GCP
作者:domino


ピエロ:ニット帽の優男
エリート:オールバックの強面
レディ:背の高いオカマ
ガール:東洋人の少女

オリジナル動画
VoiceDoramaGCP







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 <某国の外れ、国道の脇にひっそりと佇むモーテルの一室。銃を構えた人間が四人>
 <ピエロ→ガール→レディ→エリート→ピエロの順に銃を相手に突きつける4人>


ピエロ:いやぁ……なんなんだろうねぇこの状況。

レディ:綺麗な四つどもえ。こういうことってあるのねぇ。

エリート:死にたくねぇなら黙って銃を降ろしてくれると助かるんだがな。

レディ:男っていっつもそう、銃を向ければ女を組み敷けると思ってるから困りものよね。
    いつでもどこでも、もちろんベッドでも。

ピエロ:あはははは!!
    ……あれ……これ笑うところだよね。

レディ:どういう意味よ。

ピエロ:あんたを組み敷ける男なんてそうそういないって。

レディ:そういうことは試してからいってくれないかしら。

ガール:無駄話はいいから、とっとと用事をすませませんか。

エリート:その前に一ついいか…お前らなにもんだ。

レディ:やだぁ〜! なになにナンパ?

エリート:ちげぇよ! なんでそうなる!!

ピエロ:いやぁ〜! カップル成立! めでたいねぇ〜!

ガール:銃を構えているってことは全員目的は一緒でしょう。

エリート:あのなぁ……なんで俺がてめえらとクソくせぇ空気共有してまでにらめっこしてると思ってんだ。
     撃つ気なら最初(ハナ)っから撃ってる。

ピエロ:ばーん! ……おーこわ!

レディ:邪魔するやつが入れば問答無用で撃ち合って、自分以外全員を始末して目的を達成し、家に帰って美味しいワインを飲む。
    そんな都合の良いこと本気で考えちゃうオバカさんだから、あたしたちはいつまでも悪い事がやめられない。

ピエロ:そのとーり!悪事をしても捕まらない、やられない、だから美味しい汁だけ啜ってトンズラしちゃおう!いやぁ、悪党の鑑だよねぇ

エリート:そんな悪党が雁首そろえて相手の出方を窺ってる、と。
     どうする? 悪党らしくこのままここで撃ち合ってみるか。
     それともーー少し我慢して、話しあってみるか。

レディ:見た目と違って意外と冷静なのね、関心しちゃったわ。

エリート:本当は今すぐにでもてめぇら全員ぶち抜きたいんだが、そうもいかないんでな。

レディ:キャー! ぶち抜かれちゃうわー!

ピエロ:こわーい! ひっひっひ。

レディ:でも……話し合ったところで妥協点なんてもの本当にあるのかしらね。

ピエロ:あると嬉しいんだけどねぇ。正直俺は最初っからノリで構えてるだけで、あんたら撃ったって一銭の得もないんだ。
    穏便にすむならそれにこしたことはないし。

ガール:――それはつまり、

ピエロ:へ?

ガール:貴方には撃つ意思がないといっているんですよね。

ピエロ:まぁ、そういうことだけど。

レディ:となるとまずそこの坊やの目的は絞られてくるわねぇ。
    殺しじゃない、そしてここは私のモーテル。つまり坊や、目的は盗み?

ピエロ:いやぁ……ははは! どうだろうなぁ!

ガール:どうです、まずそこの盗人を全員で撃つっていうのは。

ピエロ:ちょっ!

レディ:ただの盗人ならそれでもかまわないけど――今撃つわけにはいかないわね。

ガール:何故ですか?

エリート:つまりそれがそこのオカマの“事情(ワケ)”ってこった。

ガール:もし仮に“事情(ワケ)”があったとしても、最終目的次第では結局撃ち合いになるわけですよね。

エリート:撃ち合わない未来もあるってことだ。
     少なくとも俺の目的は、ここで無茶して殺し合うことじゃあないんだよ、お嬢ちゃん。

ピエロ:いやぁ〜はっは、こりゃあ傑作だねぇエリートさん! よりにもよって“銃を持ってるあんた”の口からそんな言葉を聞くとは。

エリート:――気が変わった。死んどくか、お前。

レディ:こら、ちょっと待ちなさいって。

ピエロ:そうそう、この程度の挑発で熱くなってちゃ今までの平和な流れが台無しだよ。エリート。

ガール:さっきからなんなんですか……? その、『エリート』というのは。

ピエロ:ああ、呼び名だよ。だって、みんな名前なんか教えてくれる気ないっぽいし。

レディ:エリート……ぷっ!

