ラバーズケース@
キスレモネード事件簿
作者:ススキドミノ


ミッチ:円山 路子(まるやま みちこ)二十一歳。女子大生。
ピカ君:阿光 一郎(あこう いちろう)二十五歳。事故により入院中。





※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)




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 <病院の個室・ベッドに座って本を読んでいるピカ君>
 <ベッドの隣で、ミッチは身を乗り出している>


ミッチ:事件が起きたのは昨晩深夜一時十六分頃。
    私はお風呂あがりにアイスを食べようか悩んでいた。
    生来自分へのご褒美がなければ何事も頑張れない私だ。
    大学へ提出するレポートを終わらせる自分へのご褒美として、通常のアイスの二倍の値段にして内容量は通常のものよりもかなり少ないという――いわゆる高級志向のアイスを買い貯めておいた。
    ちなみにこれはかなり痛い出費であり、今月半ばから学食での食事を諦め、毎朝ささやかな弁当を用意して持参しているのはこのためである。
    話を戻そう。レポートが進んだ際のご褒美としてアイスを用意していたが、その日の私はめちゃくちゃ疲れていた。
    梅雨も明けて外は暑いし、講堂は省エネだかなんだかでクーラーの設定高いし、四十分かかる通学電車は行きも帰りも座れないし、新商品のスムージーの味もいまいちだったし、とにかくめちゃくちゃに疲れていた。
    暑い中で頑張ってもいた。すごく頑張っていたのだーー

ピカ君:……ええと。ミチコ――

ミッチ:ピカ君……。私のことはミッチって呼んでって言ってるよね! 可愛くなさすぎて精神が拒否るの! ミチコって響きが致命傷なの!

ピカ君:そう言うけど……僕の名前は阿光一郎だし、君が阿光か、一郎を選ばない以上、君の要求だけ飲むのはどうかと思うんだけど。
    それに……ピカ君はどこから――

ミッチ:光って文字が入ってるから、ピカ君。だって可愛くないじゃん! 響きが。

ピカ君:冗談みたいな会話だ……人の名前が可愛い必要がどこにあるのかな……。

ミッチ:あるに決まってるじゃん! どうせなら可愛い名前を口に出したいでしょう?

ピカ君:それで、君は結局何が言いたいわけ。

ミッチ:だからぁ! 事件なんだよ!

ピカ君:(ニヤついて)事件……? 女子大生の脳内ブログじゃなくて?

ミッチ:(笑って)もう! 違うよ! もう……忘れちゃうから途中で止めないでくんないかな!
    で、続きね。とにかく頑張った私は、冷凍庫のアイスを見て、悩んだ。
    まだレポートはできていないんだから、食べるわけにはいかない……!
    でも……! 私は葛藤した!
    そして気がついたら……! これは本当に記憶はないんだけど……!
    アイスを口に運んでいたんだよ!

ピカ君:見事に誘惑に負けてるね……。

ミッチ:アイスは罪悪感も相まってとても美味しかった……!

ピカ君:罪の意識は感じていたわけだ。確信犯だな、これ。

ミッチ:でね! その時、事件は起こった。
    私の携帯がなると、友人のA子から連絡が来ていたわけ。

ピカ君:友人……ああ、アスミさん。

ミッチ:……A子!

ピカ君:いや、今までの君の話を振り返ると、Aのつく友達は――まあいいか。
    ……A子さんがなんだって?

ミッチ:もう! ……で、その連絡っていうのがね。
    『急にキスされた』って!

 間

ピカ君:で、何。

ミッチ:事件だよ! 事件以外の何ものでもないじゃん!

ピカ君:(ため息)……真意は?

ミッチ:だって……ピカ君こういう話してもぜんっぜん聞いてくれないじゃん。

ピカ君:そうじゃなくて、それで僕にどうして欲しいわけ?

ミッチ:……え? 何が?

ピカ君:わかった……そういうことか……。

 間

ピカ君:悪かったよ。

ミッチ:んー? 何がぁ?

ピカ君:僕は確かに、君の話をあまり聞いていないときがあるかもしれない。

ミッチ:……そうだよ! いつもミッチを放っておいてさっ!

ピカ君:でもね……毎回毎回、人が本を読んでいる時を狙って声をかけてくることはないんじゃないか。
    それも、丁度集中してきた頃を狙ってるように感じる。

ミッチ:わかってないなぁ、逆だよ逆……。

ピカ君:逆?

