夜更かしの一日
作者:ススキドミノ
昼♀
夜♀
俺♂
僕♂
※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)
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キャンバスに向かう僕。
俺は部屋の隅からそれを腕組みしながら見つめている。
笑顔を浮かべながら昼が入ってくる。
僕はそれに気づき声をかけた。
僕「昼さん」
昼「どうも、こんにちわ」
僕「そろそろ来るころだと思ってたよ」
昼「待ち遠しかったですか?」
僕「ええ、とても」
昼「ふふ、お世辞でもうれしいです」
僕「もちろんお世辞ですよ、なんたって僕ですから」
昼「そうでしたね。・・・それで、作品はできましたか?」
僕「ええ・・・それが、ね」
昼「まだ白紙、ですね」
俺「テーマが決まらないんだとさ」
俺は不機嫌そうに声をかける。
それに驚いた様子の昼。
昼「あ、貴方もいたんですね」
俺「いちゃわるいか・・・」
昼「いえ、そんなことはいってませんけど」
俺「言葉の端々に不機嫌さが垣間見えるんだが?」
昼「それは・・・被害妄想です!」
僕「2人ともその辺で・・・」
俺「その必要はないぜ、俺はもう出て行くからな」
そういって出口へと向かう俺。
僕は気まずそうにとめに入る。
僕「またそんなこといって・・・」
昼「・・・私の所為ですか!?」
俺「・・・あ?」
昼「いいたいことがあるなら面と向かって言えばいいんです!」
俺「別にいいたいことなんてない」
昼「っ!・・・そうですか」
俺「ああ、そうだ。いいたいことなんて、ない」
俺、そういって部屋を後にする。
僕と昼は気まずそうに佇んでいる。
やがて沈黙に耐え切れなくなった僕が口火を切る。
僕「あ、あの!いいテーマとか、ないかな?」
昼「テーマ・・・?ああ!テーマ、ですね。忘れてました」
僕「正直なのはいいことだけど・・・忘れてたってのはちょっと失礼じゃないかな?」
昼「ふふ、そうですね。ごめんなさい」
僕「彼の事だけどさ・・・気にしないってのは無理なことだと思うけど」
昼「大丈夫です!いつものことですから」
僕「そう・・・なら、いいんだけどね」
昼「それでテーマなんですけど・・・夕焼けなんてどうでしょう?」
僕「夕焼け?どうしてまた」
昼「なんとなくです。だって、綺麗じゃないですか」
僕「そう・・・だね。うん、それで描いてみるよ」
昼「できたら見せてくださいね!」
僕「もちろん、楽しみにしててよ」
昼「はい!それじゃあ私、そろそろいきますね!」
僕「うん、じゃあまた明日」
昼「はい!」
昼、部屋を出て行く。
僕は一人窓の外を眺める。
僕「夕焼け・・・か」
夜と俺、部屋にそっと入ってくる。
僕「夜さん」
夜「随分と感傷的ですね」
僕「そろそろ来るころだと思ってたよ」
夜「当然です、決まっていることですから」
僕「君も一緒だったんだ」
俺「・・・偶然そこであってな」
夜「何が偶然、ですか。ずっと廊下に座っていた癖に」
俺「っ!うるせぇな!」
僕「君はどうしてそう・・・いや、なんでもない」
俺「なんだよ、いいたいことがあるなら言えよ」
僕「おや?それと同じ台詞をさっき聞いたような気がするんだけどな?」
俺「うっ・・・」
夜「・・・貴方また昼と喧嘩したんですか?」
俺「別に、喧嘩ってわけじゃねぇよ・・・ただ・・・」
夜「ただ?」
俺「ちょっと苦手ってだけだよ・・・」
夜「はぁ・・・だからって、私を頼られても困るんですけど?」
俺「俺がいつお前に頼ったってんだよ!」
夜「・・・わかってないならいいんです」
俺「・・・わけわかんねぇ」
俺ふてくされながら部屋の隅の椅子に座る。
夜「それで、作品は書けたんですか?」
僕「それがまだ・・・テーマは決まったんだけどね」
夜「何にしたんです?」
僕「夕焼け」
俺「・・・っ!」
俺は驚いたように席を立つ。
夜「それは、貴方が決めたんですか?」
僕「違うよ、これは昼さんが提案してくれたんだ」
俺「本当か・・・?」
僕「どうかしたの?」
俺「いや、だって・・・昼が・・・本当に・・・」
