トイレロード
作者:たかはら たいし


・住吉寒太♂
トイレを我慢しているいっぱいいっぱいな成人男性
・押上雲子♀
トイレを我慢しているいっぱいいっぱいな成人女性
・クニさん♂
高幡不動五丁目公園に住むホームレスのお爺ちゃん
・マンさん♀
高幡不動五丁目公園に住むホームレスのお婆ちゃん





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(ドアをノックする)
(沈黙)

寒太「まだかな…?」

(ドアをノックする)

寒太「早くしないとデートに遅れちゃうよー、もう、こんな事なら駅のトイレ行っておけばよかった…」

(強くドアをノックする)

寒太「それに僕、公園のトイレ嫌いなんだよな…、汚いし、臭いし、たまにおっきいのがそのままになってるし」

(更に強くドアをノックする)

寒太「……にしても、いつまで入ってるのかなぁ?このままだと、僕の限界が」
クニ「名乗れ、青年」
寒太「え?」
クニ「名乗れ、青年」
寒太「え…トイレの中から?」
クニ「そうだ、私がオマエの脳に直接語りかけている」
寒太「いや、完璧にこの中から聞こえてますけど…」
クニ「名乗れ、青年」
寒太「す、住吉寒太です」
クニ「オマエは、この中に、トイレに入りたいか?」
寒太「そうですよ、早く出て来て下さい!」
クニ「フォッフォッフォッフォ....この中に入る資格がオマエにあるのかどうか……」
寒太「資格?何言ってんすか?共同用トイレですよ?ひょっとして嫌がらせですか!?」
クニ「…ほう、そうか。私の名が知りたいのか?」
寒太「聞いてません!どうでもいいです!」
クニ「あっそ、ふぅぅぅん、へぇぇ、そう。じゃあ、もう三時間ぐらい入ってようかなー
このままゴルゴ13全巻読み終わるまで居座ろうかなー」
寒太「はぁ!?わかりましたよ、じゃあ貴方は誰なんですか?」
クニ「お願いします」
寒太「え?」
クニ「教えてほしければ、アントニオ猪木の物真似をした上で「お願いします」と言え」
寒太「はぁ!?なんでそんな事を僕がしなきゃなら」
クニ「(遮って)あー、なんだか眠くなってきたよパトラッシュ・・・(大きく欠伸)」
寒太「〜〜〜〜〜っ!

元気ですかぁぁぁぁ!!!!!
元気があれば何でも出来る
いくぞぉぉぉぉぉ!!!!!!!

いーち!!!!

にー!!!!!!

さーん!!!!

ダアァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!

……お、お願いします」

(クニ役の人は自分の気が済むまで寒太役の人に物真似をやり直しさせて下さい)

クニ「……いいだろう。私の名前はトイレロード、この高幡不動五丁目公園共同用トイレの王である」
寒太「ト、トイレの王……!?」
クニ「私の声はオマエにしか聞こえていない」
寒太「(半信半疑で)…え、ホント、に?」
クニ「私はオマエの影、いわばオマエの欲望が作り出した幻影である」
寒太「え、トイレの王じゃないの?」
クニ「トイレの王、兼、オマエの幻影だ」
寒太「え、いくらなんでもそれはちょっと無理が…」
クニ「オマエは大を我慢しているのだろう?」
寒太「え!?なんで?」
クニ「言ったはずだ、私はオマエの幻影だと
すなわち、オマエの考えている事は私の考えと同義」
寒太「え、じゃあ…」

(寒太、ドアをノックする)

寒太「このドア、本当に僕のせいで開かないのかな?」
クニ「オマエがオマエ自身の欲望に勝てぬ限り、この鉄の扉は固く閉じたままだ」
寒太「えーっ、そんなぁ…、急にそんな事言われたって……」
クニ「ちなみに私のケツの扉も固く閉ざされたままだ」
寒太「どうだっていいよ!」
クニ「目を閉じてみろ寒太、心を無にするのだ、全ては無である」
寒太「こ、心を無に……」