ミッチ:ピカ君ってさ、本読むの大好きだよねぇ。

ピカ君:まあ、見ての通り。

ミッチ:つまりそれ! ピカ君が本を読むのが好きだってことが重要なの!

ピカ君:……どういうこと?

ミッチ:百歩譲ってだよ!? ピカ君にとって、ミッチの話を聞くよりも、本を読むほうが好きなことだとする。

ピカ君:まあ、否定はしないかな。

ミッチ:でしょ!? だから、私は本を読んでいるピカ君に話しかけるの!

ピカ君:どういう思考を辿るとそうなるのか、詳しく説明してもらってもいい。

ミッチ:だから! ミッチは、ピカ君の一番になりたいから。

 間

ピカ君:……で、僕の好きなことを邪魔する、と?

ミッチ:まあ、そんな感じ?

ピカ君:迷惑なことを考えたものだね……。

ミッチ:でも、作戦は上々だよ! 実際ピカ君は、本を閉じたもん!

ピカ君:優先順位ってやつだよ。本は一人でも読めるけど、君と会話をするのは今しか出来ないことだから。

ミッチ:つまり、今はピカ君にとってミッチが一番ってことだ。

ピカ君:事実、そうなる。

ミッチ:やったー!

ピカ君:……それで、アスミさんがどうしたって?

ミッチ:ん? あ、A子ね! あくまで仮名だから、A子!

ピカ君:……A子さんがキスをされたんだよね?

ミッチ:うん。そうなんだって。

ピカ君:それのなにがどう事件なの。

ミッチ:実はね。A子って、今教育実習生としてとある高校に赴任してるんだけど……。
    そこの生徒の男の子がね、急にキスしてきたんだって!

ピカ君:生徒が……? それはなんていうか……漫画みたいな話だ。

ミッチ:そうそう! まるで少女漫画みたいでしょ!?
    もう私もドキドキしちゃってさ!

ピカ君:アスミさんの専攻は確か、美術だったっけ。

ミッチ:うん、そうだよ。前に話したっけ?

ピカ君:(吹き出して)認めちゃうんだ……。仮名にするのかどうか、はっきりしてくれない?

ミッチ:え? ああいや! うん! 当たりだよ! あくまでA子、だけどね!

ピカ君:……そのA子さんは、美人なの。

ミッチ:そりゃあね! 美人だよ! 女の私から見ても、綺麗だし、こう……色気があって。

ピカ君:なるほど。

ミッチ:でもさぁ! 急にキスだってよ! キス! そんなの考えられないよ。
    その子にとっては初めてのキスだったりして! きゃー!

ピカ君:どうだろう、初めてではないんじゃないかな。

ミッチ:どうして?

ピカ君:年上の教育実習生にいきなりキスするだなんて、女の子慣れしてるように思える。

ミッチ:どうかなぁ……勇気を出したのかもしれないよぉ?
    んー……でも、どっちにしても燃えるシチュではあるよね! うん、有り!

ピカ君:そういう問題?

ミッチ:ねえねえ、ピカ君の初キッスってどうだったの?

ピカ君:え?

ミッチ:いつ? どこで? どんな味がした?

ピカ君:なんでそんなことを――

ミッチ:いいじゃん! 教えてよー!

ピカ君:……中学校の頃。校舎裏。

ミッチ:きゃー! 進んでるぅー! 学校の女子とだ!

ピカ君:ああ。僕はバスケ部で、女(じょ)バスの部員の子とね。

ミッチ:味は!?

ピカ君:味? ……味なんて――いや、したな。レモネードの味。

ミッチ:レモネード?

ピカ君:ああ。その子が飲んでたんだ。

ミッチ:青春の味だ……! これは事件の香り!

ピカ君:人の思い出を事件にしないでくれ……。
    それで、君は?

ミッチ:ん? 内緒。

ピカ君:人には言わせてそれか……。

ミッチ:女の子だもん! 当然のことです。

ピカ君:話がそれたね……A子さんから君に送られてきたメールは?

ミッチ:メール?

ピカ君:読んでみてくれるかな。全部じゃなくてもいいから。

ミッチ:うん。いいよー。


 ◇


 <メールを読み終わったミッチは携帯をしまう>

ミッチ:って感じのメールだったんだけど。

ピカ君:……なるほど。

ミッチ:どうどう? ドキドキしない!?

ピカ君:いや、どうだろう。

ミッチ:どういうこと?

