ためにならない恋愛座談会
作者:ススキドミノ
相場(あいば) 男
池ヶ谷(いけがや) 男
梅内(うめうち) 男
江藤(えとう) 女
大河内(おおこうち) 女
※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)
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舞台中央、神妙な面持ちで机を囲む相場、池ヶ谷、梅内の3人。
相場「これより作戦会議を行う」
池ヶ谷「おう」
梅内「いつでもいいよ」
相場、ゆっくりと二人の顔を見回す。
相場「状況は切迫している。俺達に残された時間は9時間、そこから睡眠時間を抜いたらわずか6時間程しか残ってない」
池ヶ谷「…ちょっと待てよ!」
池ヶ谷、机を叩き立ち上がる。
池ヶ谷「その計算だと睡眠時間は3時間ってことになるじゃねぇか」
相場「なんだ池ヶ谷、異議があるのか?」
池ヶ谷「当たり前だ!俺は6時間は寝ないとお昼には眠くなっちまう。今回の予定にお昼寝は入っていなかった。
ここに俺は睡眠時間の延長を要求する!」
相場「…異議を認めよう。お昼寝が無いということを失念していたな。睡眠時間は6時間とする」
池ヶ谷「ったく、頼むぜリーダー」
相場は机の紙に何かを書き込む。
池ヶ谷も納得した表情で座る。
梅内「相場君、僕もいいかな」
相場「梅内もか、なんだ」
梅内「その計算には細かなものが抜けていると思うんだ。
起床直後のグダグダした時間、顔を洗って身だしなみを整え荷物の最終確認、そして現地までの移動時間」
相場「確かにそうだな。どれくらいかかりそうだ」
梅内「知っての通り池ヶ谷君は寝起きが悪い」
池ヶ谷「悪かったな」
梅内「相場君、この間僕が池ヶ谷君を起こした時のことを覚えているかな?」
相場「人が空を飛んだのを初めて見たからな、忘れられない経験だ」
梅内「そこで池ヶ谷君を起こすのに一時間」
池ヶ谷「おい!」
池ヶ谷は机を叩き立ち上がる。
相場「どうした?」
池ヶ谷「おかしいだろうが!何で俺を起こすのに一時間もとるんだ!」
相場「…池ヶ谷、これは安全策だ」
池ヶ谷「限度ってものがあるだろう!俺は猛獣か何かか!」
池ヶ谷は相場の胸倉を掴む。
相場「片腕で人一人を飛ばしたんだぞ!飛行機を作らずして有人飛行を成功させたお前は凄い!というか人間じゃない!
梅内「うん!すごいすごい!
池ヶ谷「そういわれて喜ぶと思ったのか!完全に馬鹿にしてるだろ!」
梅内「池ヶ谷君!僕の額を見るんだ!」
梅内は立ち上がると自分の前髪をかきあげて、額を池ヶ谷に見せつける。
池ヶ谷「そ、それは…!」
梅内「この間君が僕につけた傷だよ」
池ヶ谷は相場を離すと怯えたように後ずさる。
梅内は額を見せながら池ヶ谷に詰め寄る。
池ヶ谷「やめろ…やめてくれ…!」
梅内「5針塗ってある。この傷は君がつけたんだ」
池ヶ谷「あ、ああ…!」
梅内「眼をそらさないで見なさい!見るのです!見ろおおお!」
池ヶ谷「あああああああ!あ・・・あぁ・・・」
池ヶ谷、肩を落として片言になる。
池ヶ谷「…ゴメンナサイ」
梅内「分かればいいんだよ。僕達友達だろ?」
池ヶ谷「ト、チ?」
梅内「ほら、言ってごらん。ト・モ・ダ・チ」
池ヶ谷「ト、モ、ダ、チ…トモダチ、トモダチ!」
梅内「そう、友達僕達は友達だ」
池ヶ谷「ボクタチ、トモダチ!」
梅内「ほら、仲直りのしるしに、君の大好きなバナナだよ!そーれ!」
池ヶ谷「ウホ!バナナ!バーナーナー!」
梅内はポケットからバナナを取り出し部屋の外に向かって投げる。
池ヶ谷はそれを追って部屋をでていく。
梅内「ふぅ…」
相場「すまない、助かったよ。それにしても扱いに慣れてるな」
梅内「小学校の頃からああなんだ」
相場「あいつも小学生だった時期があったのか」
梅内「机を片手で持ちあげてたけどね。じゃあ話を進めようか」
相場「そうだな。池ヶ谷を起こすのに1時間…」
梅内「ここから集合場所までは20分、その他の準備を合わせるとさらに1時間半って所だね」
相場「となると作戦会議に当てられる時間は…」
梅内「多めに見積もって25分」
相場「…流石に遊び過ぎたか」
梅内「ごめん、僕がゲームなんて持ってきたばっかりに…」
相場「気にするな、モノポリーは皆好きだし」
梅内「明日使おうと思ってたのに…」
相場「負けて怒った池ヶ谷が駒を全部食べてしまったからな」
梅内「あれ金属製なのにね。つくづく人間やめてるよね」
沈黙。
梅内「…やっぱり無理なのかな…僕達が彼女を作ろうだなんて」
相場「何言ってんだよ」
梅内「だって・・・!サークルの合宿に行ったからって突然彼女ができるわけないじゃないか!」
相場「大丈夫だ、なんとかなる」
梅内「なんでそんなこと言えるのさ…」
相場「梅内!