ガール:確かに似合ってます。

エリート:ぶっ潰す!

ピエロ:でもって、こちらのお嬢さんの呼び名は『ガール』。

レディ:あっはっは! それもピッタリね!

ガール:ぶっ潰す!

ピエロ:すげー殺気、おしっこちびりそう。

レディ:で、坊や。私の呼び名は?

ピエロ:ご冗談をレディ。あんたは有名人でしょうに。

レディ:もう……なんか仲間はずれな気分〜。

ピエロ:――にしても、不満そうだねぇ〜エリートさん。

エリート:てめぇ……俺の事も知ってるんだろうが。なんで『呼び名』なんて回りくどいこといいやがる。

ピエロ:え? 僕は一度も知ってるなんていってないけど。

エリート:……は?

ガール:『よりにもよって銃を持ったあんたの口からそんな言葉を聞くとは』……確かに知っているとはいってませんね。

ピエロ:ワーオ! すごい記憶力だねぇガール!

エリート:そうか……そういうことか。

レディ:ちょっと、早とちりして恥ずかしいからっていきなり撃つとかやめてよね。

エリート:んなことしねぇよ。それより、てめぇの呼び名をまだ聞いてないんだが?

ピエロ:え? 僕? いやぁ〜、あだ名を自分でつけるのってハードル高くない?
    ちょ〜っと自分可愛さで、ものっすごいデブなのに『ぽっちゃまん』的なあだ名つけてさ。
    『何お前?お前ぽっちゃりとかそういうレベルじゃないからね?』ってんで、
     最終的に『にくだま』とかそういう直接的なあだ名で呼ばれちゃって、
     心に深ーい傷跡が残ったりとかさ、そういうことになりかねなくない?

ガール:うざいですね。

レディ:うざいわね。

エリート:撃っちまうか。

ガール:賛成です。

レディ:そのほうがいいような気がしてきたわ。

エリート:満場一致だな。

ピエロ:ほんの冗談なんで勘弁してください!

ガール:――ピエロ、でどうです?

ピエロ:え?

エリート:いいんじゃねぇか。

レディ:ぴったりね。

ピエロ:……え、ちょっと待ってよ。

ガール:貴方の呼び名はピエロね。

ピエロ:ちょっと! それってカッコ悪くない!?

レディ:さ、全員分の名前が決まった所で話を戻しましょうよ。

ガール:ここにいる“目的(ワケ)”について、でしたっけ。

エリート:別に全てを話さなくても良い、嘘をつくのもアリだ。

レディ:あら、そんなに緩いルールでも良いわけ?

エリート:別にこれはゲームじゃあない。それに……わざわざ言わなくたって、ここの会話にゃ騙しのオンパレードだろうさ。なぁ?

ピエロ:ん? そこでなんで僕を見るかなぁ。

ガール:あなたが一番その手の嘘が得意そうだからじゃないですか。

レディ:撃ち合いならともかくとして、嘘を喋るのには一番慣れてそうよね。

ピエロ:ひどいなぁ、そんなに簡単に人を判断していいわけ? 僕からすればもーっと嘘ついてる人がいると思うんだけど。

エリート:ほう、気になるねぇ。誰の事だ。

ガール:……それは全員ついてるでしょうし――

ピエロ:そりゃあもちろんレディだよ! 性別的な意味で人を騙してるし!

レディ:おっほっほ! あんま調子乗るんじゃないわよピエロちゃん。お姉さん、怒ると結構怖いんだから。

ピエロ:へへへ、怖いのは知ってるって、あんたがこの中じゃ一番大物だしさ。

ガール:通称“死の魔女レディ”。貿易商。
    取り扱う商品は、フライパンやトイレの便座から機関銃やミサイル、人の命まで。
    合法、非合法問わずどんな場所でも届ける、そしてどんな邪魔が入ろうと取引を成功させる。

レディ:やーんもう……そんな物騒な情報が出回ってたんじゃ男が寄ってこなくなるじゃないのよ!

