西さんの恋人
作者:たかはら たいし


黛 真弓(まゆずみ まゆみ)♀
西 百合香(にし ゆりか)♀
岡田(おかだ)♂




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■大学構内・女子トイレ個室
壁を背にした真弓と百合香が唇を重ねている。

真弓「んっ・・・ちょっと、西」

百合香「ん?なにー?」

真弓「しっ!声うるさい。誰かいたらどうすんだよ」

百合香「大丈夫でしょ、講義中だし」

真弓「大丈夫じゃないよ。誰か入ってきたらどうすんの?」

百合香「え、ウケるんだけど。超心配症だ、まゆまゆ」

真弓「その呼び方やめろって言ってるでしょ」

百合香「なんで?」

真弓「ムカつく」

百合香「いいじゃん、かわいい」

真弓「それがムカつくって言ってるの」

百合香「ええ?でも、名前的にしょうがなくない?」

真弓「しょうがなくない」

百合香「あだ名で呼ばれたことないの?」

真弓「あるけど教えない」

百合香「えー、なんでよ」

真弓「調子に乗るから」

百合香「乗らないから教えてよ」

真弓「やだ。ていうか早く出てけ」

百合香「なんで?」

真弓「もー、めんどくさいなー。私はやくトイレ・・・」

個室の外、トイレの中に誰かが入ってきた足音が聞こえてくる。
息を殺して、黙り込む二人。

百合香「やばい。今の聞こえたかな?見つかったらどうしよう」

真弓「・・・」

百合香「ねぇ、どうする?」

真弓「うるさい」

百合香「ねぇ、まゆちゃん」

真弓「なんだよ」

百合香「超好き」

真弓「・・・」

百合香「照れてる?」

真弓「だから、うるさいって言ってんの。バカ」

■大学構内・食堂

岡田「西さん!こっちこっち!」

食堂に入ってきた西へと手を振る岡田。
浮かない表情で、岡田へと会釈する西。

岡田「ごめんごめん。忙しいのに急に誘っちゃって」

百合香「いえ・・・大丈夫です・・・」

岡田「西さん、なんか頼む?わざわざ来てもらったし、なんか奢ろうか?」

百合香「大丈夫です・・・。あの・・・、このあと予定あるので・・・」

岡田「ああ、そうだった。ごめんごめん」

百合香「私、30分ぐらいしかいれないんですけど・・・」

岡田「大丈夫大丈夫。そんなにはかからないから」

百合香「そうですか・・・」

岡田「そういやさ、こないだ飲み会すげぇ楽しかったね」

百合香「あ、はい・・・」

岡田「西さんとちゃんと喋るのはじめてだったじゃん?超緊張したんだけど、俺」

百合香「そうなんですか・・・?」

岡田「うんうん。あの時さ、お酒入ってたから馴れ馴れしかったよね俺。ごめんごめん」

百合香「いえ、別に。そんなことは・・・」

岡田「ほんとに?だったらよかった」

百合香「私の方こそ、すみません・・・」

岡田「え、なんで?」

百合香「気を遣わせてしまったので・・・」

岡田「全然全然。そんな事ないよー」

百合香「それならよかったです。あの、それで・・・」

岡田「ああ、うんうん!ごめんごめん。ついつい脱線しちゃった」

百合香「・・・」

岡田「俺、実はさー。1年の頃からさー。西さんのこと可愛いなーって思ってて」

百合香「そうなんですか?」

岡田「うんうん。あー、ほら、授業で何回か隣の席になったことあるじゃん」

百合香「そうでしたっけ・・・?」

岡田「うんうん。でも、こんな風に喋らなかったからさ。やっぱ覚えてないよね」

百合香「全然覚えてないです。ごめんなさい・・・」

岡田「ああ、いいよいいよ。全然気にしないでよー」

百合香「はい、ありがとうございます・・・」

岡田「それでね、西さんさ。今もし付き合ってる人がいなかったら俺たち友達から始められないかなー、って思って」

