マホウキ
作者:紫檀




かなめ:真島 かなめ(マジマ カナメ)13歳女性。智晴の妹。
智晴:真島 智晴(マジマ トモハル)16歳男性。かなめの兄。
峰:峰 涼太(ミネ リョウタ)20代から30代、男性。病院の先生。
染矢:染矢 しのぶ(ソメヤ シノブ)20歳女性。智晴の先輩。魔法機部部長





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【藤乃宮高校、第三校庭、夜】



智晴:…チェックリスト、オン

智晴:シートよし、ベルトよし、ロックよし

智晴:操縦装置よし、トリム装置よし、切換え弁よし

智晴:クリア…エンジン始動

〈智晴を中心に、風が巻き起こる〉

智晴:エンジン、500回転にセット

智晴:エンジン動作チェック

智晴:回転数よし、空気取り入れよし、吸気混合比よし

智晴:オールクリア、エンジンを1000回転にセット

智晴:フラップ セット、トリム セット、ライト点灯

智晴:酸素壁、緩衝(かんしょう)壁、展開

智晴:エンジンを…1500回転にセット

智晴:(深呼吸)

智晴:真島 智晴!離陸します!





【藤乃宮病院、中庭】



〈ベンチの上で、かなめが本を読んでいる〉

かなめ:……

〈突然、本に挟まれていた栞が本の上で踊りだす〉

智晴:ヤア、ボクは栞(しおり)の妖精、シオリンだヨ!

かなめ:!

〈かなめが振り返ると智晴が立っている〉

智晴:そろそろ寒くなってきたから、ちゃんとコートを羽織ろうネ!風邪をひいちゃうゾ!

かなめ:トモくん!

智晴:よっ、元気してた?





〈遥か上空を飛ぶ飛行機の音〉


かなめ:みてみてトモくん!飛行機雲!

智晴:おおっ、今日のは長いな

かなめ:トージョーシャの魔力がジョーシツだと、雲が長くなるんだよね?

智晴:んー、まあ中の上ってとこかな。俺の方が長い

かなめ:えー、トモくんは飛んだことないくせにー

〈かなめ、はしゃいで走り出す〉

智晴:あ、おい!…ったく、ちゃんと前見ろ!危ないぞ!


智晴M:魔女の家系には、一定の確率で身体の弱い子供が産まれるらしい。生物の授業は嫌いなんで真面目に聞いてないが、レッセー遺伝だとかなんとか、先生が言っていたのは覚えている。


〈かなめ、少し走るが急に膝に手をついて止まる〉

智晴:かなめ…?おい!大丈夫か!

〈慌てて駆け寄る智晴〉

かなめ:(息を切らしている)…うん、大丈夫、ちょっと疲れただけ

智晴:あんまり無理するなよ…ほら、おんぶしてやるよ

かなめ:うん…ありがと


智晴M:うちのかなめが、どうやらそうらしい。両親は二人とも御偉い教授で殆ど日本にいることが無いので、幼いころから大体俺が面倒を見ている。


かなめ:ねえ、トモくん

智晴:なんだい、お姫様

かなめ:(笑って)今回の健康診断はね、結構自信あるんだ

智晴:おお

かなめ:だから、上手くいけば今月中には退院できるかもしれない

智晴:本当か?すごいな

かなめ:だからね…もし退院できたら…

智晴:じゃあ退院できたら、二人で初日の出、見に行くか!

かなめ:(驚いて)本当?

智晴:ああ、久しぶりだろ?年末一緒に過ごせるの

かなめ:約束!約束だよ!

智晴:ああ、約束だ

〈かなめ、嬉しそう〉

智晴:代わりに、今日は沢山遊んだから、帰ったらちゃんと休むこと。それと明日からも、身体の調子が良いからって無理はしないこと

かなめ:えー

智晴:えーじゃありません

かなめ:ハイハイ

智晴:ハイは一回

かなめ:はーい





【藤乃宮高校、魔力飛行部部室】



〈勢いよく部室の扉が開き、恐ろしい剣幕の染矢が入ってくる〉

染矢:真島!真島はいるか!