ピエロ:ガール、ずいぶんと詳しいねぇ。

ガール:……少し調べればわかることです。

ピエロ:そんなことないと思うんだけどなぁ。
    情報統制がしっかりしているからこそ、レディは平然とテレビにコメンテイターなんて立場で出れちゃうわけだし。
    ……それを知ってるガールって何者なのかなぁなんて、僕としては思っちゃうわけなんだけど。

ガール:ここまでの大物の情報ならある程度を裏をうろついていれば手に入ります。
    貴方が行き当たりばったりでやってきたというだけのことではないですか?


 間


ピエロ:ふーん。そっか、ならいいんだけどねぇ。

ガール:何が言いたいんです。

レディ:もぅ、二人とも子供ねぇ。……それで、エリートも私のことは知っているんでしょう?

エリート:ああ。俺のところじゃ一番最初に教わる、“絶対に銃を向けてはいけない相手”だからな。

レディ:別に銃を向けたからってなにもしやしないわよ……。
    それで、私の事をそこまで知っている貴方達三人が、何故私が泊まっている部屋に集まってきたのかしらね?
    それに、銃まで持って。


 間


レディ:正直にいってごらんなさい。この中に私を殺すつもりで来た人はいる?


 間


レディ:返事がないってことは三人ともそういうことでいいのかしら? そうなると私には妥協点なんてなくなっちゃうわけなんだけど。

ピエロ:すっごい迫力……冷や汗が出てきたよ……。
    一抜け! 僕はさっきポロっと言ったけど、この部屋には盗み目的で入ったんだよね。

レディ:信じる信じないは置いておくわ。他の二人はどうなの?

エリート:俺は、少なくとも殺しが目的じゃあないな。

レディ:それもどうだかねぇ……ガールは?

ガール:……。

レディ:どうなの?

ガール:私は――

ピエロ:ちょっとちょっと、もしかしてもう攻める気?

エリート:てめぇはちょっとは黙ってらんねぇのか。

ピエロ:だって、この状況を動かす大きな情報が今もたらされようとしてるんだよ!
    これはまさに生と死を分ける境界線を引く為のチョークのごとき――ごめんごめん睨まないでよ…。

ガール:私は……連邦捜査官です。


 間


レディ・ピエロ:ぷっ…あっははははははははは!

エリート:うるせぇ…笑い過ぎだ。

レディ:だって真面目な顔して大ギャグかますんだもの!

ピエロ:ずるいよ! いきなりこれはずるいって!

エリート:まぁこのアホ共はともかくとして、意見としては俺も同じだ。それを信じろって方が無理な話だぜ。

ガール:腹立たしすぎて今すぐ銃口を引きたい気分ですが、一応聞きましょう。
    何故、信じられないんですか?

ピエロ:だってガール、君今何歳よ。

ガール:25歳ですが。

 間

ピエロ:……冗談だよね。

ガール:童顔で、身体が未成熟なのは認めます。……が、実年齢は25、新人ですが列記とした連邦捜査局所属の特別捜査官です。

レディ:……こういってるけど、どうする?

エリート:……ここでこんな臭い嘘をつく理由が思いつかん。ピエロじゃあるまいしな。

ピエロ:だんだんと扱いが軽くなってないかな?

レディ:ガール、貴方のご両親は二人とも東洋系?


 間


ガール:ええ。東洋人ですよ、レディ。

レディ:やっぱり? 東洋人が若く見えるって本当なのね! 羨ましいわぁ。

エリート:ガールの話が本当だと仮定して話を進めるぞ……連邦捜査官が此処にいる理由はなんだ?

ガール:……。

ピエロ:いやいや! それを話さないと素性を明かした意味ないでしょ! それとも何、私は捜査官だから貴方達逮捕しまーすって?

レディ:ぎゃーぎゃー騒がないの。理由なんてそうはないでしょ。

エリート:レディを捕まえるため、か。

レディ:もしそれが目的なら、捕まえる為の”何か”を見つけるために侵入したと考えるのが自然よね。
    いつもなら厳重なセキュリティに囲まれている私が、こんな安モーテルに護衛もつけずに滞在してるんだもの。

ピエロ:どっきー! なんか胸がドキドキしてきたよ。

レディ:でも、おかしいわねぇ……国家組織が“VIP”のあたしを捕まえるって?

ピエロ:あらま、国レベルで兵器売買契約とか結んじゃってるわけ?