百合香「え・・・」

岡田「俺、西さんのことまだよくわからないけど、でもさ、いつも構内で一人でいるから俺、超心配なんだよー」

百合香「・・・」

岡田「そうそう。知らないと思うけどさ。西さん可愛いって結構評判なんだよ?」

百合香「・・・そうなんですか」

岡田「うん。あ、それで今の話だけど返事は今日じゃなくていいからさ。来週まで全然待つから俺」

百合香「・・・」

岡田「そういえば、西さんlineやってる?連絡用に交換したいんだけど俺のID」

百合香「(遮って)ごめんなさい」

岡田「へ?ごめんなさいって・・・」

百合香「すみません・・・その・・・、ごめんなさい・・・」

岡田「え?なんで?俺、ダメ?ああ!そうだそうだ、西さんね、俺こないだ車買ったんだよ!ドライブ行こうよ、ねぇ!」

百合香「あの・・・」

岡田「友達から始めてさ、ダメだったら振ってくれていいからさ!」

百合香「・・・」

岡田「ねぇ西さん!頼むよ!」

百合香「・・・ごめんなさい。付き合ってる人、いるので」

岡田「え・・・、ほんとに?」

百合香「はい」

岡田「ここの人?」

百合香「・・・一応」

岡田「え、誰・・・?」

百合香「・・・」

岡田「あ、ごめんごめん。そりゃ言いたくないか」

百合香「すみません・・・」

岡田「でも、西さん付き合ってる人いたんだー、全然知らなかったよ」

百合香「はい・・・」

岡田「イケメン?」

百合香「え?」

岡田「いやー、西さんの彼氏だからさ、超イケメンなんだろうなーって思って」

百合香「・・・」

岡田「やっぱ気になるじゃん。俺、振られちゃったしさー」

百合香「・・・黛さん」

岡田「え?」

百合香「黛 真弓さん」

岡田「それって・・・、付き合ってる人?」

百合香「はい」

岡田「へぇ、そうなんだ!」

百合香「・・・」

岡田「・・・にしても、マユミって女の子みたいな名前だね。珍しいねー」

百合香「・・・同性なんです」

岡田「え?」

百合香「いや、だから・・・」

岡田「え、うそ?ほんとに?」

百合香「はい・・・」

岡田「え、それはその、そういう関係ってこと?」

百合香「はい、そうです・・・」

岡田「マジで?え?やっべ!それマジで?」

百合香「・・・」

岡田「ああ、疑ってるわけじゃないから。でも、そうだったんだ。マジかー」

百合香「はい。岡田さん、あの、この事は・・・」

岡田「うんうん。絶対に誰にも言わないから安心してよ」

百合香「・・・」

岡田「でもさぁ、色々と大変なんじゃない?」

百合香「いえ、そんな事ないです・・・」

岡田「ほんとに?“同性のカップルはすげー大変だ”ってネットで見たことあるよ、俺」

百合香「別に、普通のカップルと一緒だと思います。この前とか・・・」

■百合香の部屋

百合香「戸棚のカップ焼きそば」

真弓「は?・・・ああ、それが?」

百合香「一人で食べれないのに買っちゃったー」

真弓「は?意味わかんない」

百合香「ねー?私なんで買ったんだろ」

真弓「知らないし」

百合香「あれ、一緒に食べようよ」

真弓「いいけど。ていうかなんで買ったの?」

百合香「わかんない。コンビニ行って気づいたらカゴに入れてた」

戸棚からカップやきそばを取って開封し始める百合香。

百合香「〜♪」

真弓「うわ、超大盛ってめっさ書いてあるし」

百合香「ウケるー」

真弓「超大盛って強調し過ぎっしょ」

立ち上がり、台所へ向かう真弓。

真弓「ねぇ?」

百合香「なにー?」

真弓「お湯沸かすやつ、どこー?」

百合香「流しの横ー」

真弓「・・・無いけど!」

百合香「え、嘘!?」