(目を閉じて瞑想する寒太)

寒太「く、臭い…何の匂いだろ?」

(後ろからマンさん登場、寒太の後ろから声をかける)

マン「こんにちわ」
寒太「臭さっ!ど、どーもこんにちわ…」
マン「あらあら、私そんなに匂う?」
寒太「そ、それはとても」
マン「あら、そう?ホームレスになっても濃厚な雌の匂いを発してしまうなんて、…私ったら罪な女」
寒太「あの、なに言ってるんですか?」
マン「こんな身分だけどね、五日に一回はちゃんと洗うようにしてるのよ。・・・ナニを。」
寒太「聞いてないですそんな事!」
マン「そこの水飲み場で」
寒太「何してんですかっ!」
マン「うえっへっへっへ....、ナニを洗ってるのよ」
寒太「そういう事じゃねーよ!」
クニ「おや、その声……、ひょっとしてマンさんか?」
マン「あら、クニさん。今日もそんな所にこもっちゃって」
寒太「ちょっと…」
クニ「昨日から便秘でね、今ようやく尻からちょっぴり出てきたところだ」
寒太「ちょっと待ってください!今、なんて?」
マン「水飲み場で」
寒太「それはもういいんだよ!」
マン「あら、じゃあ私の雌の部分について深く知りたくなったのかえ?」
寒太「違げぇよババァ!今、この中に入ってる人をなんて呼びました?」
マン「クンn..」
寒太「(遮って)クニさんって言いましたよね?」
マン「はぃぃぃ、だってアンタはトイレの王なんかじゃない…
クニさんは、クニさん…ホームレス以上ホームレス未満なんだから……」
クニ「………マンさん。貴方に、気付かされるとはな。所詮、私はどんな着飾っても私でしかないのだな」
マン「クニさん、私、やっぱり貴方の事が」
クニ「私もだよ…、私も、マンさんを愛している。マンさんの心も、体も、マンk」
寒太「(遮って)なにがトイレロードだクソジジィがぁぁぁぁッ!」
クニ「はっはっは、クソをふんばっているジジイだけにクソジジイってな、はっはっは」
マン「あら流石。よっ、クニさん!座布団もう一枚!」
寒太「流石じゃねーよ!おい!一刻も早く出てこい!割と限界なんだよ!猪木の真似辺りからいっぱいいっぱいなんだよ!!」
マン「いっぱいおっぱい」
寒太「うるっせーぞババァ!!開けろジジイ!!」

(焦った様子で雲子登場)

雲子「ああ、まずい。早くなんとかしなきゃ……」

(クニの入ってる共同用トイレの前にいる寒太へと話しかける)

雲子「あの…、今って、順番待ちですか?」
寒太「ええ、それはもう」
雲子「…ん?うっ、なにこの匂い……、鼻がやられちゃいそう」
マン「あらあら、こんなめんこい子にまで私の雌の匂いが伝わるなんてねぇ」
雲子「げほっごほっ、これ、何の匂いですか?」
マン「私の、ナニの匂いだよぅ」
寒太「口塞げババア」
マン「え?んぅぅぅぅぅ」
寒太「ちょ、なっ、なにしてんですか!」
マン「口を塞げって、私と熱い接吻を交わしたいのじゃろ?ほれ、ほーれほれほれ、キスミーベイベー、キスなう、キスなう」
雲子「え、えぇっ、そういう関係?」
寒太「ちっがーう!黙れってんだよババァ!あ、あの、貴方ももしかして……」
雲子「(恥ずかしげに頷く)」
寒太「他のトイレ探した方がいいですよ?ここのトイレ当分空かな、あーっ!!」
クニ「あーっ!!!もーう、急に大声出すから引っ込んでいってしまった……」
寒太「…そうだよ、他のトイレを探せば良かったんだよ!なんで今まで気付かなかったのかなぁ」
クニ「それならやめておけ」
寒太「え?」
クニ「ここから5キロ圏内にトイレは存在しない。今のオマエの状態では、もって3キロ地点が限界といったところだろう」
寒太「そっ、そんなぁ」
雲子「あの…、公園出て真っ直ぐ行った所にコンビニありましたけど、」
寒太「え、ホントに?」
クニ「……あったっけ?あったかもしれないしそうじゃないかもしれない」
寒太「クソジジイ、…あー、もういいや!僕はそっち行きますから!」
マン「そっちって前の穴?後ろの穴?」
寒太「なんでいちいち卑猥な方向にもってくんだよ!
あ、じゃあ、これで失礼しますからね!さようなら!」
マン「達者でやれよー」