エリート:考えるのもアホ臭いレベルだな……。

レディ:ガール、そろそろ話してくれないかしら。 あなたはこのモーテルに何をしにきたの?

ガール:私は……。

ピエロ:ちょ〜っと待って!

エリート:お前はいい加減に……。

ピエロ:ガールの言う事を信じるみたいな流れになってるからさ、釘さしておこうと思って。
    ……彼女の言ってることはぜーんぶ嘘だよ。

ガール:なっ!

ピエロ:彼女は連邦捜査官なんかじゃない。
    何故ならーー僕が本物の連邦捜査官だから。

エリート:おいおい……。

レディ:くっくっく……面白くなってきたじゃない。

ガール:貴方、何が目的ですか!?

ピエロ:それは僕の台詞だよ。連邦捜査官を騙って、何がしたいのかな。

エリート:くそ面倒なことになってきやがったな。

レディ:でも妥協点は見つかりそうよ。なんにせよピエロとガールの正体が判りそうなんだから…ねぇ?

エリート:……そりゃまぁな。

ガール:この腐れペテン師……!

ピエロ:こらこら、口が悪いよ?犯罪者さん。

ガール:いちいち気に障るんですよ貴方は。

レディ:それじゃあ……これから二人に質問をさせてもらおうかしら?

ピエロ:どうぞどうぞ! この際なんでも答えるよ。

ガール:……。

エリート:まずはガールだ。お前はどういう理由でここに来たんだ?

ガール:私は……レディの……正確にはレディと、大口の取引相手との関係性を調べる為にきました。

ピエロ:取引相手ってだれさ? 曖昧だなぁ〜。

ガール:……ちゃちゃを入れるな……!

レディ:続けて。

ガール:……私が一人でいるのは、これが単独調査だからです。

エリート:つまりそれは個人的にレディの身辺を調査してるってことか?

ガール:ええ。

ピエロ:ぷっ、くくく……ひどい言い訳。それでよりにもよって、単独で国際的VIPのモーテルに侵入したって?
    出世を急いだ新人捜査官っていう設定にしたって無理があるよね。

エリート:……確かに気になるな。危険を冒してまで調べに入った理由はなんだ?

ガール:私怨、ということで納得してください。

レディ:その私怨とやらはあたしに対して? それともあたしの取引相手に対して?

ガール:……。

レディ:まぁいいわ。……それでピエロ捜査官様はどうして此処へいるのかしら?

ピエロ:あれ?僕の事信用してない感じ?……まぁいいけどさ。――僕はね、偶然此処を見つけたんだよ。

エリート:偶然だぁ?

ピエロ:そ、偶然別件の調査から帰る途中、偶然このモーテルへチェックインした。
    すると黒塗りのフォードマスタングがモーテルに入って来たわけ。
    どこかで見た事有ると思って問い合わせたら、あの大物レディの車だった。
    だからスパイ行為でもしてないかと思って部屋を確認しようと思ったのさ。

エリート:部屋はどうやって知ったんだ?

ピエロ:受付で聴いたんだよ、レディの恋人だって偽ってね。
    簡単だったよ、『すみません……レディの部屋に呼ばれたんですけど』ってかわいこぶったら一発。
    そして部屋に入ると、ガールが先に衣装ケースを荒らしていた。
    僕がガールに銃を突きつけると、後ろからエリートが入ってきて僕に銃を突きつけた。
    レディがシャワールームから出てくると、ガールがレディを狙い、レディがエリートの頭を狙った。
    これでーーこの四つ巴が完成。

レディ:……部屋に入ってからは合ってるのかしら?

ガール:合ってます。

エリート:ああ。

ピエロ:で、ここからどうやって僕たちの正体を判断するのさ。

エリート:まだ質問は終わってない。……ガール、お前は誰にも言わずに単独で行動したんだったよな。

ガール:そうです。

エリート:ピエロ、お前は?

ピエロ:何を?

エリート:お前はモーテルでレディの車を発見した。連邦捜査局がレディを摘発する”証拠(穴)”を探そうと思っているなら、
     捜査局に連絡して指示を仰ぐのが当然だろう。

ピエロ:……あー! もちろん連絡したよ。

エリート:そうか……じゃあ何故応援に来ないんだ?