真弓「あ、ごめん!あった!」

百合香「うん」

真弓「箸はー?」

百合香「適当に使ってー」

真弓「だからー!箸どこにあんの?」

百合香「え?」

真弓「箸!」

カップ焼きそばを持って台所に来ると、台所の戸棚から箸を取り出す百合香。

百合香「えーと。これ。この白いやつ使っていいよ」

真弓「うん」

百合香「これ二人で食べられるかな?」

真弓「二人ならいけるんじゃない?アンタ一人じゃ絶対無理だろうけど」

百合香「まゆちゃんって小食?」 ※小食の部分を噛んでください

真弓「(遮って)は?なんだって?」

百合香「小食」

真弓「今なんて言ったの?」

百合香「小食!小食って言った!」

真弓「いま噛んだっしょ?ねえ、今噛んだよね?」

百合香「もう!うるさい、うるさいって」

恥ずかしさから真弓に抱きつく百合香。

真弓「ちょっとー」

百合香「恥ずかしい、超恥ずかしい」

真弓「小食」 ※百合香が噛んだときの真似で

百合香「やめてって」

真弓「小食」 ※百合香が噛んだときの真似で

百合香「もう!」

真弓「・・・で、なに?」

百合香「いや、だからー、まゆちゃんもしょう、小食だねって言おうとした」

真弓「小食だけど。いま言い直した?」

百合香「今ちゃんと言えた!」

真弓「ほら、ちょっとどいてよ。お湯入れるからちょっとほら」

百合香「まゆちゃーん」

真弓「うるせえな、どけよ」

百合香をどかせて、カップ焼きそばにお湯を注ぐ真弓。
その様子を眺めながら微笑む百合香。

真弓「なに?」

百合香「主婦みたい」

真弓「うるさい」

百合香「いやぁ、真弓ちゃんは将来いいお嫁さんになるよー」

真弓「西が夫?」

百合香「そう」

真弓「やだよ。オマエとはやだよ私」

百合香「あれ聞いてよ。ごはんとお風呂と私、どれにする?って」

真弓「今時そんな事言う奴いないって」

百合香「いいから、ちょっと聞いてよ」

真弓「・・・おかえりなさいあなた。ごはんとお風呂と私、どれに」

百合香「(遮って)オマエだー」

再度、真弓に抱きつく百合香。

真弓「うぜぇ」

百合香「オマエだー」

真弓「うるせえな」

百合香「まゆちゃーん」

真弓「はいはい」

百合香「なんか面白い話して」

真弓「は?」

百合香「面白い話」

真弓「ゆりが噛んだ話は?」

百合香「それはやだ!」

真弓「ゆりが小食って言えなかったときの話する?」

百合香「一緒じゃん!」

真弓「面白い話っていうから」

百合香「面白くもなんともない!」

真弓「あ、ゆり」

百合香「なにー?」

真弓「そういえばさ。貸した本、読んだ?」

百合香「うん。半分ぐらい」

真弓「どの辺?」

百合香「あそこ。サッカーボールが飛んできて鼻血出たとこ」

真弓「あー、公園のデートのとこ?ていうか全然まだ序盤じゃん」

百合香「え、うそ?」

真弓「ほんとほんと、一緒に映画見に行くところとかまだっしょ?」

百合香「うん。まだ」

真弓「あれでしょ?女の子に鼻血拭いてもらって「またねー」ってとこでしょ?」

百合香「そうそう。で、なんか幼馴染が来た」

真弓「あー、はいはい。その辺からね、なんかゴタゴタしてくる」

百合香「そうなんだ。あの幼馴染の子、超いい子だよね」

真弓「いや、あの子もあの子でめんどくさいよ」

百合香「え?そうなの?ほら、もう一人の子は超めんどくさそうだけど」

真弓「いや、幼馴染も幼馴染でめんどくさい。私あっちの方が無理だな」

百合香「そうなんだー」

真弓「てか、貸したの先月じゃん。全然読んでないじゃん」

百合香「読んでます」

真弓「早く読んでよ」

百合香「読んでるしー」

真弓「遅いしー。てか、3分経った」

