルじゃございません!
   私の世界では、この『コメディ魔法 〜ギャグ漫画〜』を極めれば、戦闘で死ぬことすらなくなるとまで言われていますよ。

全員:なっ!!??

勇者:本当か!?

僧侶:そんな……夢みたいな話が……!

魔使:そ、それってでも、時間がかかるのよね?

講師:もちろん。今回はさわり、基本だけです。
   先ずは、こちらの映像をご覧ください。これは、先日私が隠し撮りした貴方達パーティのボス戦前の会話です。

勇者:これは……。

僧侶:記録魔法の一種、ですか。それにしても鮮明だ……。

講師:いいですか? しっかり観てください。




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 プロジェクターで映し出されたのは巨大な門の前に佇む4人。
 その顔は皆真剣。

勇者:(息切れ)……どうやらこの扉を抜ければボスの部屋みたいだな。
   身体が重い……正直、ギリギリだぜ。

僧侶:ここまでの敵も随分と強かった……魔王も力を取り戻しつつ有る、ということでしょうか。

魔使:悠長にしていられないわね……早くしないと、私たちの村も……

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講師:一回止めます。

勇者:え? 何?

講師:これね、さっきもあったやつですよね。魔法使いさんのこれです。

魔使『悠長にしていられないわね……早くしないと、私たちの村も……』

僧侶:もしかして……この言葉も魔法として?

講師:その通り、これは『フラグ魔法』と呼ばれています。

勇者:ふらぐ? なんだそれ。

講師:もともとは旗、という意味です。
   その単語だけでは目印などの意味として様々な使い方をされています……が、今回のフラグというのは少し意味が違います。
   この場合のフラグ、というのは「今後の展開を予想しやすくなってしまうお約束のキッカケセリフ」というやつでしょうか。
   神様が「この方が面白い展開になんじゃね」と魔法で世界に介入してきているようなものです。   

魔使:……さっぱりわからないわ……。

講師:今まで別の世界でよく発動が確認されているのは、先ほどの魔法使いさんのように
   戦いが苦しい時「村のみんなはどうしているかしら……」と呟いたことで村が魔物に襲われてしまう「滅亡フラグ」や、
   戦闘中に「よし! あと少しだ! 絶対に倒してやる!」等と叫んだ事により相手を強化させてしまう「第2形態フラグ」
   あとは強い敵にやられてピンチの時に「クリリソのことかー!」なんて叫んで一気に強くなって相手を圧倒する、
  「DB以降のジャンプバトル漫画の覚醒パターン」も有名ですね。

僧侶:か、神が介入……そんなことが……信じられない……!

講師:とりあえず、今回は不利になるフラグを立てないようにすることだけを覚えて頂きます。
   さっきのシーンで私の考えた通りに行動してみたらどうなっていたかの映像をご覧ください。どうぞ。




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 プロジェクターで映し出されたのは巨大な門の前に佇む4人。
 その顔は皆真剣。

勇者:(息切れ)……どうやらこの扉を抜ければボスの部屋みたいだな。
   身体が重い……正直、ギリギリだぜ。

僧侶:ここまでの敵も随分と強かった……魔王も力を取り戻しつつ有る、ということでしょうか。

魔使:……そう?(モグモグと何かを食べている)

勇者:ん? 魔法使い、お前何食べてんだ?

僧侶:そんな食料、かさばるから持ってきていませんでしたよね。

魔使:何って……さっき倒したキメラだけど。

勇者・僧侶:ズコーーーー!!

勇者:お、お前何食ってんだよ!

魔使:ちゃんと火通したわよ?

僧侶:そこじゃねえよ!!

勇者:おお! 僧侶の僧侶らしからぬツッコミ!

僧侶:注目すんのそこでもねえよ!!

魔使:私が炎の魔法得意な理由、言った事があったっけ。

勇者:いや、ないけど。

 <魔法使い、モグモグ>

勇者・僧侶:理由それかー!!

