歌うように晴れたら 第3話
作者:ススキドミノ
【※最初に】
本台本は有料上演配信使用権付き台本の販売がございませんので、基本的には読み合わせや友人同士の声劇などでお使いください。
登場人物
深谷康生(ふかやこうせい):男子高校生。3組。男子バスケットボール部。
村澤灯里(むらさわあかり):女子高校生。3組。クラス委員。
石野文香(いしのふみか):女性教師。看護教諭。
※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)
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<3組教室>
灯里:……深谷君。
康生:ん? 村澤じゃん。何?
灯里:今日って、部活とかある?
康生:いや、今日は休み。
灯里:あの……今日ってこの後、教室に残れる?
康生:それ、この後の合唱の練習の話だよな。
灯里:うん。合唱祭近いし……深谷君、放課後の練習まだ来たことないから。
康生:あー……そっか。
灯里:どうかな?
康生:悪いんだけど、今日はちょっと無理だわ。
灯里:そ、そっか。
康生:じゃあな。
◆
<保健室>
灯里:(ため息)はぁ~……。
文香:あらら、ふっかーいため息。
灯里:文香センセー……。
文香:んー? どうしたの?
灯里:私……クラス委員やだ……。
文香:保健室来る度言ってるねぇそれ。
何があったの?
灯里:今って合唱祭の準備中でさ……。
文香:あー、ちょっと予想できたかも。
練習参加しない男子がいる、でしょ?
灯里:正解……。やっぱりあるあるなんだ……。
文香:そりゃあもう。いつの時代もね。
灯里:合唱祭実行委員の子とさ、板挟みになっちゃってさ……。
直接声かけたりしてるんだけど、全然ダメで……。
文香:ちなみに、誰なの?
灯里:え? あー……深谷康生君……。
文香:深谷君かぁ。うんうん、なるほど。
灯里:深谷君って、普段明るいし話しやすいのに……放課後になると、ちょっと話しづらいっていうか。
文香:うん。
灯里:なんか……ちょっと雰囲気も怖いとか思っちゃって。
もう無理かも……。
文香:ねえ、村澤さん。深谷君って、ちょっと不思議だと思わない?
灯里:え……?
文香:今村澤さんが言ったみたいに、深谷君って普段は明るくて、話しやすい。
でも、放課後の合唱のことになると、すごく話しづらい。
灯里:……うん。
文香:それって、何か理由があるんじゃないかなって思うんだよなぁ。
灯里:……文香センセー、何か知ってるの?
文香:んー、どうかな?
灯里:えー! 教えてよぉ……!
文香:村澤さんが、深谷君に対して違和感を感じたなら、少しだけ知ろうしてみると良いかもしれないよ。
灯里:……知ろうとして、見る。
◆
<3組教室>
深谷:……村澤……?
灯里:……何?
深谷:いや……何か、今日……。
灯里:今日、どうしたの……?
深谷:ずっとこっち見てね?
灯里:そ、そうかな……?
深谷:うん……あとさ。
灯里:な、何?
深谷:……近くね?
灯里:……え?
◆
<保健室>
文香:あはははは!
灯里:笑い事じゃないって……。
文香:いやだって……! 確かに知ろうとしなとは言ったけど……!
物理的に近くにいても仕方ないでしょ……!
灯里:だって……! どうすればいいのかわかんないんだもん……!
文香:あーほんっと……村澤さん、面白い!
灯里:文香センセー絶対バカにしてる……!
文香:してないしてない! っていうより、感動してる。
灯里:どういう意味……?
文香:そうやってちゃんと行動に移せるっていうことは、簡単にできることじゃないってこと。
灯里:そう、かな……。
文香:そうだなぁ……じゃあ今度は、本人に話してみるっていうのはどう?
灯里:え?
文香:知りたいなら、話さなきゃ。
◆
<放課後・正門前>
灯里:……深谷君。
康生:……は? 村澤?
灯里:あのさ……その……。
康生:お、おう。
灯里:ちょっと! 話そう、よ……!
康生:え? あ……いや――
灯里:駅、まで! 駅までで、良いから……。
康生:わ、わかった。
<二人は並んで歩く>
康生:あの、さ。
灯里:う、うん。
康生:……なんつーか、ごめん。
灯里:……え?
康生:多分、俺が合唱祭の練習、参加してないから……その話だよな。
灯里:あ……いや。
康生:本当、ごめん。
灯里:ち、違うよ! 謝ってほしいとか、そういうんじゃないの!
康生:……じゃあ、どういうこと?
灯里:知りたいんだよ。深谷君のこと。
知らないで、ただ参加しないだけなんだーていう風には、納得できなくて。
康生:……え。
灯里:深谷君って、普段からムードメーカーだし……話しやすいし。
でも、ちょっと雰囲気違うからさ……。
康生:(ため息)だよなぁ。
灯里:何か、理由あるの?
康生:……俺んち、母子家庭なんだ。
うち、まだ小さい弟がいてさ。部活ない日は、弟を迎えに行ってるんだ。
灯里:……そうだったんだ。
康生:恥ずかしかったんだよ。俺。これを言うのさ。
だから……村澤に練習のことで声かけられてもさ、言えなかった。
灯里:うん。
康生:マジで、すげえよ、村澤。
灯里:え?
康生:俺、感じ悪かったのにさ。それでも、諦めないで話しかけてくれたろ。
……そんで、俺はすげえ、ダサいな。マジで。
灯里:……ううん。そんなことないよ。
康生:ちょっと、親に話してみるわ。
合唱祭の期間だけでも、放課後参加できるように、頼んでみる。
灯里:え? あ、うん。無理はしなくていいけど――
康生:俺が、そうしたいって思ったんだよ。
村澤の努力に、少しでも報いれたらって……そう思ったんだ。
灯里:……うん。ありがとう。
康生:頑張ろうな、合唱祭。
灯里:うん!
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