梅内「・・・何?」
相場「…女性と付き合った経験は?」
梅内「ないよ・・・そんなの…」
相場「俺もだ。よし、ハードルを下げよう。家族や親戚以外の女性と5分以上話をしたことは?」
梅内「…それも、ない」
相場「フッ・・・おれは、ある!」
梅内「え?」
相場は笑顔で親指を立てる。
相場「俺に、任せろ」
梅内「相場君…!いや、リーダー!」
相場「よーし!諦めずに作戦会議だ!」
梅内「とことんついて行くよ!」
二人、机の周りに座り直す。
相場「細かな作戦を立てている暇はない。一点集中、的を絞っていくぞ」
梅内「そうだね」
相場「一日目、昼間の写生大会から夜のレクリエーション。二日目、朝の散歩から夜の花火…」
梅内「うん」
相場「これらイベントは全て捨てる」
梅内「えっ!なんで!」
相場「いいか、さっきも言ったが俺達は女性との対話経験が極端に少ない。
経験値皆無、ゲームスタート直後の勇者みたいなものだ」
梅内「うん、スライム一匹と互角だね」
相場「そんなスライム一匹相当の俺達が、イベント内で大学生活を謳歌する高レベルの女学生と相対した時、表示される選択肢は?」
梅内「…あせる、どもる、そしてにげる」
相場「しかしにげられない。女学生は即死の呪文を唱えた」
江藤(声のみ)「何こいつ…キモッ!」
梅内「うわああああ!」
相場「おお俺達よ!死んでしまうとは情けない!」
梅内「どうしよう相場君!どうしよう!」
相場「落ち着け!まだ策はある!」
梅内「策…?」
相場「そうだ。今から城の外でレベル上げをしている暇はない。だが、装備を整えれば…」
梅内「レベルが上の相手と戦うこともできる…でも、唯一の武器だったモノポリーはグリズリーに食べられちゃったじゃないか…」
相場「たとえモノポリーがあったとしても多少の攻撃力しか見込めない。
レクリエーションの時に出したとしても反応は薄かっただろう、寧ろリスクを回避したといっていい」
梅内「装備を整えても敵のレベルが高すぎるってことか…」
相場「そう、だから高いレベルが必要なイベントは捨てるんだ。
…俺達が狙うのは一つ。皆イベントをこなし、身体も程良く疲労し、解放感に包まれた瞬間」
梅内「それって…」
相場「そう、寝る前だ」
梅内「なるほど!それなら僕達もさり気無く女の子と空間を共有できる!」
相場「修学旅行の夜を思い出せ、そこにヒントがあるはずだ」
二人、しばらく考え込む。
梅内は突然小さく身体を震わせ始める。
梅内「…皆、僕も混ぜて…トランプは得意なんだ…」
相場「…梅内?」
梅内「…あ、先生…いえ、皆は海見に行ったみたいです…あ、清掃係の人来てないんですか?