ピエロ:それは、僕が応援は要らないって連絡したから――

エリート:それこそ苦しい言い訳だぜピエロ。それともお前が出世を急ぐ新人捜査官なんて、くだらねぇオチじゃないだろう。

ピエロ:……。


 間


エリート:お前は信用できない。

レディ:これで、一つ妥協点ね。

ガール:ん? どういうことですか?

エリート:先ずピエロを撃つ。異論は無いだろ。この状況で、これだけわかりやすい嘘をついて俺たちを混乱させてるんだ。
     まともな思考とは思えねぇ。

ガール:……そうでしょうか?

レディ:こいつが連邦捜査官じゃないってわかっただけでガールも楽になったでしょう。
    このままだと、今度は自分がレディだ、なんていいかねないのよ。こいつは。

ガール:……そう、ですね。

エリート:今度こそ満場一致、だな。


 間


ピエロ:…ははは。

レディ:最期までいいピエロっぷりね! かっこいいわぁー…あたしも死ぬ前は笑おうかしら。

ピエロ:いや、エリート、レディ……あんたら組んでるだろう。

エリート:……イカれてんのかてめぇは。てめぇを撃つって決めたのは、てめぇが信用できねぇからだ。
     それがなんで、俺がこのオカマと組んでるなんて酔狂な考えに繋がるんだよ。

レディ:もういいわ。自分の軽口を恨みながら逝きなさい。地獄で会いましょう。

ピエロ:僕達は嘘つきだ、揃いも揃って信用なんぞできやしない、そうだろう?

レディ:寒い命乞い。

ピエロ:最後まで聴けよ。最初っからおかしいと思ってたんだよ。なんで僕たちは話し合いを始めたんだ?
    なぁエリート、お前はここで撃ち合えない”事情(わけ)”がある、そういったね。

エリート:ああ。

ピエロ:それは自分が死ねないから、そうだったっけか。

エリート:……。

ガール:『少なくとも俺の目的は、ここで無茶して殺し合うことじゃねぇんだよ、嬢ちゃん』

ピエロ:ありがとうガール。――まず、エリートが殺し合いを始められない理由はガールがいるからだ。

ガール:……私が?

ピエロ:彼、エリートは中東のブラックマーケットで商人を専門に相手取っている殺し屋(ヒットマン)さ。
    それもヒットマンとして顔が知れて尚、こうして生き残っている程に恐ろしく強い。
    そんな彼が撃ち合えない理由、それは自分がやられることを危惧してなんかじゃない。
    「この中に死んでは困る人間」がいるからだ。

エリート:やっぱり、俺の事も知っていやがったか。

レディ:それも詳しく、ね。

ピエロ:そこででてくるのがレディの存在だ。
    エリートがレディと共にいるということは、恐らくボディガードとして雇われているんだろうね。
    彼が守っているのなら、君のような少女が簡単に忍び込めるようなモーテルに宿をとったことも納得がいく。

レディ:薄汚いペテン師が探偵気取り……もう終わりにしましょう、いい加減に覚悟を決めて死になさいな。

ピエロ:焦るなよレディ。ガール、君もそろそろ気がついたんじゃないか。僕だけが相手の情報を隠していたわけじゃない。
    全員不自然に口を出さなかったことがあるんだ。

ガール:……。

ピエロ:ガール、君の銃を持つ手はひどく不慣れな上に、持っている銃もガンショップで買える安価な物。
    つまり君は連邦捜査官でもなんでもない”ただのガール”だ、そうだろう?

ガール:…わかっていたんですか、最初から…。

ピエロ:そう。僕だけじゃない知っての通り彼等は二人ともプロフェッショナルだ、それに気がつかないわけがない。
    君以外の全員が最初から君の正体を知っていたんだ。

ガール:なら何故……!