智晴:はい!真島君は体調不良で早退しました!

〈直後、染矢の投げたペンが智晴の目の前の壁に突き刺さる〉

智晴:―――

染矢:真島、部長室

智晴:はい





〈部長室、書斎机に座る染矢とその前に立たされる智晴〉

染矢:だから一年の飛行は禁止だと、何度も言ってるだろう!

智晴:そんなー!僕が飛行を試みたという証拠でもあるんですかー!

〈智晴の耳元を高速で何かがかすめる〉

染矢:次は当てるぞ

智晴:誠に反省しております

染矢:…しかもだ、飛行訓練機のロックを外すために学校側のセキュリティをハッキングするだと?教師会にバレたらシャレにならんぞ

智晴:いやーまさかこのご時世に、二世代も前の魔術セキュリティを使ってるなんて!ザルにも程がありますよね!はは!

〈今度は逆の耳元を何かがかすめる。断熱圧縮でかなりの熱を感じる〉

染矢:智晴?

智晴:もう二度とやりません

染矢:(溜息)

〈机から立ち上がる染矢〉

染矢:何がお前をそこまで駆り立てる

智晴:………

染矢:何故あと半年が待てない。…なにか理由でもあるのか

智晴:……いえ。



染矢:…そうか

〈染矢、智晴に背を向け、窓の外の空を見る〉

染矢:ペナルティとして、今後一ヵ月間の部室立ち入り禁止と飛行訓練機への接触禁止だ。行け

智晴:……はい、失礼します

〈智晴、一礼をして退室〉

染矢:(溜息)

染矢:…過ぎたる才能、そして……

染矢:病弱な兄弟か…

〈椅子に腰を落とす染矢〉
〈書斎机の上には写真立てが一つ置いてある〉
〈中の写真に写っているのは、染矢と、隣に立つもう一人の男性〉

染矢:似ているな、貴様に





【藤乃宮病院、一階ロビー】



智晴:はぁー、あっつ…暖房効きすぎだろ…

〈ロビーに並ぶ腰掛けの上で、智晴が暑さにだれている〉

智晴:……降ってんなぁ…

〈ガラス張りの壁を見ると、いくつもの水滴が流れている〉

智晴:くっそ……あの先生まだかよ…暑さで溶けちまうぞ…

〈突然、一人の男性が智晴の隣に座る〉

峰:やあこんにちは。キミが真島 智晴くんで合ってる?

智晴:……え?

峰:(笑顔)

智晴:……おっさん誰…?





智晴:へー、担当の先生変わったんですね。えっと…

峰:峰!峰 涼太だよ!まあ正確には島田先生が学会で出張してる間の、臨時の担当だけどね。年度が変わるまでの付き合いだね!

智晴:こんなテンションの高いおっさんに…

峰:コラそこ!よりにもよって…みたいな顔をしない!それと、僕はおっさんじゃなくておにいさんだ

智晴:さいですか…

峰:それにねキミィ、僕はこの道では割と名の知れた専門医でね。安心したまえ、キミの妹さんは、必ず僕が直して見せる!

智晴:はあ

峰:さてはキミ、信用していないな?

智晴:いやー、峰先生…なんか胡散臭いというか…

峰:なんてことを言うんだキミ!

智晴:あーそれで、話って何ですか?早くかなめの面会に行きたいんですけど

峰:…あー、うん…そうだね

〈峰、急に真面目な表情になる〉

峰:君には話しておいた方がいいと思ってね…

智晴:……

峰:本当はね…君みたいな子供に話すような事じゃないんだけどさ。でもほら、ご両親は日本にいないっていうから――

智晴:ホント、無責任な親ですよね

峰:………

智晴:いいですよ、話してください。もう“慣れっこ”ですから



峰:…“彼女”もそう言っていた

〈峰、智晴の頭を掴み乱暴に撫でる〉

智晴:ちょっ…やめてくださいよ!ガキじゃないんですから

峰:いいやクソガキだよキミは

智晴:っ……!