魔使:やっぱり便利ね。ボスも蒸し焼きにしようかしら。

勇者:あ! なんかドアの中から紙が……なになに。
   『ごめんなさいごめんなさい、降参するから食べないで。ボスのオークキングより』

僧侶:なんと……どう転ぶか、物事はわからないものですね……。

勇者:やったな! 魔法使い!

魔使:オーク……ってことは豚みたいなもんか。蒸し焼きでいいかな。

勇者・僧侶:いやいやいやいや!!!

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講師:はい、どうしょうか。

勇者:おおーーー!(拍手)

魔使:そんなバカな……。

僧侶:あ、あの! 魔法使いさんの……何かしらの魔法でボスを退けたんですよね。

講師:その通りです。この場合は魔法使いさんの『ボケ魔法』ですね。

僧侶:では、その、私が言っているあの乱暴な……ツッコミというのはなんなのでしょうか?

講師:素晴らしい!! そこに注目されましたか。
   やはり私の見込んだ通り! 貴方には『ツッコミ魔法』の素質がある!

魔使:ツッコミ魔法……それは一体……!

講師:それではこちらの映像をご覧ください!!!




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 プロジェクターで映し出されたのは巨大な温泉につかる勇者と僧侶。

勇者:ふぅ〜……湿地帯を抜けてるときはどうしようかとおもったけど。
   こんな所に……あの……その……おん……お湯溜まりがあるなんてなぁ。

僧侶:温泉ですよ……勇者さん。

勇者:あー! にしても戦い続きで疲れたな! あれが棒だぜ!

僧侶:足……いえ、なんでもありません。

勇者:……なぁ僧侶。あとどれだけ戦えば、俺達の旅は終わるんだ?

僧侶:大丈夫、もうすぐですよ。

勇者:なんでわかんだよ。

僧侶:勘です。

勇者:はは! 勘か! ははは!

僧侶:おかしいですか?

勇者:いや! 僧侶だったら「神のまつげで聴きましたから」なんて言うかと思ったからさ。

僧侶:もしかして、お告げ……いや、私にだってふざけたいときくらいあります。

勇者:そっか……。

僧侶:勇者さん……勝ちましょうね……。

魔使:キャーーーーー! バカ勇者!! 覗くんじゃないわよ!! 

勇者:うわ! ごめん! ごめんって!

魔使:炎よ! 精霊よ! 我が手に寄りて形をなせえええ!! 

勇者:あつ! あついあつい!

僧侶:……(ため息)

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講師:はい、どうでしょう。

魔使:あんた! いったいいつから私たちのこと撮ってたわけ!?

勇者:あんなに近くで録られてたのか……! 気がつかなかったぜ。

僧侶:あの、これが一体……。

講師:僧侶さん。あなたならわかるはずです。というか、ちょっと気づいてましたよね。
   やっぱり既にこの時点で「ツッコミキャラのオーラ」は宿っているんです。

僧侶:ツッコミキャラのオーラ……。

講師:今はまだ勇者さんによって纏わされているだけですがね。

僧侶:そうなのですか。

講師:に、しても勇者さん。
   休む事のないボケの嵐、というよりも飛び抜けてバカだ。
   ツッコミがまだ機能していない中でこれだけの無駄ボケをし続けているなん本当にもったいない!
   貴方はやはり救国の英雄となるべくして産まれた天才だ!!

勇者:そ、そんな褒めんなよな! 照れるぜ!!

魔使:褒めてないわよ。

僧侶:くっ……。

講師:今、「出遅れた」と思いましたね。
   それがツッコミ気質です。さぁ、観てみましょうツッコミとして覚醒したあなたがいると、このパーティがどうなるか!




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 プロジェクターで映し出されたのは巨大な温泉につかる勇者と僧侶。

勇者:ふぅ〜……湿地帯を抜けてるときはどうしようかとおもったけど。
   こんな所に……あの……その……おん……お湯溜まりがあるなんてなぁ。

僧侶:温泉ですよバカ。

勇者:あー! にしても戦い続きで疲れたな! あれが棒だぜ!