ピカ君:僕は少し、そのA子さんが心配になったかな。

ミッチ:どうして?

ピカ君:文面にかかれていることがどれくらい真実かどうかはおいておいて……。
    彼女にキスしたという美術部の男子生徒のことを、A子さんは……からかっているように感じる。

ミッチ:からかってる……か。まあ、そうかもしれないね。

ピカ君:だとすると、彼女は少し浮わついているようだ。
    年頃の――自分よりも少し年下の男。
    彼からすると相手は年上で、それも美人の教育実習生……。
    なんだって彼女の思うがままになってしまうかもしれない。

ミッチ:ふうん……そういうものなの?

ピカ君:僕も男子高校生だった経験はあるからね。

ミッチ:ピカ君も……そうだった?
    美人の教育実習生の人とか、こう……。

ピカ君:気になる?

ミッチ:……まあ。

ピカ君:まあ、意識はするよ。
    でも、それだけで好きになったりするわけではないかな。
    僕には当時、彼女がいたのもあるしね。

ミッチ:(微笑んで)……そっか。

 間

ピカ君:君は?

ミッチ:え?

ピカ君:君はどう思った? その、A子さんのメール。

ミッチ:私は……なんていうかなぁ。素敵だなって思ったよ。

ピカ君:それはどうして。

ミッチ:どうしてって……別に理由があるわけじゃないけど。
    女の子だもん。憧れってわけでもないけどさ、ちょっとドキドキするよね!
    そういうの!

ピカ君:そういうものなんだ。

ミッチ:それに、A子も嫌がってる感じじゃないし、でしょ?

ピカ君:そうだね。だから心配にもなったんだけど。

ミッチ:だったら、いいことかもって。思った。

ピカ君:でも、君とっては事件だった。だよね。

ミッチ:うん! だって高校生だよ!?
    それに、話を聞く限りかなりカッコいいみたいだし!
    それってすごいことだよね!

ピカ君:何がすごいのかはおいておいて……。
    彼女がまんざらでも無いのなら、僕はそれもアリだとは思うかな。

ミッチ:だよねー! すごいよ! うん!

ピカ君:ただし。……彼にとってそれが辛い経験にならなければ、だけどね。
    彼女にとっては良いガス抜きかもしれない。
    年下のイケメン高校生と、一時の刺激的な関係。
    でも……それがそのまま続いていくわけではないだろうから。
    いつか彼がそれに気づいた時、心に傷が残らないかどうかは――って、考えすぎかな。

ミッチ:……ううん。そうだね。

ピカ君:……彼女を悪く言うつもりはないんだ。
    気を悪くさせたなら――

ミッチ:そんなことはないよ。でも……なんていうかな。
    ……いや、そうだなって……。

 <ミッチはベッドの脇に肘をかける>

ミッチ:そっかぁ……まあ確かに、ドキドキワクワクしてるだけでもいられないのかなぁ。

ピカ君:……あのさ。

ミッチ:何? ピカ君。

ピカ君:時間。

ミッチ:へ? ああ! もうこんな時間か! 相変わらず面会時間短いなぁ……。

ピカ君:早めに帰ったほうがいい。杉田さんは結構口うるさいから。

ミッチ:あの看護婦さん、ちょっと怖いよね……。

ピカ君:いい人なんだけど、少しね。

ミッチ:じゃあ、今日は帰る!

ピカ君:うん。

ミッチ:あ! そうだピカ君! 次来る時、何か欲しいものはある?

ピカ君:また来るのは確定なんだ。

ミッチ:当然! で、何かあるかな。

ピカ君:じゃあ……そうだな。お言葉に甘えて――菊間周星(きくましゅうせい)の新刊を頼んでもいいかな。

ミッチ:うん。わかった!

ピカ君:『抗生(こうせい)』っていうタイトルのミステリー小説。

ミッチ:それだけでいいの? 他にはない?

ピカ君:あとはそうだな……A子さんについて、進展があったら教えてほしいな。

ミッチ:え? ……なあんだ! 気になってるんじゃんか! ピカ君も!

ピカ君:……そりゃあね。話としては、気になるよ。

ミッチ:わかった! 次は……えっと、いつこれるかな……。

ピカ君:いつもどおり、突然でいいよ。

ミッチ:……うん、わかった。じゃあね、ピカ君。

ピカ君:うん。帰り道には、気をつけて。


 ◆


 <数日後の病室・本を読んでいるピカ君と、それをじっと見つめているミッチ>
 <本をめくる音だけが室内に聴こえている>

ミッチ:……ねえねえ。

 間

ピカ君:……何?