峰:我慢することに…慣れちゃいけないよ





【藤乃宮病院、かなめの病室】



かなめ:……

〈ドアが開き、智晴が入ってくる〉

かなめ:あ…トモくん

智晴:かなめ……



智晴:なあ、かなめ。その――

かなめ:(遮って)大丈夫だよ!

智晴:……

かなめ:心配しなくてもいいよ。私は大丈夫、大丈夫だから



かなめ:ただ……今年の退院は無理みたい。ごめんね

智晴:いや…かなめが謝ることじゃ…

かなめ:峰先生ね!とっても良い先生なの!

智晴:……

かなめ:話も沢山聞いてくれてね、大丈夫だって、キミみたいな子を何人も治してきたって、絶対にキミも治してみせる、春までに治してみせるって…!一年遅れになっちゃったけど!絶対にまた学校に通えるようにしてみせるって…言ってくれて…

智晴:……

かなめ:来年は!皆勤賞目指そうねって!言ってぐれで…

智晴:……

かなめ:だから…どうか…今年のお正月は病院で越してくれって…頼まれたの…

智晴:……ああ…



智晴:先生が…正しいと思う…

かなめ:………うん…

〈智晴、ベッドに座ってかなめの頭を撫でる〉

智晴:もうちょっと我慢すれば退院できるってことだろ?ならもうちょっと頑張ろうぜ!これまで散々我慢させられて来たんだから、これくらいどうって事ないだろ?かなめなら大丈夫だよ

かなめ:………く…

智晴:え?



かなめ:……約束…守れなくて………ごめんなさい…

智晴:……へ?

かなめ:初日の出…見に行けない

智晴:ああ!いいよ別にそんなこと!…ほら、俺は適当に友達捕まえて見に行くからさ、大丈夫だって!今はかなめの身体の方が大事だから、な?



かなめ:………なことじゃない……

智晴:かなめ…?

かなめ:そんなことじゃないよ…っ!!!

智晴:っ!?

〈かなめ、大泣きする〉

智晴:えっ、おい、かなめ

かなめ:トモくんのバカ!うそつき!アンポンタン!

智晴:アンポン…!?

かなめ:トモくんなんて大っ嫌い!

智晴:ちょ、かなめ、落ち着けって、ちょ魔力!魔力強い!魔女の才能溢れ出てる!

かなめ:もう!お見舞いなんか!来ないでぇぇえ!!

智晴:か!かなめぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!!??!?





智晴:……

〈智晴、病院の入り口で呆然と立ちすくんでいる〉

峰:あちゃー、締め出されちゃった?

智晴:わかりますか

峰:うーん…相当強い言霊(げんれい)がかかってるね。ここに立ってるのも辛いと思うんだけど…

智晴:あたまが真っ白です

峰:それは別の要因かな

智晴:……かなめ………

峰:今日はもう、帰ったら…?

智晴:みねせんせい

〈智晴、首だけ峰の方を向く〉

峰:ひっ!?僕のことを恨まないでくれよ!さっきも言ったけど、かなめちゃんは本当に今は無理をしちゃいけない状態で――

〈智晴が深々と頭を下げている。峰は驚いて話を切る〉

峰:智晴くん…

智晴:かなめを…どうかよろしくお願い致します…



峰:……うん、任しといて…

智晴:……!

〈智晴、走ってその場を去る。それを見送る峰〉

峰:(溜息)綺麗な星空だねぇ…





【藤川、河川敷】



〈智晴、息を切らして土手をフラフラと歩いている〉

智晴:チクショウ……バカヤロウ……アンポンタン……

智晴:っ…!