じゃあ変わりに僕が…どうせ…暇なんで…っ!」
相場「梅内!やめろ!それ以上思い出しちゃいけない!」
相場、梅内にビンタをする。
梅内「いたっ…!リ、リーダー…僕っ!」
相場「俺達はこれから栄光を掴むんだ…過去は忘れろ。そうだな…自分の修学旅行じゃなくて、マンガや小説を参考にするんだ」
梅内「それならたくさんあるよ!えっと…
俺は遊び疲れた身体を布団に埋めた。むにゅ…ん?なんだこの感触は…『あんっ!』
まさか…ゆっくりと布団の中を覗くと、そこにはパジャマ姿の幼馴染がいた。『えへっ、来ちゃった♪』」
相場「そこにヒントがあるか?」
梅内「ないね」
相場「もっと現実的なやつで頼む」
梅内「マンガや小説の話を持ち出して現実的ってのもおかしくないかな・・・」
相場「マンガや小説の方が俺達の思い出よりも現実的だ。問題ない」
梅内「う〜ん…集まってトランプとかが一般的なのかな…怖い話したりとか…」
相場「そうだな…ん?まてよ?」
梅内「…あ!」
相場・梅内「怖い話だ!」
二人勢い良く立ち上がる。
相場「今から程良く怖く、それでいて好奇心を刺激するような話を作る!」
梅内「怖いねー、なんて言いながら和気あいあい!」
相場「やがて誰かが口を開く、『肝試しでもしに行くか』」
梅内「必然的に組まされる男女ペア!」
相場「怖い話を話したことで『この人は怖いの平気なんだ…』という信頼が向けられている!」
梅内「『絶対怖い話なんてしないでね!』」
相場「どうしようかな…」
梅内「『話したら絶対許さないんだから!』」
相場「はは、ハナさないよ…二つの意味でね」
二人、顔を見合わせる。
相場・梅内「いける!!」
相場「さっそく話を考えよう」
梅内「なるだけ想像しやすいようなシチュエーションがいいね」
相場「そうだな…大学構内の七不思議的なものはどうだ?」
梅内「身近だし、信憑性が無かったとしても納得してもらえそうだね!」
相場「良し!時間が無い、ポンポンと出して行こう!」
梅内「それじゃあ…こんなのはどうかな?妄想スイッチ、オン!」
二人の妄想力で江藤が室内に現れる。
梅内「とある女学生が発表で使う資料を探しに夕方の図書館へと向かっていた」
江藤「…うわっ、なんか気味悪いわね…」
相場「ちょっとストップ!どうしてモデルが江藤さんなんだ?」
梅内「いや、別に…深い意味はないけど…」
相場「何…お前そういうことしちゃう」
梅内「え、何か問題ある?」
相場「いや、別にそーいうんじゃないけどな・・・。なんかずるくないか?
俺たちで考える怖い話なのにお前の好きな人だけ出すってのは」
梅内「べ、別に好きとかそういうんじゃないよ!」
相場「だったら別に誰でもいいわけだよな?大河内さんだっていいわけだよな?」
梅内「そ、それはダメなんじゃないかな!」
相場「なんで」
梅内「だって相場君は大河内さんのこと好きでしょ?」
相場「そうだけど」
梅内「あわよくば付き合いたいと思ってるわけでしょ?」
相場「付き合った後、突きあいたいと思ってるぞ」
梅内「やっぱり私情入りまくりじゃないか!だめだよそんなの!」
相場「だったらお前は江藤さんとつきあいたいと思ってないんだな!?」
梅内「どっちの意味でいってるのさ!」
相場「あ!どっちの意味とか!あ!はい、今お前エロいこと考えた!江藤さんでエロいこと考えた!