ピエロ:そこがこのシナリオのプロットさ。彼らはガールの正体に気づかないふりをして、君を説得し、まず僕を消そうとした。
    どうしてか? 僕の銃は……ガール、君を狙っている。僕が発砲して乱戦になったら? ガールの銃口が向いているのは、レディだ。
    僕が撃とうとした瞬間に君がレディを撃ったらアウト。
    だから君を納得させた上で僕を消し、後は二人で安全に君を始末しようって腹だったのさ。

ガール:そんな……。

ピエロ:さて、以上が僕の推理だ。どうかな御二方。


 間


エリート:……バーン、大当たり。

レディ:はぁ…あんた、あっさりバラしちゃうのね。

エリート:こうなったら面倒くせぇおしゃべりなんか早く終わらした方が都合がいいだろ。

レディ:そうね――にしても……せっかく私達が楽しいお芝居をしてあげたってのに、興ざめよ。
    ……ねぇピエロ、得意げにネタばらしくれたけれど、それで何かが変わった?
    わかってるでしょう、このシナリオのフィナーレは何一つ変わってない。貴方達は死に、私達は生き残る。

ピエロ:流石魔女、言う事が違う。まだこの場を仕切れると思ってるわけだ。

レディ:気づかないかしら、あたしの銃口だけがこの場で自由なのよ。それにさっきあんたもいったでしょう。
    素人のガキががむしゃらに撃った弾があたしに当たると思ってるわけ?ちゃんちゃらおかしいわ。んふふふ!

ガール:……私は貴方を撃てるわ。

レディ:……わかってない、わかってないわねぇ。いいかしら可愛い可愛いアリスちゃん、あんたはここで死ぬわ。
    あんたの弾は私には届かない! 何故だか判る!? 私がこの場に置いてのハートのクイーンだからよ!
    私を守るトランプの兵隊はこの部屋の中で最も強い男。そこのずる賢いハートのジャックが何を言おうが貴女達はおしまいなのよ!

エリート:レディ。

レディ:何よ、せっかく気持ちよくお芝居の続きを――

エリート:そのアリスちゃんだがな、よく見てみな。

 <ガール、銃の構え方がしっかりとしている>

レディ:…な! ガール、貴女…!

エリート:(口笛)構え方だけじゃない、角度、照準。あれは間違いなく射撃の訓練を受けてる。こりゃ嬢ちゃんにまで担がれたか…。

レディ:もう…もうもうもう!
    ……あんたいったいなんなの。意味がわからないわ、なんであんたみたいなガキがこの私を撃とうっていうわけ!

ガール:…覚えてないのか。

レディ:回りくどい聞き方しないでよ! 記念日のカップルみたいで気色悪いわ。

ガール:覚えてないのか!!

レディ:だからなんなのよ! ああーそういえば結婚記念日だったかしら!?

ガール:3年前に死んだ、私の母のことだ!


 間


ガール:あはは…やっぱり…覚えていないんだ。

レディ:3年前……その年は人を殺してなかったと思うんだけど?

ガール:わかってたことじゃない……こいつが……ただの犯罪者だってことは…!

レディ:ちょっと落ち着きなさいよ! 仇討が目的なのはわかったけど、あたしは本当に覚えがないのよ!

ガール:違う! 違う違う違う! 忘れてるなんて! 私は全部覚えてる! 忘れられない! なのに貴方は忘れてるんだ!

エリート:ガール、お前が引き金を引く前にお前の頭を撃ちぬくぞ。

ピエロ:この状況でかける言葉がそれか!

エリート:それが仕事だからな。

ガール:あああああ!

ピエロ:やめろ!ガール!

エリート:あらら。

レディ:待って! 待ちなさい!


 間


レディ:――東洋人の女性連邦捜査官の事ね。

エリート:レディ?

レディ:貴女、彼女の娘なの……。

ガール:あ…ああ…。

レディ:そう…なんで自分が連邦捜査官だなんていったのかと思ったら…私に気づかせようとしてたのね。そういえば確かに似ているわ。

ガール:母は…母は死にました!

レディ:聴いたわよ。三年前なのね…。

エリート:こっちはおいてきぼりか?

ピエロ:黙るが吉だぜ。

エリート:お前にそれを言われるとはな…。

ガール:母は…!

レディ:それで、貴女はなにをしにきたの? 私を撃ち殺せって彼女に言われた?

ガール:違う! そんなんじゃない! そんなんじゃ、ない! そうじゃなくて…!

レディ:話にならないわ…エリート、その子を撃って。

エリート:……よくわからんが、いいのか?

レディ:あの状況じゃまともにこっちも狙えないでしょう。
    母親から撃ち方は教わってたみたいだけど……残念ね。もっと教えることがあったでしょうに。

エリート:そうか。

ピエロ:いやちょっと待って!

