歌うように晴れたら 第6話
作者:ススキドミノ
【※最初に】
本台本は有料上演配信使用権付き台本の販売がございませんので、基本的には読み合わせや友人同士の声劇などでお使いください。
登場人物
深谷康生(ふかやこうせい):男子高校生。3組。男子バスケットボール部。
村澤灯里(むらさわあかり):女子高校生。3組。クラス委員。
石野文香(いしのふみか):女性教師。看護教諭。
深川敦也(ふかがわあつや):男性教師。音楽教師。
※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)
---------------------------
<校舎裏>
康生:……あ?
<灯里が膝を抱えて座っている>
康生:……村澤?
灯里:……あ。
康生:……泣いてんの?
灯里:い、いや……! 別に、そういうわけじゃ……。
間
康生:今日のこと、気にしてんのか。
灯里:……違う、とは……言えないよね。
康生:クリスマス会の話し合い、進まなかったもんな。
灯里:ううん。進まなかったのはしょうがないよ。
自由参加だし……みんなも予定あるだろうしさ。
康生:うん。そりゃそうかもな。
灯里:どっちかって言うと、自分のことかな……。
康生:まあ……こういっちゃなんだけどさ。
村澤って何か、から回ってるもんな。
灯里:ううう! 言う!? そういうこと!
深谷君ってデリカシーとかないの!?
康生:悪い悪い。でも、実際そうなんじゃないのかよ。
灯里:まあ……うん。何か、プレッシャー感じちゃってさ。
康生:……村澤さ。この後暇?
灯里:え?
康生:これから、買い食いして帰ろうぜ。
◆
<学校の駐車場>
文香:ありがとうございます、先輩。
敦也:石野、お前なぁ……。いきなり車出せはねえだろ……。
文香:だって、私も急に言われたんですもん。
クリスマス会用のツリー、取りに言ってくれないか―って。
敦也:つーか言ったの誰だよ。車持ってねえやつに言うことじゃねえだろ。
文香:私が、車のアテがあるので大丈夫ですって言いました。
敦也:最初から俺に出させるつもりだったか……。
ほら、乗れよ。
文香:はい。
<二人は車に乗り込む>
文香:うわ……タバコくさ。
敦也:独り身の男の車だぞ。文句言うな。
文香:ふーん……普段、人は乗せないんですか?
敦也:オイ……喧嘩売ってんのか?
文香:よーし! 出発しましょう!
敦也:石野……! シートベルト……!
文香:あ。
◆
<二人は駅前を歩いている>
灯里:何か、こうやって、何も考えないで買い食いしてるのって不思議。
康生:どうだ? 悪くないだろ。
灯里:うん。ちょっと悪いことしてる気分だけど……。
康生:村澤って、真面目だよな。
灯里:真面目かぁ……ちょっと気にしてるんだ、それ。
真面目なやつってさ……つまんないって思わない?
康生:わかんないやつにとってはつまんなく見れるかもしんないけど。
俺は好きだぜ。村澤の真面目なとこさ。
灯里:……え?
康生:俺、村澤のお陰でちょっと変われた。
合唱祭も、逃げずに真面目に参加して、良かったって思ってる。
灯里:……うん。
康生:真面目でいるの、大変かもしんないけどさ。
村澤の真面目は、めちゃくちゃ一生懸命で、すげえ良いよ。
灯里:ありがとう……深谷君。
康生:たまに息抜きしたくなったら、また買い食いしようぜ。
灯里:……うん!
◆
<クリスマス会当日>
文香:……綺麗ですね、飾り付け。
敦也:ああ? まあ……良いんじゃね。
文香:素直じゃない感想……。
敦也:いや、かなり素直だろ。
文香:ふーん……なんていうか、先輩って意外と教師に向いてますよね。
敦也:は?
文香:慕われてるじゃないですかぁ。
敦也:まだ若いからな。親近感あるとか、そういう程度だろ。
文香:昔から面倒見もいいですし。
敦也:おい、お前……なんか今日、うぜえぞ。
文香:ま、ちょっとした当てつけです。
敦也:当てつけって何のだよ……。
文香:今日、女子生徒に声かけられてましたよね?
ツリーの前のダンス、踊ってくださいって。
敦也:……お前、なんか顔、怖いんだけど。
文香:色々問題ありますから……一緒に踊ってって誘えないんです。私。
敦也:……は? お前――
文香:いい加減気づいてください。
私、好きなんですよ。先輩のこと。
間
敦也:……それ、知ってる。
文香:はあ!? 最高にキモい返しですよそれ!
敦也:悪い悪い。じゃあ……やり直そうぜ。
文香:や、やり直す!?
敦也:なあ、石野。お前、俺のこと好きなの?
文香:……大っ嫌いです!
敦也:はいはい。俺もだよ。
◆
<夜・康生の家の前>
康生:……は?
灯里:深谷君。バイト、お疲れ様。
康生:村澤……? なんで、うちの前に。
灯里:ごめんね、ちょっとズルしちゃった。
クラス委員の名簿見たんだ。
康生:ははは! マジかよ、真面目な村澤らしくねえなあ、それ。
灯里:でしょ? たまには真面目じゃなくていいって、深谷君が教えてくれたんだよ。
康生:それで、なんでわざわざ?
灯里:深谷君さ。今日のクリスマス会、バイトがあるから来れなかったよね。
康生:ああ。
灯里:たくさん準備手伝ってくれたのに、お礼も言えなくて……。
だから、プレゼント。
康生:……マジ?
灯里:うん。開けてみて。
<康生は灯里のプレゼントの袋を開ける>
康生:これ……マフラー?
灯里:あ、ありきたりだけど……手編みなんだ。
前に、買い食いに連れ出してくれた時から、編み始めて……。
康生:ふふふ、あはははは! ……本当、プレゼントまで真面目だな……!
灯里:もう……! そんな笑わなくても……!
康生:ありがとう。嬉しいよ、村澤。俺、大事にする。
灯里:……うん。ありがとう。
ねえ――
康生:ん?
灯里:メリークリスマス! 深谷君!
---------------------------
第7話
台本一覧