お前本当そういうとこあるよな!」
梅内「そんなことないよ!大体先に言ったの相場君だろ!?」
相場「そうやってムッツリだからなぁ!彼女が出来ないんだよ!」
梅内「いったなぁ!相場君も下心が丸見えだからダメなんじゃないか!」
相場「何だと!」
相場、梅内ともみ合いになる。
イラついた様子で江藤は二人に近づく。
江藤「ちょっと!あんた達!」
相場「あ・・・はい」
江藤「揉めてないで早くしてくれない?」
相場「はい・・・すみません」
江藤「それと、あんた達がモテない理由そういう所関係ないし。それ以前の問題だから」
相場「はい・・・」
江藤「第一あんた達が付き合うとかいう話してるのなんかムカつくのよ」
相場「はい・・・」
江藤「大体合宿前にいきなりサークル入ってきて、下心みえみえだっつーの。
あんた達みたいなキモメン、あたし達が相手すると思ってるのがそもそもおかしいっていってるのよ」
梅内「もうやめろおおおお!」
相場「う、梅内・・・?」
梅内「それ以上は僕たちの妄想だとしても・・・仮想江藤さんだとしても許さない!」
江藤「な、何よ!」
梅内「これ以上言うなら、僕は君を・・・ぶつ!」
相場「おい!」
梅内「二度ぶつ!お父さんよりも強く!わかったらとっとと持ち場に戻れ!
お前は黙って僕達の言うことを聞いていればいいんだあああああ!・・・はぁはぁ・・・」
江藤、少しの沈黙の後ふっと微笑む。
江藤「言えるじゃない・・・ちゃんと。そういう強引な男、嫌いじゃないわよ」
江藤、小走りで下手側に戻る。
梅内「は、はは!言った・・・!言ってやった!」
相場「え?何これ!何この感じ!すごいむかつく!
おい!今のやり取り全部妄想だからな!一皮剥けたみたいな顔してるけどお前まだ精神肉体共に包茎だからな!」
梅内「ははは・・・嫉妬か?落ち着けよ相場」
相場「なんで口調も変わってんだ!なんで上から目線なんだ!目を覚ませこのっ!」
梅内「あははは!あははは!あははは!」
相場、梅内の肩を激しく揺さぶる。
梅内「・・・はっ!あれ・・・相場君、僕は何を?」
相場「良かった、本当に良かった・・・!」
梅内「ん・・・?ああああ!時間!もうこんな時間だ!」
相場「本当だ・・・!こんなコントのようなことをしている場合じゃない!」
梅内「・・・相場君。ここは大河内さんも登場させるというのはどうかな?」
相場「・・・梅内、いいのか?」
梅内「僕達、友達じゃないか!」
相場「ああ、そうだな!友達だ!」
池ヶ谷「トモダチ・・・?」
その言葉に反応するかのように池ヶ谷が部屋に入ってくる。
池ヶ谷、虚ろな目で辺りを見渡し匂いを嗅ぐ。
相場「池ヶ谷!くそ、あいつ何てタイミングで戻ってきやがるんだ面倒くさい!」
池ヶ谷「ン・・・?イイニオイ・・・スル・・・」
相場「まずいぞ、あいつ江藤さんが見えているんだ!」
梅内「妄想内の女性の匂いまで嗅ぎつけるなんて!」
池ヶ谷「オンナ・・・オンナノニオイ…!イイニオイ!」
江藤「え?何よあんた・・・!」
池ヶ谷、江藤にゆっくり近づいていく。
相場「まずいぞ!このままだと江藤さんが何か動物的なことをされてしまう!」
梅内「そんな・・・!江藤さん!逃げて!」
池ヶ谷「オンナ、スキ!オンナ!ナオン!」
江藤「いやっ!こないで!誰か助けて!」
江藤だんだんと部屋の隅に追い詰められていく。
梅内「江藤さん!」
相場「くっ!どうすれば・・・!」
梅内「そうだ!バナナだ!」
梅内、バナナを取り出すと池ヶ谷に近づく。
梅内「ほら!池ヶ谷君!これを見ろ!」
池ヶ谷「・・・ン?」
梅内「君の大好きなバナナだよ!これをあげるから彼女から離れるんだ!」
池ヶ谷「バナナ、オンナ、バナナ、オンナ・・・」
梅内「深く考えないでー、選ばないでー、美味しいバナナだよー、ほーら、フィリピンの風を感じてー」
池ヶ谷「バナナ、フィリピンバナナ、フィリピンパブ、オンナアアアアア!」