レディ:止めても無駄よ。

ピエロ:無駄でも止めるって。ガールが死んだら僕は終わりなんだから。

レディ:ふふ、初めて焦った顔が見れたわねぇ。

ピエロ:それだけヤバイと思ってるからさ……。
    ガール! 頼むからしっかりしてくれ! 何が目的かは知らないけどこのままだと僕達死んで終わりなんだから!

ガール:(深呼吸)……すみません。

レディ:……落ち着いた?

エリート:みたいだな、どうする?

レディ:待機よ。

エリート:了解。

ガール:レディ…いえ、ガヴリイル・カリモフ。

レディ:何かしら。

ガール:六年前、貴方が大量の科学燃料の取引をした相手を覚えていますか?

レディ:その手の取引はいいだしたらキリがないわよ。

ガール:覚えているはずです。買い付け輸出共に貴方が関わっていたのですから。

レディ:……あれ、ね。

ガール:貴方と友人関係にあった母は、当時スパイ容疑の色濃かった貴方の疑いを晴らすために、調査をしていた。
    その結果、取引の合法性は証明され、貴方の容疑は晴れた。
    そしてその後は、監視の目を離れ、ここまでの地位を確立するまでじっくりと力を蓄えることができた。

レディ:認めるわよ…彼女が私の犯罪の片棒を担いでくれたおかげで、今の私がある。

ガール:母がその後、どんな目にあったかわかりますか?

レディ:想像は出来るわ。だからこそ私は彼女との連絡を絶ったのだから。


 間


ガール:……遅かったんですよ、それじゃあ。
    すでに母が貴方と繋がりがあることは捜査局には周知の事実だった……!

レディ:……。

ガール:既に貴方は後ろ盾を得ていて、やすやすとは手を出せなかった!

レディ:……。

ガール:だから捜査局は貴方を逮捕できるだけの証拠を掴もうと躍起になった!
    貴方が母に連絡をとるのを待った!
    (間)
    三年間、私達は捜査局の監視にさらされ続けました。
    母が自主退職という形で現役を退いた後も! 土地をどれだけ渡っても! 国をどれだけ渡っても!
    私達親子は監視され続けました!
    母が心を蝕まれ……自ら命を絶つその瞬間まで!

レディ:……ああ…なんてこと……!

ガール:母が選んだことです、貴方に責任を求めているつもりはありません。ただ…この事実を伝えたかった!
    だってあんまりじゃないですか! 母がお前との友情のために選んだ日々を……!
    そのお前が知らないだなんてこと!

レディ:あたしがどんな人間かなんてわかっていたでしょう! それなのにそんなことの為にこんな犯罪者の所に来るなんて!

ガール:でも今はもう心に怒りと悲しみしかないんです! お前は母を忘れて金と暴力の中でワインを飲んでいるただの薄汚い魔女だ!
    お前のことを思い出しているときの母の顔を……お前に見せてやりたい……!

レディ:それを伝えて、そのあと自分は私に殺されて……!
    あの世で彼女になんて言うつもりだったの! 母さんがわが身をかけた友人はこんなクズだったって!?

ガール:それを言うのはお前の役目だ! その欲望で着飾った醜い姿で、母さんの前でワインでも飲み干せ!


 <サイレンの音が近づいてくる>

 全員驚く


ガール:これ、サイレン!?

レディ:こっちに向かってくる…!

エリート:…やってくれたなぁ、ピエロ。

ピエロ:応援はいらないって連絡したんだけどな…いや、この場合ナイスタイミングって言えばいいのか。

レディ:あんた、本物の…!

ピエロ:言ったろ? 僕は連邦捜査官だって。

ガール:あれは嘘じゃ……。

ピエロ:僕、嘘つくのが苦手でさ。全部本当のことしか言ってないんだよね。

ガール:ちょ、ちょっとまって! レディを捕まえる気ですか!

ピエロ:そうなるね。まぁ君が人に銃を向けたことに関しては見逃してあげるから勘弁してよ。

ガール:そんな…!

ピエロ:どんなに憎くても撃ってしまったらお終いだよ。
    強い感情ってのはぶつける相手がいるから保てるんだ。
    レディを撃ったそのあとの事を考えて御覧。
    そこのエリートみたいになりたいのかい?

ガール:……。

エリート:反面でも教師にしてくれてありがとうよ。
     ……実はさぁ俺、昔は教師になりたかったんだよ。


 <銃声 エリートの放った銃弾がピエロの右太ももを貫く>


ガール:キャッ!