夜「・・・何かおかしなことでもあります?」
俺「いや・・・ない・・・けど」
俺力なく椅子に座る。
夜はそっと俺に近づく。
夜「貴方が考えてること、わかりますよ」
俺「わかるわけ、ないだろ」
夜「いえ、わかります」
俺「わかるわけない!・・・俺だって、わからないのに・・・!」
夜、そっと俺を抱き寄せる。
俺「・・・なんのまねだよ」
夜「貴方が望んでいることです」
俺「そんなこと、望んでなんかない」
夜「いいえ。貴方はどうしようもなく寂しがりで、そのくせ一人になりたくって・・・だから私にあいに来るんです」
俺「違う!俺は、単純にお前のことが・・・!」
夜「ええ、わかってます。だけど、それだけではダメなんです。ダメなんですよ」
俺「それだけじゃ・・・」
夜「私の腕の中は、気持ちがいいでしょう?静かで、柔らかくて、何人も貴方を侵すことはありません」
俺「ああ・・・すごく、気持ちがいい」
夜「だれもが皆、私の腕に抱かれてゆっくりと目を閉じるんです」
俺「目を・・・閉じる」
夜「そうです。貴方もほら、目を閉じて・・・」
俺「うん」
夜「私はここにいます。だから・・・安心して。眠って」
俺「・・・うん」
俺はゆっくりと眠り始める。
夜、そっと俺を横たえると僕の元へと向かう。
僕「お疲れ様。やっぱり、夜さんがいなくては彼はダメなようだね」
夜「別にそういうわけではありませんよ。私は、ただの寝床。そういう役なんです」
僕「と、いうと?」
夜「私がいるから、彼は彼女を待つことができる。昼を、もっと愛することができるんです」
僕「それじゃ、貴女は?寂しくはないのかい?」
夜「いったでしょう?私は寝床・・・彼の寝顔を見守る、それでいいんです」
僕「なるほどね。彼は幸せ者だ」
夜「ええ、本当に・・・」
僕「・・・彼はどうするんだろうね?」
夜「どうもこうも、きっと彼自身気づいているでしょう」
僕「それもそうか」
夜「それでは私はそろそろ・・・彼女もくる頃です」
夜、そっと俺に近づき頬を撫でる。
夜「よい一日を・・・」
僕「夜さん。ちょっと、そこでストップ」
夜「はい?なんですか?」
僕「テーマ、決めました」
夜「・・・そうですか。結局何にしたんです」
僕「ふふ・・・。そのまま、少し動かないで。すぐに書き上げてしまうから」
夜「・・・この格好、はずかしいんですけど」
昼、部屋に入ってくる。
昼「あれ?夜ちゃん、まだいたんだ?」
僕「昼さん、いいところに。彼の傍にいってくれる?」
昼「えっ!?なんでですか!?」
僕「いいからいいから」
夜「昼、見てみてください。彼の寝顔、結構かわいいですよ?」
昼「えっ?・・・あ、本当。いつもこうならいいのに」
僕、しばらく三人を見て描き続ける。
僕「・・・うん。2人とも、いいよ」
夜「ん・・・つかれた・・・。私はそろそろ帰ります」
僕「あはは、お疲れ様。僕も作品できたし、いくとしようかな」
昼「あっ、あの・・・!この状況で2人っきりっていうのは・・・」
夜「今更何いってるんです・・・これから彼を導くのは貴女の役目なんですよ?」
昼「えっ!だって、彼は私を・・・」
僕「昼さん。この作品、彼が起きたら見せてあげてください」
昼「あ、はい」
夜「それでは」
僕「またね」
夜と僕、部屋を去る。
部屋には昼と、眠る俺だけが残る
昼「もう・・・早く起きてください・・・」
俺「ん・・・」
昼「私、帰っちゃいますよ?」
俺「あ・・・昼、か?」
昼「そうですよ、昼です」
俺「・・・そうか・・・もうそんな時間か・・・」
昼「これ、見てください」
俺「あ・・・これ・・・」
昼は僕が描きあげた絵を俺に渡す。
俺「『夜明け』・・・そっか」
昼「そっか、って?」
俺「いや・・・やっぱり夕焼けよりこっちの方がしっくりくるわ」
昼「ぷっ!なんですかそれ」
俺「うるせぇな!いいだろ、別に」
俺と昼、微笑みあう。
昼「おはようございます。一緒に、素敵な一日にしましょう」
俺「・・・ああ・・・おはよう。いい一日になるさ」
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