相場「いかん!」
梅内「ダメだ!逃げて江藤さん!」
相場「妄想スイッチ、オン!」
大河内「女ならここにもいるわよ!」
大河内、バスローブ姿で登場。
動きの止まる池ヶ谷。
梅内「あれは・・・大河内さん!?」
相場「ふっ、こんなこともあろうかとさっき妄想しておいたのさ」
梅内「バスローブ姿って時点でエロ妄想じゃないか!江藤さんがピンチだって時に何考えてるんだよ!」
池ヶ谷「オ、オンナ・・・!」
大河内「ほーら!こっちを見なさい!そして跪きなさい!こっちの女は良い女よ!おーっほっほ!」
梅内「・・・あれ?なんか性格・・・」
相場「俺はMだ」
池ヶ谷「オンナ、オンナ・・・」
大河内「そうよ!こっちに来るのよこのケダモノ!」
池ヶ谷、大河内の方にゆっくりと近づいていく。
梅内「江藤さん!今のうちにこっちへ!」
江藤「え、ええ!」
江藤駆け足で梅内の元へ。
梅内「大丈夫だった?」
江藤「助けるのが遅いのよ!」
梅内「ごめんね」
江藤「本当に怖かったんだから!」
梅内「・・・ごめん」
江藤「何よ・・・男が簡単に謝るんじゃないわよ・・・バカ」
梅内「うん、僕はバカだ。ごめん」
江藤「いいわよ・・・その・・・ありがとう」
相場「お前妄想だからって好き勝手やりすぎだろ」
梅内「相場君に言われたくないよ。それより大河内さんは?」
相場「ああ、それなら心配ない」
池ヶ谷「オンナ・・・オン、ナ?」
梅内「池ヶ谷の動きが止まった!」
大河内「ふふ、どうしたのかしら。わかったわ、私のあまりの美しさの前に尻込みしてるのね?
ケダモノにも美的感覚はあったようね・・・誉めてあげるわ」
池ヶ谷、動きを止め大河内の匂いを嗅いでいる。
やがて興味を失ったように大河内から顔をそむける。
池ヶ谷「スエタニオイガスル」
梅内「おい君!大河内さんに何したんだ!」
相場「こんなこともあろうかと先に動物的なことをしておいたんだ」
梅内「君最低だな!」
相場「結果的に助かったんだからいいだろう!」
大河内「許せない・・・!童貞の癖に!童貞ゴリラの癖に!このっ!このっ!」
池ヶ谷「ウホッ!ウホーッ!」
大河内、池ヶ谷に蹴りを入れる。
池ヶ谷、倒れる。
梅内「ピンヒールで・・・!あれじゃ流石の池ヶ谷君でも!」
相場「落ち着いてください女王様!貴方様にはこの下僕がいます!」
大河内「そういう問題じゃないのよ!だからあんたは汚ならしい豚だっていってるの。
あんたは自分のご主人様がこんなゴリラに侮辱されても平気だというの?」
相場「めっそうもございません!私めは今言いようもない怒りを覚えております!
怒り豚です!汚いイカリコ豚です!」
大河内「いいわ!じゃあ汚らしくて臭いイカリコ豚・・・そのケダモノに止めを刺しなさい!」
梅内「そんな!」
相場「了解しましたブー」
池ヶ谷「ウ・・・ウホッ・・・!」
江藤「動物園みたいになってきたわね・・・」
梅内は相場と池ヶ谷の間に立ちはだかる。
梅内「相場君!本当にそんなことしないよね!?」
相場「そこを退くブー!これは女王様の命令なんだブー!」
梅内「なっ・・・池ヶ谷君は友達だろう?」
池ヶ谷「ト・・・トモダチ・・・?」
梅内「そう、友達だ!僕達は友達なんだ!
目を覚ますんだ。妄想の女なんかに誑かされて、友達を裏切るのか!君は!」
相場「・・・梅内、目を覚ますのはお前だブー」
梅内「・・・なんだって?」
江藤、大河内、上手より掃ける。
相場「・・・俺は豚なんだ。最初っから汚らしい豚なんだよ!
レジで小銭を渡されるとき、手を触れないように細心の注意を払われる、
電車で座ればどれだけ込んでいても隣に誰も座らない、
服屋に行って、お洒落なジャケットを見ていると店員は半笑い、
美容院に行けば何も言わずにバリカンを手に持たれる!」
梅内「それは流石に被害妄想だよ!」
相場「わかってるさ!思い込みだってわかってる・・・わかっていても俺は変われない!