ピエロ:っ…!

エリート:最近のGメンはよく教育されてるな。普通モモ抜かれりゃ悲鳴の一つも上げるもんだが。

ガール:ピエロ!

エリート:動くな。

ピエロ:あ…あ…はは…これ…で、現行犯…逮捕…。

エリート:口が減らねぇなぁピエロ。

 <銃声 再びピエロの足を銃弾が襲う>

ピエロ:あああああ!

エリート:それでいいんだよ。

レディ:…あんた、なんのつもり?

エリート:どうもしねぇよ。これが俺の仕事だ。

レディ:そうじゃないでしょ! さっきのままなら拘束されてもいくらでもいい訳できたのよ! それをあんた…!

エリート:無理だ。

レディ:は!?

エリート:この野郎は化け物だ。こいつがいたんじゃあんたは絶対に逃げ切れない。わかんだろ。

レディ:……こいつがただものじゃないのは認めるわよ……でも――

エリート:ガール、気になってたんだがお前、記憶力いいよな。

ガール:は…はい。

エリート:その母親が死ぬ前の会話、覚えてるだろう。例えばレディ関連の話、もな。

ガール:……取引の時の話とかは……鮮明に……。

エリート:ピエロの野郎はガールの驚異的な記憶力にも気がついてた。
     ……捕まっちまったらどうなる? その辺ほじくられて終わりだぜ。
     (間)
     わかったらとっととそのガキ連れてここを離れろ。

ガール:…え?

レディ:どういうこと…?

エリート:もう面倒くせぇんだよ。その辺の昔話はよそでやってくれ。
     俺はこのピエロを抱えてここで自分の仕事をする。
     二人でどっかいってタイマンで殺し合うもよし、話し会うもよし。
     とにかくこのままここにいたんじゃ、レディ。
     ……どう転んでもあんたは破滅だ。

レディ:……あんたはそれでいいのね。

エリート:いったろ。自分の仕事をする。あんたを守るのが俺の仕事だ。
     足止めしきれんようなら燃やして消える。
     わかったらとっとといっちまえ。

レディ:うふふ……そう、そうね。あんたを雇って良かったわ。
    ガール……一時休戦してここを離れるわよ。いい?

ガール:……。

エリート:ダダ捏ねてると撃っちまうぞ。

ガール:…あなた方は……最低です。

エリート:知ってるよ。いい教師だろ。
……消えろ、クズを移しちまう。


 間


レディ:……じゃあね、ロベルト。

エリート:あばよ、ガヴリイル。


 <レディ・ガール 部屋から駆け足で去る>


エリート:…おい、聴こえるか…。

ピエロ:ぁ…ぅぁ…。

エリート:悪く思うなよ……。

ピエロ:ロベルト……て、めぇ…

エリート:しょうがねぇだろ、レディ・ガブリイルの前で半端に撃とうもんなら即バレちまうんだからよ。

ピエロ:僕の足……これ…どう…すんだ…

エリート:この魔女の衣装ケースがありゃいくらでも金は手に入るんだ、いい医者に連れてってやる。
     それに、あぶねぇところははずしてあるから、リハビリすりゃ歩けるだろ。
     ……さ、立て。

ピエロ:無理…。

エリート:面倒くせぇな…! よっ……お前軽いな……。

ピエロ:ほっ…とけ…くっそ…意識飛ぶ…

エリート:こんだけイレギュラー続きで良くやったな。流石は天才詐欺師だ。

ピエロ:揺らすなって……!

エリート:そういや、そろそろ警察に囲まれたころか。こっからどうやって出る?
     お前を抱えて突破はきついぞ。

ピエロ:ああ……普通に正面から出れば……大丈夫だ。

エリート:あん?

ピエロ:このモーテルに来る前……向かいのビアガーデンのロッカーから、客の荷物を……盗んできたんだ。

エリート:じゃあ、あのパトカーは。

ピエロ:ビアガーデンで……窃盗事件の調査。

エリート:ふふ……はははははは! やっぱりお前は天才だよ!

ピエロ:悪事をしても捕まらない、やられない……。

エリート:だから美味しい汁だけ啜ってトンズラしちまおう。
     いやぁ、これだから悪党はやめらんねぇな。










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