百合香「うん」

真弓「お湯」

百合香「私やるよ」

真弓「台所にどばーってならない?」

百合香「ならないし」

カップを持ち、湯切りする百合香。

真弓「湯切り失敗したことある?」

百合香「ないよ。普段こんなの食べないし」

真弓「ほんと、なんで買ったんだよ」

百合香「わかんない」

真弓「焼きそば衝動買いするのやめなよ」

百合香「衝動買い?ああ、そっか。確かに衝動買いだね」

真弓「できた?」

百合香「うん」

お湯を切ったカップ焼きそばの蓋を開ける百合香。

百合香「えー、こんな多いの?」

真弓「これヤバいね」

二人でリビングに戻る二人。
湯切りしたカップ焼きそばにソースを入れて調理する百合香。

真弓「はい、ゴミ箱」

百合香「ありがと」

真弓「・・・ていうか、今日で焼きそば絶対嫌いになるわ私」

百合香「これ一人で食べる人いるのかな?」

真弓「男の人とか、普通に食べるんじゃない?」

百合香「えー、これ一人はキツくない?私、絶対無理」

真弓「だからなんで買ったんだよ」

百合香「ほんとだよね、いま後悔してる」

真弓「遅いし」

百合香「・・・こんなもんかな?もう大丈夫だよね?」

真弓「いいんじゃないの?」

百合香「じゃあ、いただきます」

真弓「いただきます」

百合香「・・・あ、普通においしいよ」

真弓「ほんとに?」

百合香「おいしいよ。あーん」

真弓「・・・ああ、うん。おいしい」

百合香「でも、あれかなー」

真弓「そうだねー」

真弓&百合香「こんなにいらない」

笑い合いながら楽しそうに焼きそばを食べる二人。

■大学構内・食堂

百合香「食べるの、すごくしんどかったんですよ・・・」

岡田「うんうん。・・・ていうか西さん、なんで買ったの?」

百合香「なんでですかね・・・」

岡田「あれねー、あれは俺でも食べ切るの結構しんどいよ」

百合香「やっぱり、そうなんですか・・・?」

岡田「うん、あれはキツい。でも、なんかいいね。楽しそうでね」

百合香「はい・・・」

岡田「彼氏さん?あ、彼女さんになるの?」

百合香「どっちなんでしょう?考えたことないので・・・」

岡田「黛さん、だっけ?話聞いてると優しそうな感じだね」

百合香「はい、とても・・・」

岡田「モテそうだよねー、黛さん。ねぇ、よかったら今度黛さんも連れて皆で遊びに行かない?」

百合香「まゆちゃんはそういうの好きじゃないので」

岡田「へぇー、そうなんだ。意外」

百合香「それに、私、大学の人・・・苦手で・・・・」

岡田「あー、やっぱりー?うんうん、わかるわかる、そんな気してたよ俺ー」

百合香「私、人見知りで・・・。授業が一緒でも、こうやって誰かと話す機会、全然無いし・・・」

岡田「あー、わかるわかるー。俺それすっげぇわかるよー」

百合香「だから、いつも一人でご飯食べたりしてたんですけど、まゆちゃんが声かけてきてくれて」

岡田「へぇー、そうだったんだ」

百合香「はい。それで、毎日一緒にご飯食べるようになって、一緒に帰るようになったんです」

岡田「はいはいはいはい。それで、黛さんのこと好きになっちゃった的な感じ?」

百合香「はい・・・」

■大学の近辺

真弓「西!待たせてごめん!」

百合香「ううん、そんなことないよ」

真弓「ほんと?」

百合香「ほんとだよ。私も今来たとこ」

百合香の頬にそっと触れる真弓。

百合香「ひゃっ?」

真弓「おい、ちょー冷たいじゃん。外でずっと待ってたの?」

百合香「あ、うん・・・」

真弓「ごめんね・・・」

百合香「ううん、へーきだよ」

真弓「お詫びにコーヒー買ったげる。飲むでしょ?」

百合香「あ、黛さん!」

真弓「なに?」