 間

ミッチ:面白い? 新刊。

ピカ君:うん……まあね。

ミッチ:本当に本当?

ピカ君:……どうしてそんなことを?

ミッチ:んー、だって、結構反応してくれるから。

ピカ君:(本を閉じて)……なんて?

ミッチ:だからぁ、いつもはこの程度じゃ反応してくれないもん。
    そんなに入り込めてないのかなーって。

ピカ君:……そんなことないけど……。そうやってじっと見られてたら集中できないだろ?

ミッチ:ううん。いつもはもっとぐぐぐーって感じだもん!

ピカ君:ぐぐぐーね……。ねえ、君も読んだ? 『抗生(こうせい)』。

ミッチ:うん、読んだよ!

ピカ君:……え? 本当に?

ミッチ:なによう、聞いておいて……。
    だって、ミッチはピカ君がどんな本読んでるのか気になるもん!
    ピカ君が持ってきて―って頼んでる本はぜーんぶ読んでから持ってきてるよ。

ピカ君:本当に……? え? 全部って、全部?

ミッチ:うん。

ピカ君:君は……変な人だ。本当。

ミッチ:それで? どう。面白くない?

ピカ君:いや……面白くないわけではないんだけど。
    少しね……。

ミッチ:事件だ! 事件の匂い……!

ピカ君:事件か……。どうかな。
    菊間周星特有の語彙だったり、表現だったりは鉄板なんだ。
    面白いし、引き込まれる――でも、人物像がなんだか……らしくない気がするというか。

ミッチ:どういう風に?

ピカ君:菊間周星の作品の登場人物の考え方っていうのは……今までの本は、もっとクールで、合理的だった気がするんだよ。

ミッチ:んー。そこまではわからないけど……確かに、今までとはちょっと違うかなぁ。

ピカ君:行動理由に潔さがないんだ。人間の葛藤みたいなものが前に出過ぎていて……話に入り込む前に少し……躊躇してしまう。

ミッチ:そうなんだね。ミッチは好きだったよ! この小説。

ピカ君:うん。面白いのは面白いから……好みの問題かもしれないな。

ミッチ:乃木検死官が死体を前にして泣き崩れるところとか! ミッチも泣いちゃったよ!

ピカ君:……そこ、まだ読んでない。

ミッチ:うえ……! ごめん……!

ピカ君:いや、いいよ。気にしなくて。

 <ピカ君は小説をベッドの脇に置く>

ピカ君:(ため息)……しばらくは、読まなくて良いかな。

ミッチ:あ! じゃあ、ミッチのターンってこと?

ピカ君:うん。君のターンだ。

ミッチ:ねえねえ! A子の話の続き! 興味あるって言ってたよね!

ピカ君:ああ。進展あったんだ?

ミッチ:そう! そうなんだよ……! 思ったよりも大変なことになっちゃったんだ……。

ピカ君:……聞かせてもらえるかな。

ミッチ:実はね――


 ◇


ピカ君:……諦めさせるために?

ミッチ:そう。美術に集中して欲しいって伝えたんだって。
    そうしたら彼は、学校に来なくなって。

ピカ君:そうか……。

ミッチ:でもね、なんだかA子も悲しそうだった。

ピカ君:それは――そうだな……。どう思っているのかは知らないけど……なるようになったように思うよ。
    遅かれ早かれこうなるのは、A子さんもわかっていたはずだ。
    それでも、彼がそうなってしまったのは、彼女自身が選択した結果だと思うし。

ミッチ:それは……そうかもしれないけどさ。

 間

ミッチ:でも、そういうものじゃない?

ピカ君:そういうもの?

ミッチ:だってさ……。誰だって、今を生きてるじゃない?
    今生きてたら、先のことなんて見えなくなるものじゃないのかな。
    特にそれがその……恋、だったらさ。

ピカ君:……それは、A子さんがその高校生に恋をしていたってこと?

ミッチ:それはわからないけど。でも……後先考えてたら、恋なんてできない。でしょ?