〈転がっていた石に躓き、土手を転がり落ちる智晴〉

智晴:……いってぇ……

〈雨がやんで、まだ濡れている地面。智晴の目から、涙があふれる〉

智晴:……クソ…!クソ!クソ!クソったれ…っ!!

智晴:あのクソ親がぁぁぁあ!!

智晴:…うっ……ぐ…えぐっ………

智晴:この…クソ兄貴が……!

〈かなめに言った言葉が、ふと頭の中を流れる〉

智晴:大丈夫…?かなめなら大丈夫!?

智晴:…………女の子だぞ……っ!!

〈智晴、夜空に向かって吠える〉

智晴:十三歳の!!!女のガキだぞ!!!!!

智晴:大丈夫なわけあるか馬鹿野郎ぉぉぉぉぉおおお!!!!!!!!!!

智晴:うっ…………ぐっ………

智晴:………………俺だって…………

智晴:…俺だって……十六のガキだよ

染矢:そうだな

智晴:っ…!?

染矢:その通りだ

〈気づくと、土手に転がる智晴の横に染矢が座っている〉

智晴:ぶ、部長!?なんでこんなところに!

染矢:こんなところとは何だ。人の家の前で騒ぎおって

智晴:えっ…

〈驚いて見ると、染矢は殆ど寝間着姿であることがわかる〉

智晴:そうだったんですか…すいません

染矢:…ったく、またその顔だ

〈染矢、無理やり智晴を引っ張り、抱き寄せる〉

智晴:なっ…部長…!?何を…!

染矢:ムカつくんだよ、物わかりの良いガキは

智晴:部長…!何言ってっ…

染矢:甘え方も知らないガキが…頼り方も知らないガキが…!

〈染矢、智晴を強く抱きしめる〉

染矢:よくぞここまでっ…一人で頑張ったっ!!!

智晴:なんだよ……クソっ…!あったけぇんだよちくしょおぉ!!

〈智晴、染矢の胸の中で泣きじゃくる〉

染矢:いいんだ…あったかくて、いいんだ…

〈智晴の子供のような鳴き声が、夜の河川敷に響いていた〉





智晴:くっそ!恥ずかしい!

染矢:はっはっは、なかなか可愛かったぞ

智晴:ひっ…!

染矢:何を引いている…後輩として、だからな

智晴:はい、勿論です

染矢:まあしかし、スッキリした顔になって良かったよクソガキくん

智晴:トモハルです!というかクソガキクソガキって、考えてみれば部長だって十八歳のガキじゃないですか

染矢:何を言っている。私はハタチだぞ

智晴:ええっ!!?

染矢:(笑って)こう見えて、“出来”が悪くてな

智晴:部長…今めっちゃカッコ悪いっす

〈染矢、立ち上がる〉

染矢:さて、それで…どうするんだ?クソアニキくん

智晴:トモハルです!どうするって何を…

染矢:妹さんと見に行くんだろ?初日の出

智晴:それが無理だから今までグチャグチャに泣いてたんですよ!来年の春まで、妹は病院の敷地から出られないんです!

染矢:別に出なければいいだろう

智晴:は?まあ病院で一緒に日の出を見るくらいはできますけど…

染矢:そんな風情もへったくれもない初日の出があるか

智晴:はぁ!?じゃあどうすりゃいいんですか意味わかんないですよ――

染矢:(遮って)こっちだ

〈染矢、人差し指で上を指す〉

智晴:なに…?上?

染矢:高度4万メートル

智晴:へ…?

染矢:そこまで行けば、日本で一番早い日の出が見られるぞ

智晴:部長…

染矢:なんだ

智晴:正気ですか…?

〈染矢、拳を智晴の頭に振り下ろす〉

智晴:いっづぅッ!!!

染矢:ついてこい、トモハル

智晴:…?