百合香「私、コーヒーはちょっと・・・」

真弓「じゃあ、どれがいい?」

百合香「私、このレモンティーで」

自販機でレモンティーを購入し、百合香に手渡す真弓。

真弓「はい」

百合香「ありがと」

真弓「明日から食堂で待ってなよ」

百合香「え?うん・・・」

真弓「・・・嫌なの?」

百合香「うん。大学の人、苦手でさ」

真弓「普通に友達作ればいいのに。西は可愛いからすぐ出来るっしょ」

百合香「いや、合わないっていうか、めんどくさい」

真弓「めんどくさいって・・・、私も?」

百合香「いや!黛さんは全然そんなことないよ!」

真弓「知ってる」

百合香「へ?」

真弓「めんどかったら外で何分も待たないっしょ」

百合香「あ、うん・・・」

真弓「あんがとね」

百合香「いや、私こそ」

真弓「なんかさー、気遣うじゃん」

百合香「うん」

真弓「私さ、女子特有の“なんとかちゃ〜ん”みたいな雰囲気ダメなんだよね」

百合香「わかる。めんどくさいよね」

真弓「ほんとにね。ほんとにめんどくさい」

百合香「私、高校の頃の友達がそんな感じで、卒業してから即切っちゃった」

真弓「わかるー、私もLineブロックしたし」

百合香「そうなの?」

真弓「したした」

百合香「私もー。だから大学で同じことになったら嫌だなって思って」

真弓「なるほどね」

百合香「あのさ・・・」

真弓「なに?」

百合香「黛さんって、彼氏いるの?」

真弓「いない」

百合香「好きな人とかは?」

真弓「好きな人ね。そういうのさ、めんどくさいじゃん」

百合香「めんどくさい・・・?」

真弓「そう。好きになったら相手にめんどいって思わせるし、好かれたらこっちがめんどくさくなるじゃん」

百合香「ああ、そうだよね・・・」

しばし無言になりながら歩く二人。

真弓「・・・西ってさぁ」

百合香「なに?」

真弓「私のこと好きでしょ」

百合香「えっ?え?」

真弓「だから、私のこと好きでしょ」

百合香「え、ちょっと、ちょっと待って。えっと、その・・・」

真弓「西はさ。わたしのこと、好きなの?好きじゃないの?」

百合香「えっと・・・」

真弓「ねぇ、どっち・・・?」

百合香「・・・ずるい」

真弓「え?」

百合香「え、なんで・・・いつから?」

真弓「最近。なんとなく・・・」

百合香「あー、もう・・・やだ・・・恥ずかしい・・・・・」

真弓「・・・」

百合香「なんかゴメン。今こういうのめんどくさいって言ってたばかりなのに・・・」

真弓「・・・」

百合香「ごめん、黛さん。迷惑なら明日から私、一人で」

真弓「(遮って)好きだけど」

百合香「え?」

真弓「私も好きだよ、西のこと」

百合香「は?」

真弓「なんだよ、は?って」

百合香「え、ちょっと、ちょっと待って。好きってなに、どういう意味での?ああもう、何言ってんだろ私」

真弓「友達じゃなくて、普通に、そういう意味で好きだけど」

百合香「ほんと?からかってない?」

真弓「ふざけて言わないよこんなの」

百合香「ああ、もう。ほんと恥ずかしい・・・」

真弓「私も、結構恥ずかしい・・・、こういうのはじめてだけど、結構恥ずかしいね」

百合香「うん・・・」

真弓「手」

百合香の手を取り、歩き出す真弓。

真弓「帰ろ」

百合香「うん」

真弓「でもさ。こうやって手繋いでると、やっぱそういう風に見られるのかな?」

百合香「いい。黛さんとなら全然いい」

真弓「・・・」

百合香「え、どうしたの?」

真弓「はずい」

少し前に出て、真弓の顔を下から覗き込む百合香。

真弓「ちょっと、やめろって・・・」

百合香「はずかしい?」

真弓「・・・だから、やめてよ」

