ヲタイプ
作者:ススキドミノ


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田中:性別不問
鈴木:性別不問




※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)




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 ◆

<放課後・教室>

田中:増えたねえ、カップル。

鈴木:……まあ、時期だし?

田中:……まあ、時期か。

 間

田中:あーダメだ。全く想像つかん。

鈴木:ああ……恋人できてる想像?

田中:漫画的なシチュとかは想像できるけどさ……。

鈴木:自分というキャラクターが登場する余地が無い?

田中:マジでそれ。自分が邪魔すぎ。

鈴木:……そもそもさ、自分の掘り下げが足りないとか?

田中:もしくは、そもそも自分という人間が浅いとか?

鈴木:いや、しんどいしんどい。

田中:掘ってみる? 自分のこと。

鈴木:掘って大丈夫それ、墓穴じゃない?

田中:じゃあさ、鈴木はどんな人がタイプ?

鈴木:出たー……その質問。

田中:わかるよ、言いたいことは。

鈴木:小学生の時、給食で揚げパンが出るくらいの頻度で聞かれるじゃん。その質問。

田中:例えキモ。でもめっちゃわかりやす。

鈴木:タイプって何? ほのおタイプとかそういうこと?

田中:そのボケは寒い。

鈴木:ほのおタイプなのに?

田中:その返しは生意気。

鈴木:いや実際むずくない? なんていうか、答えが決まりきってるっていうかさ。

田中:決まってるかな。

鈴木:例えばさ、身長だったら自分より背が高い人、低い人とか。

田中:ああ、見た目ね。目がどう、鼻がどうとか。

鈴木:そうそう。そんで最終的にはさ、芸能人だったら誰みたいなー的な話に自動的に接続される感じ。

田中:だったら内面の話は?

鈴木:それもそれで曖昧になんじゃん。怒らない人ーとかさ。
   誰でもキレることくらいあんじゃん。

田中:浮気しない人とかね。

鈴木:そうそう。優しい人とか。

田中:でも、内面の方はさ、話題として発展性はあんじゃん。

鈴木:例えば?

田中:じゃあさ、『優しくて浮気をしない人がタイプ』だとするよ?
   それって成立するのか――とか。

鈴木:どういうこと?

田中:だから、もしその優しい人っていうのが、『誰にでも優しい人』だったらさ、浮気する確率高くない?

鈴木:確率って?

田中:自分が『誰にでも優しい人』と付き合ったとするよ?
   その恋人はね、優しいがゆえに、恋愛の相談とかにも真摯に乗っちゃうわけ。
   ある日、そんな恋人に恋愛の相談をする人が現れるわけよ。

鈴木:うわ、怖い怖い。

田中:当然、恋人は誰にでも優しいですから。相手も相談してるうちに好きになっちゃうよね。
   ある日、相談の流れで、相手は恋人にちょっかいをかけてくるわけ。
   「寂しいんだ」なんて言って、手を握ってきて……。
   そんな風に誘われたら? 恋人は断れないんだよ。
   何故なら――

鈴木:誰にでも優しいから?

田中:以上、弁論を終わります。

鈴木:待ってください裁判長!
   優しさとは、受け入れることだけを指すわけではありません。
   寂しそうにする相手を、しっかりと突き放す優しさも持っているとしたらどうですか?

田中:却下します。

鈴木:裁判長……!
   っていうか、その相談相手がマジでムカつきます!

田中:それはそう。

鈴木:……舐めてた。
   ちゃんと盛り上がるわ。この話題。

田中:でしょ?

鈴木:で、優しい人は?

田中:タイプかって? いやいや、ないね。

鈴木:はっきり言うじゃん。

田中:基本ベース優しくない方が興奮する。

鈴木:性癖じゃん。

田中:具体的にはツン八、デレ二くらい。

鈴木:だから性癖じゃんって。
   タイプの話だって。

田中:いやいや、そもそもタイプって癖(へき)の話でしょ?

鈴木:そういう側面もあるってだけだって。

 間

鈴木:……異世界召喚されても、ちゃんと帰ってくる人。

田中:……は?

鈴木:仮に異世界召喚されたとしても、ちゃんと帰ろうと努力して、帰ってくる人。

田中:……が、タイプってこと?

鈴木:うん。だって、異世界召喚モノのラノベとかって、大体現地で英雄になって誰かと結ばれたりするじゃん。

田中:そりゃあね。

鈴木:いや、マジでそれがいいんだってのは大前提わかってるよ? そういうラノベ大好きだし。
   異世界なんて最高だし。

田中:……あー、そういうことね。
   もしアニメ的な展開で、実際に行ったとして、ってことね。

鈴木:うん。もし自分が行ったら、帰ろうと頑張るかわかんないし。
   帰ってくるって、めちゃくちゃカッコいいなって思う。

田中:いいなぁ、それ。
   それくらいぶっ飛んでる方が答えとしてはいいのかも。

鈴木:そうかな。

田中:うん。それになんか、わかる。

鈴木:まあでも、居ないんだけどね。
   異世界召喚されて帰ってきた前例がないから。

田中:あー。そういうラブコメ読みてー。
   第一声でさ、「異世界召喚されたとしても、あなたはこの世界に帰ってきますか?」とか主人公が言われるやつ。

鈴木:わかるー。絶対おもしろい。

田中:そういう意味分からない展開から始まってさー。
   イチャイチャコメディな感じで話が進んでくんだけど、だんだんシリアスになってさー。

鈴木:で、最終的には最初の台詞が回収されるんだよ。
   「異世界召喚されたとしても、あなたはこの世界に帰ってきますか?」

田中:で! 主人公が微笑んで――

鈴木:「君のところに帰るよ」

田中:「おかえり」

鈴木:「ただいま」

 間

田中:やっぱりこの手の妄想が一番楽しい。

鈴木:本当、自分いらねー。

 間

田中:増えたねえ、カップル。

鈴木:……まあ、時期だし?

田中:……まあ、時期か。


 終





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