【染矢宅、地下倉庫】



智晴:部長ぉ…なんなんですか一体…

染矢:これだ

〈染矢、倉庫の明かりをつける〉

智晴:!?…なんだ…これ…!

智晴M:突如として目の前に現れたのは、目を見張る究極の曲線美、よく手入れされた一つ一つのパーツが醸し出す重厚感、眩いばかりに輝く白銀の金属光沢、その全てをまとった、一機の機械(とり)だった

智晴:すごい……こんなの、見たことない

染矢:兄が一人いてな

〈染矢、機械に歩み寄り、柔らかい手つきでそっと撫でる〉

染矢:気に食わん男だったが、コイツを置いていったことに関してだけは感謝しているよ

〈染矢、智晴に向き直る〉

染矢:コイツで飛べ、トモハル

智晴:…部長?

染矢:飛行(フライト)予定時刻は1月1日午前5時。一時間で高度4万メートルまで、お前と、妹と、コイツの三人で駆け上がり、6時9分、日本の最も東、南鳥島(みなみとりしま)と同時刻に初日の出を迎える。

智晴:部長!?

染矢:簡単に、とは行かないが、期限まではまだ一か月。駄目かも知れんがやってみる価値はある。どうだ?

智晴:あの!展開が早すぎて全然ついていけません!

染矢:飛びたいか!飛びたくないか!

智晴:……ッ!!

染矢:どっちだ



智晴:飛びたいです!!!

染矢:よく言った!すぐに準備に取り掛かるぞ。まずは器機の調整からだ。その後は、毎日死ぬまでしごき倒してやるから覚悟しろ。…だがその前に、その泥だらけの服を着替えてこい

智晴:あの!でもやっぱり待った!

染矢:なんだまだ何かあるのか?コイツは余裕で音速を飛び越えるバケモノだ、空中で待ってはくれんぞ

智晴:(遮って)あの!俺、飛行訓練機には春まで触れないはずなんですけど!

染矢:あん?なんだそれは

智晴:部長がクソ強い言霊(げんれい)掛けてたじゃないですか!自分でも解除できないくらいの!



染矢:(声をたてて笑う)

智晴:ちょ、なに笑って――

智晴M:次の瞬間部長は、ニヤリと口角を上げて言った

染矢:馬鹿にしてくれるなよクソガキ、コイツは“飛行訓練機”なんかじゃあない

智晴M:俺の見た先輩至上、最もワルくて、カッコいい表情だった

染矢:ライトノア社製:魔力機関搭載型 航空法儀式 三次元立体機動戦闘機、通称『ライトノア1号』


染矢:正真正銘の、『魔法機(マホウキ)』だ





【1月1日午前4時50分、藤乃宮病院、かなめの病室】



〈かなめ、幼少期の夢を見ている〉

かなめ:トモくん…トモくん…

智晴(少):かなめは皆と一緒に外で遊べなくて、寂しい?

かなめ(幼):ううん、トモくんがいつも一緒にいてくれるから、寂しくない

智晴(少):ホントに?にいちゃんが学校に行ってるときは?

かなめ(幼):うん、トモくんが学校行ってる間も、ちゃんと一人でお留守番できてるよ!

智晴(少):そっか、えらいな!かなめは

かなめ(幼):うん!

かなめ:トモくん…

智晴(少):かなめ、入院は寂しくないか?

かなめ(幼):トモくんが毎日お見舞いに来てくれるから、寂しくないよ

智晴(少):そっか、強いな、かなめは

かなめ(幼):だから、かなめは大丈夫だよ

智晴:かなめ…!

かなめ:トモ…くん…

智晴:かなめー!

かなめ:トモくん……?

智晴:起きろー!かなめー!

〈かなめ、目を覚ます〉
〈すると、窓の向こうに智晴の姿が見える〉

かなめ:……ふぇ…?トモくん!?

智晴:シーッ!静かに!

かなめ:何してるの!ここ4階だよ!?