二十歳を過ぎて、まともに女性に話しかけることすら出来ない・・・。
だからここでこうやって・・・小賢しく作戦なんて考えてる」
梅内「相場君・・・。
相場「梅内・・・お前は大丈夫だよ。さっきはっきり江藤に怒鳴ってたじゃないか。
お前は俺とは違う・・・きっと明日も江藤さんに話し掛けることができるさ」
梅内「そんな・・・そう簡単には言えないって」
相場「帰れよ」
梅内「え?」
相場「帰れよ!お前ら帰れよぉ!」
相場、ぐずり始める。
池ヶ谷、頭をかきながら立ち上がる。
池ヶ谷「・・・うるせぇなぁ。
梅内「池ヶ谷君、目が覚めたんだ・・・。
相場「丁度いいよ!帰れよ!・・・もうなんだよぉ!馬鹿みたいだよぉ!
何がリーダーだよ!うそだよ!女と話したってのもさぁ!
声をかけられたことはあっても返事をすることもできねぇよ!
その癖妄想の中ではいきがって女性の身体好き勝手もてあそんでさぁ!」
池ヶ谷「おい相場、それはちげぇぞ!」
梅内「池ヶ谷君・・・!」
池ヶ谷「女の身体なんてみたことねぇんだから、
お前はお前の妄想の中で女の身体を妄想して好き勝手している妄想をしているだけにすぎない!」
梅内「まさかの正論!?がっかりだよ!」
池ヶ谷「相場ぁ!お前中途半端なんだよ」
相場「・・・・・・」
池ヶ谷「いってみろ。何回12月をのりこえた、何回4月をやりすごした、何回8月に目を瞑った!
何人の女に恋をした!何度恋した女が別の男と手を繋いで歩き去るのを遠めに見た!
あの子が笑顔を向けるのが自分だったら・・・そんな夢を何度見たんだ!いってみろ!
俺達はモテなかった!理由なんざ関係ねぇ、ただただ俺達はモテなかった!
それをみとめねぇでカッコつけようとしてたからそんなにくるしいんだろうが!」
相場「池ヶ谷・・・」
池ヶ谷「俺達はどうすりゃモテるんだよ!教えろよ!俺にはなんもおもいつかねぇ、馬鹿だから!
お前はどうだ、なんか思いつくのか!」
相場「・・・ああ・・・思い付くよ」
梅内「・・・相場君。
池ヶ谷「頼むぜ、相場・・・お前がリーダーだ」
梅内「うん、頼むよ・・・モテないリーダー!」
相場「・・・その呼びかたはやめようか・・・」
梅内「ご、ごめん!モ・・・モテるリーダー?」
相場「・・・ありがとうな、池ヶ谷・・・。お前のお陰で目が覚めたよ・・・」
池ヶ谷、すでに寝ている。
相場・梅内「寝ている!!」
相場「こいつはもう・・・」
梅内「そういえばもう睡眠予定時刻なんだね」
相場「身体が覚えていたか・・・つくづく獣のようなやつだ」
梅内「さて・・・どうする?リーダー」
相場「・・・小細工はなしだ」
梅内「でもそれじゃあ・・・」
相場「話のネタになるようなことをネタ帳にまとめよう」
梅内「え?」
相場「今更カッコつけたってしょうがない、だろ?だったら、少しでも長く楽しく話せるようにカンペを用意しておくんだよ」
梅内「・・・いいんじゃないかな、それ」
相場「まぁテンパってチラチラそれ見ながら話してたら、気持ち悪がられると思うけどな!」
梅内「テレレレーン!やせいの女性があらわれた!」
相場「たたかう!」
梅内「僕達の攻撃!しかし女性はひらりとそれをかわした!