僧侶:どんな間違い方だよ! 奇跡的に卑猥な感じになってるわ!
   戦いの興奮でカッチコチって、バカ!

勇者:なぁ僧侶。あとどれだけ戦えば、俺達の旅は終わるんだ?

僧侶:ここでえ!? このタイミングでその質問!?
   ムリムリムリ!! シリアスりーむーでしょ!!

勇者:なんで無理なんだよ。

僧侶:空気だよ! 空気がもうそんなんじゃねえってわっかんねえかお前には!

勇者:はは! 空気か! ははは!

僧侶:ははは! 笑うしかねえってこっちも! ははは!

勇者:空気か……僧侶だったら「神のまつげで聴きましたから」なんて言うかと思ったからさ。

僧侶:もう意味わかんねえよ! 会話しようよ会話!
   あとまつげって何? 神様何? まつげでなに語ってんの? 枕元でなに語ってんの?

魔使:キャーーーーー! バカ勇者!! 覗くんじゃないわよ!! 

勇者:うわ! ごめん! ごめんって!

魔使:炎よ! 精霊よ! 我が手に寄りて形をなせえええ!! 

勇者:あつ! あついあつい!

僧侶:……やりたい放題か!!

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僧侶:これが、ツッコミ……身体になじむ!

魔使:なんだかわからないけど、ばか騒ぎして、気持ちが楽になるのは確かね。

勇者:使命のことばっか考えて、ずっと真面目にやってきたからな……。

僧侶:いやお前はそうでもねーわ。

講師:いや! いいですねえ! 次はボスとの戦いのときを観てみましょう! どうぞ!




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 プロジェクターで映し出されたのは巨大なドラゴンと戦う勇者パーティ。

魔使:よし……! ドラゴンの身体を覆っていた魔力結界が切れた!
   これでダメージが与えられる!

勇者:なんだ! ドラゴンつったってたいした事ねえじゃんか!

僧侶:気を抜いてはいけませーー

ドラゴン(講師):グオオオオオオ!!

勇者・魔使・僧侶:うわっ!

勇者:すごい魔力だ!

魔使:どこにこんな力が……!

僧侶:まさしく、竜の逆鱗に触れてしまったというわけですか!
   身体が変形していく……あれがドラゴンの真の姿か……!

ドラゴン(講師):舐めるなよ! 人間ッ!!

魔使:いけない! 魔力ブレスよ!

僧侶:我が主よ! 守りのご加護を! シールド!

勇者:僧侶! 助かった!

魔使:大丈夫!?

僧侶:ええ! しかし長くは持ちません!

勇者:こりゃあ骨が折れそうだぜ……!

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講師:さぁ、もうどうすれば良いかわかりますね!

勇者・魔使・僧侶:はーーい!

講師:いいお返事! じゃあいってみましょう!




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 プロジェクターで映し出されたのは巨大なドラゴンと戦う勇者パーティ。

魔使:よし……! ドラゴンの身体を覆っていた魔力結界が切れた!
   これでダメージが与えられる!

勇者:なんだ! ドラゴンつったってたいした事ねえじゃんか!

僧侶:気を抜いてはいけませーー

ドラゴン(講師):グオオオオオオ!!

勇者・魔使・僧侶:うわっ!

勇者:すごい魔力だ!

魔使:どこにこんな力が……!

僧侶:まさしく、竜の逆鱗に触れてしまったというわけですか!
   身体が変形していくーー

勇者:うおりゃ!

僧侶:斬りかかってるし!

魔使:内臓傷つけないでね! 不味くなるから!

僧侶;食う気だし! 

ドラゴン(講師):舐め、舐め、舐めるなよ人間ゴバァ(血を吐く)!

僧侶:なんかもう変身中はやめて! カッコつけてるからやめてあげて!

魔使:口を開けた……! 魔力ブレスよ!