智晴:あ、うん、その、色々あってさ、飛んでる

かなめ:えぇ!?

〈驚いて身を起こしてよく見ると確かに智晴は銀色の機体に乗って浮いている〉

かなめ:い、いろいろって…というか私の言霊は!?

智晴:これお見舞いじゃないからセーフで!細かい事は後で話すからとりあえず屋上に来て!

かなめ:屋上って…!とりあえず峰先生に許可を…

智晴:あー!いやそれは!

〈病室の入り口が開き、寝間着姿で半分寝ぼけた峰が現れる〉

峰:(あくび)かなめちゃんどうしたのこんな時間に…ってちょ――

染矢:セイッ!

峰:ヴッ!

〈染矢の手刀、倒れる峰〉

染矢:久々で悪いが、もう少し眠っていてくれ

智晴:……

かなめ:……

〈顔を見合わせる兄妹〉

智晴:………許可は今取ったみたい





【藤乃宮病院、屋上】



智晴:よし!シートベルトは締めたな?しっかりつかまってろよ!

かなめ:トモくん!何するつもりなの!?

智晴:初日の出を見に行く、約束だったろ?

かなめ:…っ!そんな…見に“行く”って、敷地からは出られないんだよ!?

〈智晴、人差し指で空を指す〉

智晴:上だ

かなめ:うえ!?

智晴:高度400万メートル!そこまで行けばなんか最高の日の出が見れる!らしい!

かなめ:らしいって、大丈夫なの!?

智晴:大丈夫!このライジング1号は余裕で光速を飛び越えるマシンだ!

かなめ:本当に大丈夫なの!!?


【かなめの病室】

染矢:(くしゃみ)

峰:どうしたの?風邪?

〈峰はロープでグルグル巻きに縛られている〉

染矢:いや、なんだか微妙に違う受け売りをされてる気がしてな…

〈染矢、鼻をすする〉

峰:ハァー、それにしても

〈峰、巻かれたまま地面に転がる〉

峰:兄弟の絆のために病院に殴り込みとは…それにあんなオーパーツまで持ち出して

染矢:……

峰:見違えたね、しのぶ

染矢:………気安く名前で呼ぶんじゃねえよ、クソアニキ


【再び屋上】

智晴:離陸前チェックリスト!何だかんだでオールクリア!!

かなめ:トモくんそれ多分省いちゃいけないやつ!

智晴:心配はいらない!にいちゃんは今日まで毎日、死ぬような鍛錬を重ねてきた!

かなめ:お…にいちゃん…

智晴:そして最終的に分かったことが一つ!!

かなめ:おにいちゃん…!

智晴:空を飛ぶ時は!気合いがあればそれでいい!

かなめ:おにいちゃぁぁあん!!?


【病室】

染矢:ほら、ちゃんと見ておけよ

〈染矢、巻き峰を脇にかかえて、窓から屋上を見ている〉

染矢:3年前に私が見せたのより、凄いぞ


【屋上】

智晴:かなめ!!!最後に一つだけ聞く!!

かなめ:……!

智晴:飛びたいか!飛びたくないか!

智晴:どっちだ!!!!!





静寂





かなめ:飛びたいよ!!!!!!










峰M:耳をつんざく轟音、眼を覆う閃光……そして後に続く静寂

峰M:やっとの思いで眼を開いた僕たちが目にしたのは

峰M:まるで昼間のように明るくなった空と

峰M:その空のはるか彼方まで貫く、一筋の魔法機雲だった



























【どこかの国の、どこかの街の、どこかの病院】



少女:……

峰:やあお嬢ちゃん、初めまして!僕は峰!今日からキミの主治医になる、峰 涼太っていうんだ!

少女:……

峰:よく胡散臭いといわれるけど、安心してくれていい!こう見えても腕は確かでね!



峰:キミみたいな女の子が、元気に空を飛び回れるようになるところ

少女:!

峰:何度も見てるんだ








Fin




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