女性の攻撃!『キョドってんなよ、キモイ』」
相場「・・・」
梅内「・・・」
相場「・・・ふっ、きかないぜ!そんなもんこっちはわかってんだよ!」
梅内「どうする?逃げる?」
相場「たたかう一択!」
梅内「リーダー!!!かっこいいぜ!!!!」
相場・梅内「よーし!モテるぞー!!」
相場「じゃあさ、どういう話が得意かとかをまとめていこうぜ」
梅内「うん、僕はエロゲかな!」
相場「それはだめだ!」
梅内「それはなんとなくわかる!」
相場「そこはぼかして恋愛小説とかにすれば!」
梅内「それいいかもね・・・・・・・(暗転・フェードアウト)」
明転。
舞台上、江藤と寝ている大河内。
江藤「・・・大河内・・・大河内、起きなよ・・・時間だよ?」
大河内「ん・・・今何時?」
江藤「もう6時」
大河内「うそ!」
江藤「ほんとほんと・・・もーねすぎだって」
大河内「ごめん!で、あ、あれは?」
江藤「私一人でやっといた。ほら」
江藤、紙を大河内に手渡す。
大河内「・・・これ、何?」
江藤「話のネタまとめてみたの・・・。
どうせまともに男と口なんてきけないんだから、下手な小細工するより趣味の話とかしたほうが印象いいでしょ?」
大河内「そう・・・だね。でも、アメコミフィギュアの話とかひかれないかな?」
江藤「私のペットボトル収集よりはましでしょ・・・」
大河内「そういえばあの山のようなペットボトルどうしたの?まさか・・・捨てたとか・・・」
江藤「そんなわけないでしょ!ちゃんと、隣の部屋においてあるわよ」
大河内「隣の部屋って、弟君の部屋じゃなかった?」
江藤「いいの。むしろペットちゃんたちと一緒に寝れて喜んでるでしょ」
大河内「そういうところがモテない理由なんじゃないかな・・・」
江藤「いわないでよ・・・。でも、昨日の晩一生懸命普通の話題とか集めておいたから!
話につまったらトイレにいって、それを見ればなんとかなる!トイレにたつときには・・・」
大河内「ちょっとお化粧直してきます」
江藤「それそれ!」
大河内「あ!そうだ・・・化粧してくれる?」
江藤「・・・私も先月はじめたばっかだけど」
大河内「でも私よりは上手だもん!お願い〜」
江藤「わかったわよ・・・えっと、そこの雑誌とって」
大河内「・・・そこのって、どこの?」
江藤「上から〜・・・2個目か3個目か・・・もうその山ごと頂戴!」
大河内「よっと・・・はい!それにしてもこれ・・・全部ファッション雑誌?すごいね・・・」
江藤「最初のほうは勉強のつもりで買ってたんだけど、最近は集めるのが楽しくなっちゃって」
大河内「それ・・・まずいんじゃないの。例の収集癖出てない?」
大河内の携帯が鳴る。
大河内「うわっ!あ、ああああ!加藤先輩だ!どどどどどうしよう!」
江藤「おおおお落ち着きなさい!とりあえず電話なんだから、相槌をうっておけばいいのよ!」
大河内「(通話ボタンを押す)は、はい。そうですね」
江藤「まだよまだ!」
大河内「え?あああ、はい!はい!・・・・・・・・・はい?・・・はい・・・はい・・・はーい。はいはいーはい!(通話をきる)」
江藤「全部相槌で返す必要はないんだけど・・・で、なんだって?」
大河内「えっと・・・なんか、今回から参加する人たちがいたんだけど・・・」
江藤「ああ、あの無口な三人組ね」
大河内「2人が怪我して、こられなくなったんだって・・・」
江藤「へぇ〜・・・何があったのかな・・・」
大河内「投げられて頭がとかいってたけど・・・命に別状はないみたい」
江藤「・・・今度、お見舞いいってみようか・・・」
大河内「え?何々?気になってるの?」
江藤「いや!違うんだけど・・・なんていうか、同じ匂いがするっていうか!」
大河内「私もあのおっきな人はちょっといいかなぁっておもってたんだよね・・・」
江藤「え!?あんなゴリラみたいなのが好みなの!?」
大河内「だって・・・ハルクみたいでかわいいじゃない?」
江藤「ああ・・・あんたはアメコミすきだもんね・・・。でもハルクがかわいいって・・・」
大河内「かわいいじゃん!大きいし!力持ちだし!それにハルクってやさしくて・・・」
江藤「はいはいわかったわかった・・・」
大河内「あ、そろそろ時間だね」
江藤「うん、じゃあこのふわかわメイクってのにしようか!」
大河内「うん!」
江藤・大河内「よーし!モテるぞー!!!」
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