百合香「照れてる?」

真弓「そうだって!」

百合香「やばい、超かわいい」

真弓「やめてよ、見ないでって!」
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■大学構内・食堂

机の上に置いた百合香のスマホが鳴り始める。

百合香「あ・・・」

岡田「あー、もしかして、黛さん?」

百合香「はい・・・。すみません、電話きたので私そろそろ・・・」

岡田「うん」

百合香「今日はすみませんでした・・・」

岡田「全然全然。気にしないでよー。俺の方こそ今日はありがとう」

百合香「あの・・・、今日話したことは・・・」

岡田「大丈夫大丈夫。絶対言わないから!ほんと大丈夫だから!」

百合香「ありがとうございます、それじゃ・・・」

席から立ち上がり、食堂から足早に立ち去っていく百合香。
百合香を横目で見ながら呆ける岡田。
購買のコーヒーを啜りながら、頬杖を突く。

岡田「マジかよ・・・、ああ、もう。西さん、ズーレーとか、マジ最悪だわ・・・、ん?」

百合香が座っていた机に置かれているノートに気付く岡田。
ノートの表紙には百合香の名前が書いてある。

岡田「あ、西さん、ノート忘れてるじゃん」

ふと、百合香のノートを手に取る岡田。

岡田「真面目だなー、授業の内容とかちゃんと取ってるんだ」

百合香のノートを開く岡田。
そこには事細かに真弓との出来事が綴られていた。

百合香N「2月1日、黛さんと代官山でデート」

岡田「ん?これ日記?」

百合香N「黛さんと有名なパンケーキのお店に行った」

岡田「女子力たけー!いいなー!」

百合香N「2月13日、私の家で黛さんと超大盛の焼きそばを食べた」

岡田「マジだったのか、あの話・・・」

百合香N「私は半分も食べれなかった。残りをまゆちゃんが一人で食べた」

岡田「マジなんで買ったんだよ・・・。ん?2月16日・・・、今日じゃん」

百合香N「黛さんと15時半からデート」

岡田「なんだよ、あと30分もあったんじゃねーか」

百合香N「メモ 2月16日 15時にアラームセット」

パラパラと適当にページを捲りながらぼやく岡田。

岡田「はーあ、これノロケ日記かよ。マジやってらんないわ・・・ん?」

捲れたノートの最後のページに書かれた文面を目にする岡田。

岡田「なんだこれ?通称Mちゃんのプロフィール第一稿?
なまえ、まゆずみまゆみ・・・、呼び方はまゆちゃん・・・ん?なんだこれ、なんだよこれ・・・」

ノートを読む岡田の表情が、段々と曇っていく。

百合香N「名前 黛 真弓。呼び方はまゆちゃん。
身長は165から170cm。体重は40代後半から50キロ代前半。
胸のサイズはDカップ。顔は鼻の高い、キリッとした美人。
髪型はベリーショート。性格はサバサバしていて男子が寄り付かないような感じ。
でも、時折、可愛らしい一面を私だけに、ふと見せてくれる。
ある日、一人お弁当を食べていた私に声をかけてきたことが出会いのきっかけ。
私は、彼女の優しくて可愛らしい面に、特別な感情を抱き始める。
それから数カ月後の帰り道、私の気持ちを察していた彼女にからかわれて、
私は彼女へと、自らの想いを伝えることとなり、彼女は、その想いに応えてくれた。
私と付き合い出してからも素っ気ない素振りは健在だが、内心では
まゆちゃんは私のことがとても大好きで大好きで大好きで大好きで大好きで大好きな、設定」

岡田「・・・・・・・設定?じゃあ、黛さんって・・・、西さんの恋人って・・・」

百合香「岡田くん」

背後を振り返る岡田。

END


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