僧侶:我が主よ! 守りのご加護を! シールド!

勇者:僧侶! くそっ! よくも僧侶を!

僧侶:え? いや、シールドを張ってるんですけどーー

魔使:僧侶はやられてしまったけど……絶対に諦めないわ!

僧侶:いや、だから見えない? 私、ここにいますけど!? ねえ!?

勇者:僧侶のことですかーーーー!! うおおおおお!!

僧侶:なんで丁寧語! そして金髪になるな! 勝手に人死んだ事にして壁をやぶるな!

魔使:あ、あれが……スーパー勇者!

ドラゴン(講師):なるほど……人間にしてはやるようですねえ。
        ですが、私に勝てるとお思いですか!

勇者:身体が軽い! オラ、ワクワクすっぞ!

僧侶:ツッコミきれるか!!

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講師:もう十分にコメディ魔法を使いこなしていますね。
   それでは卒業試験代わりに実戦してみましょう。
   今ちょうどこの街を四天王の1人、魔人ケリス・シツラが襲って来ています。

全員:な、なんだってー!

講師:さぁ! 存分にコメディして、倒してきちゃってください!!


 <広場>


魔使:広場ってここよね!

勇者:いたな! あいつか! 魔人シリス・ケツラってのは!

僧侶:魔人ケリス・シツラな! 卑猥な感じになってるから! 臀部に集中してるから!
   つかわざわざアナグラムしてるってことは、さては諸々わかっていってんだろ! 

魔使:……アナでシリとケツ……。

僧侶:黙ってろ紅一点。

勇者:よし! 行くぞ! 来い! 聖剣ラグナロクユグドラシルフォーチュンエンジェルブラッドサンダーブリザードーー

僧侶:長い! あとなんかダッセエ!

勇者:来い! 聖剣!

僧侶:それで来んのかよ!

魔使:来い! 魔剣デッドエンド!

僧侶:なんでそっちでは魔剣呼んでんだよ! あと超強そう!

村人(講師):う、うわあああ! 助けてくれー!!

勇者:あ! 村人を人質に……!

僧侶:卑怯な! あれでは攻撃できません!

魔使:くっ! 武器を捨てろ、なんて良く言えたもんね!

勇者:魔法使い……ここは大人しく……。

魔使:そうね……武器は捨てる……と見せかけて魔人に向けて投擲!

僧侶:何やってんだあああ!

魔使:あ、村人に刺さった。

勇者:村人さあああん!

僧侶:何してんだてめえ!

村人(講師):大丈夫です! ちょっとかすっただけです!

僧侶:いやいや! 刺さってる! 魔剣が眉間に刺さってるって!

魔使:(笑いを堪える)魔剣と……眉間……。

僧侶:おい元凶! ツボに入ってる場合か!
   まったく……今回復呪文で回復させます! 辛抱してください!
   我が主よ、力を、癒しをお与えください。ヒール!

勇者:うおおお! スキありー!!

僧侶:なんでこのタイミングだ! 今回復する所だろうが!

勇者:あ、村人切っちゃった。

僧侶:村人さあああん!

村人(講師):ゴボォ(血を吐く)大丈夫です。かすっただけですゴボォ(血を吐く)

僧侶:出てる血が出てる!

魔使:炎よ! 踊れ! ファイアーストーム!

僧侶:燃えてる! 村人ごと燃えてる!!




講師:こうして、講師の授業をしっかりと受けた、勇者(ボケ)、魔法使い(ボケ)、ツッコミ(僧侶)のパーティは魔王退治へと向かっていきました。
   彼らが四天王を倒し、三大魔神を倒し真魔界四天王を倒し、魔王直属親衛隊『ロードハンズ』を倒し、暗黒円卓騎士10人を倒し、
   魔王を倒し、魔王第二形態から第五形態を倒し、真魔王を倒し、本当のラスボスである先代勇者を倒し、世界の意思を倒し、
   エンディングを迎えたかどうかは、また別のお話です。



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