夜更かしの一日
作者:domino


昼♀
夜♀
俺♂
僕♂





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キャンバスに向かう僕。
俺は部屋の隅からそれを腕組みしながら見つめている。

笑顔を浮かべながら昼が入ってくる。
僕はそれに気づき声をかけた。


僕「昼さん」

昼「どうも、こんにちわ」

僕「そろそろ来るころだと思ってたよ」

昼「待ち遠しかったですか?」

僕「ええ、とても」

昼「ふふ、お世辞でもうれしいです」

僕「もちろんお世辞ですよ、なんたって僕ですから」

昼「そうでしたね。・・・それで、作品はできましたか?」

僕「ええ・・・それが、ね」

昼「まだ白紙、ですね」

俺「テーマが決まらないんだとさ」


俺は不機嫌そうに声をかける。
それに驚いた様子の昼。


昼「あ、貴方もいたんですね」

俺「いちゃわるいか・・・」

昼「いえ、そんなことはいってませんけど」

俺「言葉の端々に不機嫌さが垣間見えるんだが?」

昼「それは・・・被害妄想です!」

僕「2人ともその辺で・・・」

俺「その必要はないぜ、俺はもう出て行くからな」


そういって出口へと向かう俺。
僕は気まずそうにとめに入る。


僕「またそんなこといって・・・」

昼「・・・私の所為ですか!?」

俺「・・・あ?」

昼「いいたいことがあるなら面と向かって言えばいいんです!」

俺「別にいいたいことなんてない」

昼「っ!・・・そうですか」

俺「ああ、そうだ。いいたいことなんて、ない」


俺、そういって部屋を後にする。
僕と昼は気まずそうに佇んでいる。
やがて沈黙に耐え切れなくなった僕が口火を切る。


僕「あ、あの!いいテーマとか、ないかな?」

昼「テーマ・・・?ああ!テーマ、ですね。忘れてました」

僕「正直なのはいいことだけど・・・忘れてたってのはちょっと失礼じゃないかな?」

昼「ふふ、そうですね。ごめんなさい」

僕「彼の事だけどさ・・・気にしないってのは無理なことだと思うけど」

昼「大丈夫です!いつものことですから」

僕「そう・・・なら、いいんだけどね」

昼「それでテーマなんですけど・・・夕焼けなんてどうでしょう?」

僕「夕焼け?どうしてまた」

昼「なんとなくです。だって、綺麗じゃないですか」

僕「そう・・・だね。うん、それで描いてみるよ」

昼「できたら見せてくださいね!」

僕「もちろん、楽しみにしててよ」

昼「はい!それじゃあ私、そろそろいきますね!」

僕「うん、じゃあまた明日」

昼「はい!」


昼、部屋を出て行く。
僕は一人窓の外を眺める。


僕「夕焼け・・・か」


夜と俺、部屋にそっと入ってくる。



僕「夜さん」


夜「随分と感傷的ですね」


僕「そろそろ来るころだと思ってたよ」

夜「当然です、決まっていることですから」

僕「君も一緒だったんだ」

俺「・・・偶然そこであってな」

夜「何が偶然、ですか。ずっと廊下に座っていた癖に」

俺「っ!うるせぇな!」

僕「君はどうしてそう・・・いや、なんでもない」

俺「なんだよ、いいたいことがあるなら言えよ」

僕「おや?それと同じ台詞をさっき聞いたような気がするんだけどな?」

俺「うっ・・・」

夜「・・・貴方また昼と喧嘩したんですか?」

俺「別に、喧嘩ってわけじゃねぇよ・・・ただ・・・」

夜「ただ?」

俺「ちょっと苦手ってだけだよ・・・」

夜「はぁ・・・だからって、私を頼られても困るんですけど?」

俺「俺がいつお前に頼ったってんだよ!」

夜「・・・わかってないならいいんです」

俺「・・・わけわかんねぇ」


俺ふてくされながら部屋の隅の椅子に座る。


夜「それで、作品は書けたんですか?」

僕「それがまだ・・・テーマは決まったんだけどね」

夜「何にしたんです?」

僕「夕焼け」

俺「・・・っ!」


俺は驚いたように席を立つ。


夜「それは、貴方が決めたんですか?」

僕「違うよ、これは昼さんが提案してくれたんだ」

俺「本当か・・・?」

僕「どうかしたの?」

俺「いや、だって・・・昼が・・・本当に・・・」

夜「・・・何かおかしなことでもあります?」

