歌うように晴れたら 第5話
作者:ススキドミノ


【※最初に】
 本台本は有料上演配信使用権付き台本の販売がございませんので、基本的には読み合わせや友人同士の声劇などでお使いください。



登場人物
渡会亮(わたらいりょう):男子高校生。5組。バレー部。
和久井瞳(わくいひとみ):女子高校生。5組。吹奏楽部。
飯塚奏海(いいづかかなみ):女子高校生。5組。女子バスケットボール部。
山口謙一郎(やまぐちけんいちろう):男子高校生。5組。男子バスケットボール部。
深川敦也(ふかがわあつや):男性教師。音楽教師。




※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)




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 <5組教室>

亮:和久井。そっちにベニヤ板、持っていったろ。

瞳:いや、こっちは私が使うって言ってきたけど。

亮:俺は勝手に持っていったって聞いたぞ。

瞳:じゃあそっちの間違いでしょ。

奏海:ま、まあまあ……! 二人共落ち着いて……!

亮:別に、落ち着いてる。

瞳:勝手に渡会君が突っかかってるだけ。

亮:俺は別に突っかかってない。

瞳:じゃあ邪魔しないでよ。

奏海:あーもうストップ! どうしていつも仲良いのに、こう喧嘩になるかな……!

謙一郎:飯塚。手、足りてるか?

奏海:あ、山口君。う、うん……! こっち大丈夫――

亮:言い方ってもんがあんだろ。

瞳:こっちの作業のことも考えて欲しいってだけ。

奏海:じゃ……ないかも……!

謙一郎:なんだ。揉めてるのか、窓際カップル。

奏海:う、うん……。文化祭の準備になった途端に……。

謙一郎:普段仲良い分、こういうことになんのか。

奏海:そう、かな?

謙一郎:どんな空気でも明るくできる飯塚でも和ませられないとなると……。難しいな。

奏海:いや……私、別に万能ライトとかじゃないし……。

謙一郎:こういうときは……そうだな。

奏海:え? どうにかできる?

謙一郎:大人を頼ろう。

奏海:うわ、現実的……。

 <謙一郎は敦也を連れてくる>

謙一郎:暇そうに歩いていたから連れてきた。

敦也:あ……? 誰が暇だコラ……。

奏海:深川先生かぁ……! なんとかできるかな……!

敦也:おいお前ら。総じて失礼だぞ。

謙一郎:実は、うちのクラスでも屈指の仲良しカップルが揉めてまして。

敦也:は? んだそれ……。

奏海:カップルってのは違うみたいなんですけどね。

敦也:あー……つまり、普段は仲良い二人が、文化祭の準備で揉めてるってことか?

奏海:そうです!

敦也:ったく……面倒くせえな。

 <敦也は瞳と亮に近づく>

敦也:おい、お前ら。

瞳:はい。

亮:先生……なんですか?

敦也:お前ら、作業別れろ。

瞳:え?

敦也:苦情が出てんだよ。お前らの反りが合わないから、作業が進まねえんだと。

亮:……別に合わないわけじゃ。

敦也:いいから交代しろ。
   あー……じゃあ、飯塚と渡会。チェーンジ。

奏海:え? 私と渡会君ですか?

亮:……わかりました。


 ◆


奏海:……瞳。大丈夫?

瞳:別に。大丈夫よ。

奏海:ごめんね……なんか、余計な気回したかな?

瞳:ううん……。奏海は間違ってない。
  みんなにも迷惑かけちゃってたから。

奏海:そっか。じゃ! 楽しく作業しよ!

瞳:うん。そうしよう。


 ◆


謙一郎:渡会って、背高いんだな。

亮:……は? 何、急に。

謙一郎:バレー部だっけ。今からバスケ部入る気ないか?

亮:いや……ないけど。

謙一郎:だよな。

 間

亮:何、今の話……。

謙一郎:世間話だろ。普通の。


 ◆


奏海:……そっか。

瞳:うん。私が意地張っちゃっただけなんだ。
  渡会君に、出来ないって思われたのが悔しくて。

奏海:んー、でも渡会君がそう思ってるかどうかなんてわからなくない?

瞳:……そうだけど。でも、私……彼の考えてること、なんとなくわかるから。

奏海:うわ……何か、こじらせてるポイントがわかったかも。

瞳:こじらせてる……?


 ◆


謙一郎:言わなきゃ、伝わんないんじゃないか。

亮:言わなきゃ……?

謙一郎:そりゃそうだろ。別の人間なんだから。

亮:……それは、まあ……。

謙一郎:多分だけどさ。一見似てるようでさ、似てないんだよ。
    渡会と和久井さんって。

亮:俺達が、似てない……。

謙一郎:似てないから、お互いわかろうとしたり、惹かれ合ったりするんじゃないか。


 ◆


敦也:で……今度はなんだよ。

奏海:いえ! 二人が担当に戻ったので!

謙一郎:一件落着っす。

敦也:そーかそーか。まあ、ならいいんじゃねえ。

奏海:なんかすぐに解決しちゃった。

敦也:お前ら高校生ってのはな、逆のことをやりたがるんだよ。

謙一郎:逆?

敦也:そう。喧嘩してるくせに、じゃあ離れろっていうと、それに反発したくなる。
   だから、別れろって言われた時点で、もうどうやったら戻れるか考えたりする。

奏海:うわ……なんか嫌な感じ……。

敦也:で、お前らは仲違いはしてないのか?

奏海:……え?

敦也:あっちの二人はどうか知らねえけど、お前らは付き合ってんだろ。

奏海:にゃ! ど、どうして――

敦也:見りゃわかる。

謙一郎:はい。仲良しですよ。

敦也:そっか、そりゃいいことだ。

謙一郎:喧嘩したら、仲裁してくれます?

敦也:知るか。

奏海:ううう。なんか……! 嫌な感じ……!


 ◆


瞳:……ねえ。

亮:……何だ。

瞳:ごめんね。

亮:俺も、ごめん。

瞳:私ね、なんか意地張ってたみたい。

亮:そっか。

 間

亮:俺は、和久井が何考えてるかわかんなくて、イラついてた。

瞳:……え?

亮:ずっと隣にいても、知らないことってあるんだな。

瞳:……うん。そうだよね。
  私も、もっと渡会君のこと、知ってるって思ってた。

亮:なあ。

瞳:何?

亮:俺、和久井のこと。もっと、知りたい。

瞳:うん。私も。





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