 間

ピカ君:……わからない。

ミッチ:ピカ君……。

ピカ君:それは誰だってそうさ。誰だって、今自分の目の前にある感情に身を任せたいに決まってる。
    誰かを好きになったら、それ以外のことは考えられなくなる。
    幸せで、満たされていて、いつだって今が一番心地よくて……。
    でも、その時は良くても――もしそれを失ったとき、どうすればいいのかわからなくなって……。

 間

ミッチ:ピカ君。なんか、ごめん。

ピカ君:いや……僕の方こそごめん。

ミッチ:ううん! ピカ君は悪くないよ……。

 間

ピカ君:君の言うことは、わかるよ。

ミッチ:……そう?

ピカ君:僕は――ううん、僕も、少しうらやましい。
    何も考えずに、目の前のことを見られたら、どれだけ幸せだろうって……。

 間

ミッチ:そっか。

 <ミッチは立ち上がる>

ミッチ:じゃあ! ミッチは今日は帰りまーす!

ピカ君:……そうか。帰り、気をつけてね。

ミッチ:うん!

 間

ミッチ:じゃあ、またね。


 <病室を出るミッチ>


ミッチ:あれ……次に持ってくるもの……聞くの忘れちゃった……。

 <ミッチはドアの前で座り込む>

ミッチ:……どうしよう……どうやってくればいいかな……。
    なんか……わかんないね……こういうの……。


 ◆


 <一週間後・ミッチは病室のドアをゆっくり開ける>

ミッチ:こんにちはー! ピカ君――

 <ピカ君は椅子に座っている>

ミッチ:ピカ君!? 座って大丈夫なの!?

ピカ君:ん? ああ、来たんだ。

ミッチ:しんどくない!? 大丈夫!?

ピカ君:うん。実は、一昨日からリハビリが始まったんだ。

ミッチ:リハビリ……?

ピカ君:歩けないのは変わらないよ。でも、普通の生活に戻るためにはやらなきゃいけないことだから。
    とりあえず、椅子へ移動するところからはじめようって。

ミッチ:そっか……。そうだね。普通の生活に、戻らないとだもんね。

ピカ君:……ああ。だから、頑張らなくちゃ。
    このベッドに横たわって、毎日だらだらとミステリーを読んでるわけにもいかないしね。

ミッチ:うん……そうだね。
    ……何か、ミッチに手伝えること、ある?

ピカ君:ううん。大丈夫だ。
    むしろ――君の席を空けるから、少しだけ待っててほしい。

ミッチ:……そっか。

 <ピカ君はゆっくり手をベッドの端にかけると、力を入れる>

ピカ君:ふうー……。んっ!

ミッチ:ピカ君!

ピカ君:大丈夫……! もう少し――

 <ピカ君はもつれるようにベッドに倒れ込む>

ミッチ:ピカ君……! 身体、起こすよ。

ピカ君:……頼むよ。

 <ミッチはピカ君の身体を起こす>

ミッチ:……はい。しんどくない?

ピカ君:ああ。大丈夫。ありがとう。

ミッチ:うん……。

 間

ピカ君:ははは……。

 間

ピカ君:惨めだ。

 間

ピカ君:ごめん。わかってる。僕が言うことじゃない。
    ……わかってるよ。ごめん。

ミッチ:……どうして、そんな風に思うの?

ピカ君:歩けないのはわかっていたけど……頭の中ではわかっていたけどね。
    でも、実際にこうしてみると、自覚する。
    (間)
    あの事故は、本当にあったことなんだって。

 間

ピカ君:ごめん、ミチコさん。

ミッチ:ミッチだよ。

ピカ君:……ごめん。本当に……。

ミッチ:謝りすぎだよ。ピカ君。

ピカ君:いくら謝ったって……足りないじゃないか……。
    僕は、香夜子(かやこ)を――君のお姉さんを、死なせてしまったんだ。

 間

ピカ君:思えば、しっかり話してなかったな。この話も。
    君の優しさに、随分と甘えてしまって……僕は――

ミッチ:男女が広島に車で旅行中。
    大型トラックとの接触事故。
    同乗の女性は死亡。運転をしていた男性は一命を取り留めるも、意識不明の重体。
    トラックの運転手は規定時間を大幅に超えた時間運転をしていたにも関わらず、十分な休養を取っておらず、
    事故の直前、意識は朦朧としており――

 間

ミッチ:ほらね……。どこをどう思い返したって、ピカ君が謝ることじゃない。

ピカ君:……ごめん。

ミッチ:だからぁ! かや姉(ねえ)が死んじゃったのは……事故だったんだよ。
    だからもう、謝らないで。謝られたって、どんな顔していいのか、わからないから。

 間

ピカ君:ああ、そうだね。

ミッチ:わかれば……いいよ。

 間

ミッチ:また、明日。

ピカ君:え?