(寒太退場)

雲子「(走って遠く離れていく寒太を見つめながら)…ごめんなさい」
マン「はぃぃ?」
雲子「真っ直ぐ行っても、コンビニなんてないんです……」
マン「ふぇぇ?」
雲子「トイレ、我慢出来そうにもなくて、嘘付いちゃいました…」
クニ「だよねぇ!そうだよねぇ!ワシ正しかったよね!私たち、これでよかったのよね!?」
マン「クンさんの言う事は全部正しいですよ」

(トイレのドアを叩く雲子)

雲子「あの、早く出てもらえませんか?私、もう限界なんです」
クニ「…ほう、ワシに抱かれたくて抱かれたくて仕方ないのか」
マン「ぬわぁぁんだとぅぅ!?おい、ふざけてんじゃねーぞクソアマ!!
クニさんは私のもんなんだよ!アンタみたいなあばずれ女に渡してたまるもんですかい!!」
雲子「あばずれじゃないし、抱いてなんて言ってません!トイレに入りたいんです!」
マン「ふん、どうだかねぇ、そんな切なげな声を出して、夜はベッドの上でどんな叫び声をあげてるんだかねぇ」
クニ「お嬢さん、お名前は?」
雲子「へ?え?」
マン「名前答えろって言ってんだよクズが!」
雲子「一体なんなんですかアナタ!……お、押上といいます」
マン「かーっ、押上!?昔、私を孕ませて逃げた男が住んでたよ!嫌な事思い出させやがって、いちいち勘に触る子だね!」
雲子「知りませんよ!」
クニ「下の名前は?」
雲子「えっ?…あの、名字だけじゃ…ダメ、ですか?」
クニ「左様。このトイレに入るには、フルネームを答える必要がある」
雲子「え、えーっ、そんなぁ……あの、私、下の名前が嫌いで」
マン「(遮って)かーっ!ぺっ!カマトトぶってんじゃないよ!
早く言わないと秘奥義(ひおうぎ)「スルメ乳(ちち)ヌンチャク」をお見舞いするよ!!あたたたたたたた!ほわちゃぁっ!」
雲子「………子」
マン「あぁーんっ!?あんだってぇ!?あたしゃ、耳が遠くてねぇ!」
雲子「う……こ」
マン「あぁーんっ!?だーから聞こえないって言ってんだよぉ!」
雲子「おしあげうんこって言います!!」

(沈黙)

クニ&マン「ぷっ」
クニ「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
マン「いひひひひいひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!」
雲子「あぁ、もう…、だから名前言うの嫌だったのにぃ」
クニ「うんこ」
マン「うんこ」
クニ「うんこ」
マン「うんこ」
クニ「うんこ」
マン「うんこ」
クニ「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
マン「いひひひひいひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!」
雲子「もうやめてぇ…」
クニ「うんこさんは小がしたいの?それとも大?」
雲子「そ、それは……」
マン「Hey!You!クンさんが聞いてんだろうがァ!」
雲子「そんな事言われても……」
マン「とっとと言いなぁ!秘奥義「スルメ乳地獄絞め」をお見舞いするよ!!」
雲子「……だ、大ですっ」

(沈黙)