俺「いや・・・ない・・・けど」


俺力なく椅子に座る。
夜はそっと俺に近づく。


夜「貴方が考えてること、わかりますよ」

俺「わかるわけ、ないだろ」

夜「いえ、わかります」

俺「わかるわけない!・・・俺だって、わからないのに・・・!」


夜、そっと俺を抱き寄せる。


俺「・・・なんのまねだよ」

夜「貴方が望んでいることです」

俺「そんなこと、望んでなんかない」

夜「いいえ。貴方はどうしようもなく寂しがりで、そのくせ一人になりたくって・・・だから私にあいに来るんです」

俺「違う!俺は、単純にお前のことが・・・!」

夜「ええ、わかってます。だけど、それだけではダメなんです。ダメなんですよ」

俺「それだけじゃ・・・」

夜「私の腕の中は、気持ちがいいでしょう?静かで、柔らかくて、何人も貴方を侵すことはありません」

俺「ああ・・・すごく、気持ちがいい」

夜「だれもが皆、私の腕に抱かれてゆっくりと目を閉じるんです」

俺「目を・・・閉じる」

夜「そうです。貴方もほら、目を閉じて・・・」

俺「うん」

夜「私はここにいます。だから・・・安心して。眠って」

俺「・・・うん」


俺はゆっくりと眠り始める。
夜、そっと俺を横たえると僕の元へと向かう。


僕「お疲れ様。やっぱり、夜さんがいなくては彼はダメなようだね」

夜「別にそういうわけではありませんよ。私は、ただの寝床。そういう役なんです」

僕「と、いうと?」

夜「私がいるから、彼は彼女を待つことができる。昼を、もっと愛することができるんです」

僕「それじゃ、貴女は?寂しくはないのかい?」

夜「いったでしょう?私は寝床・・・彼の寝顔を見守る、それでいいんです」

僕「なるほどね。彼は幸せ者だ」

夜「ええ、本当に・・・」

僕「・・・彼はどうするんだろうね?」

夜「どうもこうも、きっと彼自身気づいているでしょう」

僕「それもそうか」

夜「それでは私はそろそろ・・・彼女もくる頃です」


夜、そっと俺に近づき頬を撫でる。


夜「よい一日を・・・」

僕「夜さん。ちょっと、そこでストップ」

夜「はい?なんですか?」

僕「テーマ、決めました」

夜「・・・そうですか。結局何にしたんです」

僕「ふふ・・・。そのまま、少し動かないで。すぐに書き上げてしまうから」

夜「・・・この格好、はずかしいんですけど」


昼、部屋に入ってくる。


昼「あれ?夜ちゃん、まだいたんだ?」

僕「昼さん、いいところに。彼の傍にいってくれる?」

昼「えっ!?なんでですか!?」

僕「いいからいいから」

夜「昼、見てみてください。彼の寝顔、結構かわいいですよ?」

昼「えっ?・・・あ、本当。いつもこうならいいのに」


僕、しばらく三人を見て描き続ける。


僕「・・・うん。2人とも、いいよ」

夜「ん・・・つかれた・・・。私はそろそろ帰ります」

僕「あはは、お疲れ様。僕も作品できたし、いくとしようかな」

昼「あっ、あの・・・!この状況で2人っきりっていうのは・・・」

夜「今更何いってるんです・・・これから彼を導くのは貴女の役目なんですよ?」

昼「えっ!だって、彼は私を・・・」

僕「昼さん。この作品、彼が起きたら見せてあげてください」

昼「あ、はい」

夜「それでは」

僕「またね」


夜と僕、部屋を去る。
部屋には昼と、眠る俺だけが残る


昼「もう・・・早く起きてください・・・」

俺「ん・・・」

昼「私、帰っちゃいますよ?」

俺「あ・・・昼、か?」

昼「そうですよ、昼です」

俺「・・・そうか・・・もうそんな時間か・・・」

昼「これ、見てください」

俺「あ・・・これ・・・」


昼は僕が描きあげた絵を俺に渡す。


俺「『夜明け』・・・そっか」

昼「そっか、って?」

俺「いや・・・やっぱり夕焼けよりこっちの方がしっくりくるわ」

昼「ぷっ!なんですかそれ」

俺「うるせぇな!いいだろ、別に」


俺と昼、微笑みあう。


昼「おはようございます。一緒に、素敵な一日にしましょう」

俺「・・・ああ・・・おはよう。いい一日になるさ」


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