クニ&マン「ぷっ」
クニ「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
マン「いひひひひいひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ!」
雲子「もういやぁ・・・」
クニ「うんこちゃんがうんこ」
マン「うんこちゃんがうんこ」
クニ「うんこちゃんがうんこ」
マン「うんこちゃんがうんこ」
クニ「こいつは傑作、傑作」
マン「こいつは愉快、愉快」
雲子「もういいでしょ!早く出てきてくださいよ!」
クニ「いやぁ、なに…、雲子ちゃんのおかげでワシの尻穴から今まさにうんこちゃんが顔を出したとこじゃ」
マン「あら嫌ですよぉクンさん」
雲子「ホントに嫌ですよ!セクハラだし名前言った意味無いじゃないですか!あぁぁぁぁっ、もうっ、漏れちゃうー」

(雲子、トイレのドアをノック)

マン「はうぁっ!」

(急にうずくまるマンさん)

マン「うっ、うぅぅぅぅ…」
雲子「え?ちょっと…、どうしたんですか?」
マン「うぅぅぅ、……くっ、苦しい………」
雲子「お婆さん!」
マン「お腹……お腹がぁぁ………」
雲子「あっ、救急車呼ばなきゃ!」
マン「ワシも、ウンコしたい」
雲子「いい加減にしとけよババァ」

(寒太登場)

寒太「うぉぉおおおおおおおおおおおおっ!!」
雲子「(焦った様子で)あ、あら?さっきの・・・・・・」
寒太「きみぃぃぃぃ!?嘘付いたでしょぉぉぉ!?どれだけ真っ直ぐ行ってもコンビニなんて無かったよぉぉぉぉ!!」
雲子「ご、ごめんなさい、本当にごめんなさいっ!」
寒太「もう此処でするしか無いと思って引き返してきたのに…」

(ドアを叩く寒太)

クニ「おお、その声…、もしかして、アントニオ猪木さんかい?」
寒太「出てきてくれ!もう突っ込む余裕が無い程に限界なんだっ!」
マン「突っ込むって、上のお口に?下のお口に?」
寒太「採れたてのキュウリでも突っ込んでろババァ!」
雲子「わっ、私も!そろそろ限界ですっ、開けて下さい!!」

(寒太と一緒にドアを叩く雲子)

クニ「ちょっと待ってくれ。
もう少しで、なにかが、出そうなんだ……うっ!?お?おお!?
お、出る、あ、来た、来た、さぁ、今まさに第4カーブを曲がった!あ、ようやく出そうな気がする!!」
寒太「うわあぁぁぁっ、早くしてくれぇ!!」
雲子「お願いします!一刻も早く出して!!」

(ドアを叩く二人の横、マンさんも一緒にドアを叩きだす)

寒太「お婆さん?」
マン「水臭いじゃないか、二人とも…アンタ達が辛いのは良くわかったよ、どれほど苦しかったのかも、よーくわかった」
寒太「お婆さん、あんた、実はいいひと」
マン「(遮った)アタシももう限界さね!おいジジイ!とっととしとくれー!」
寒太「お前もか!」
雲子「そんな事だと思った!」
クニ「ぬぅぅぅぅぅぅぅいぃぃぃぃぃよろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ...」
寒太「開けろおおおおおおおおお!!」
雲子「開けてえええええええええ!!」
マン「開けてたもれええええええ!!」
クニ「あさばななだいえっとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ....」
寒・雲・マ「クソジジィィィィィィッ!!」
クニ「ふぬるぅぅぅわぁぁああああああああああああっ!!!!!   ……おっ」

(沈黙)

クニ「はぁ、出たぁ」

(水の流れる音。開いたドアからクンさん登場。そして、トイレの前でうなだれる三人)

クニ「ふゥ〜、すっきりすっきり♪いやぁ、待たせてしまっ……、ん?なんか、臭い……」
寒太「あははは、なんか、ほかほかしてる…」
雲子「ああああ、もう、お嫁には行けない…」
マン「クンさん、あんたはいっつもそうさ…、いっつも一足遅いんだ……」
クニ「あ、ひょっとして、君達三人揃って……」


(嫌な間)


寒太「公園のトイレなんて大嫌いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」


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