ミッチ:また明日。くるね。


 <ミッチは病室を出ていく>


ピカ君:……君は……どうして……。


 ◆


 <一週間後・病室の外>

ミッチ:さあ! 最終コーナー! ピカ君選手! 今日の目標まで後少し!

ピカ君:(息切れをしながら)病院の中、なんだから……!
    そんな、声を出さない……!

ミッチ:(小声で)ごめんごめん……! がんばれー、ピカくーん……!

ピカ君:クソッ……! しんどい……!

ミッチ:ほらほらー、もうすぐ病室だよー。

ピカ君:だ、め……ダメだ……! 少し休む――

ミッチ:だぁめ! 看護婦さんに言われてるんだからね。

ピカ君:わかった……!


 ◇


 <ミッチはピカ君を病室のベッドに横たえる>

ピカ君:はあ……はあ……。

ミッチ:今日もお疲れー! さぁさ! お水を飲んで!

ピカ君:すぐは……無理だよ……。

ミッチ:じゃあ、ちょっと休んでから。

ピカ君:スパルタ、だなぁ……。

 間

ミッチ:あ、そういえば結果。もう出たかも。

ピカ君:(水を飲んで)……何の結果?

ミッチ:ちょい待ってね―……あった!
    これ! すごい! 見てみて!

ピカ君:……これ、何だい?

ミッチ:この間発表になった学生美術コンクール!
    県予選で入選してる――これだよ!

ピカ君:森拓巳(もりたくみ)……絵画部門、入選。
    これがいったい?

ミッチ:これ、ほら。A子の教え子。

ピカ君:もしかしてそれって……! あの、キス事件の!?

ミッチ:そう!

ピカ君:そうか……! すごいな! 入選ってことは、全国にいくんだよね。

ミッチ:ここで、事件の続報!
    ……彼、その絵を描いた後、学校に来るようになったんだって。

ピカ君:そうなんだ、それで?

ミッチ:さあ。でも……A子のこと、諦めてないみたい。
    A子も流石にやられたって顔してたよ。

ピカ君:それは確かに……。彼は、最初から諦めてなかったってことかな。
    ……そうか。強い男なんだね、彼。
    勝手に心配していたのが、申し訳なくなる。

ミッチ:それにイケメンなんだってよ? おにーさん。

ピカ君:……僕も、負けていられないな。

ミッチ:んー? そう? 高校生と張り合うんだ。

ピカ君:そういわないでくれよ……。
    それでいうと僕も、君のおかげで色々と……その、覚悟ができたんだ。

ミッチ:……え?

ピカ君:このベッドからでる、覚悟。

 間

ピカ君:あの事故があってから、ずっとこの部屋で寝ていた。
    僕は――ずっとあのときのまま、あの瞬間からここに横たわってた。
    止まったままの時間をずっと……ここで。
    でも君といろんな話をして……。君が、色んな出来事を、『事件だ』なんていいながら僕に持ってきてくれて……。
    そんな、君をワクワクさせるような事件が、日々どこかで起こってるって思ったら……なんていうかさ。
    僕も君の中で、事件を起こしてみたいって思ったりして……。

ミッチ:(小さく呟く)……なにそれ……。

ピカ君:リハビリを頑張ってここを出るところから……止まった人生をやり直したいと思えるようになって――

ミッチ:(小さく呟く)そんなの……いいじゃん……もう……。

ピカ君:急にこんなこと言われても困るかも知れないけど――あれ?

 間

ピカ君:えっと……僕、何か――

ミッチ:ねえ。飲み物、足りてる?

ピカ君:あ、ああ。もう少し飲みたいかな。

ミッチ:じゃあ、飲ませてあげる。

 <ミッチは机の端に置いてあるレモン味のジュースの缶を開ける>

ピカ君:あ、いや……ジュースじゃなくて水で――

ミッチ:黙って。

 <ミッチはレモンジュースを口に含むと、ピカ君の顔に自らの顔を近づける>

ピカ君:え!? ミチ――

 <ミッチはピカ君に口づけをする>
 <口に含んだジュースが口移され、ピカ君の口から溢れていく>

ミッチ:……飲んで……?

ピカ君:(飲み込む)……君は……どうして……。

ミッチ:どう? レモネードの味、した?

ピカ君:いや……なんで、こんな……。

 間

ミッチ:やだ……もう……。

 <ミチコは布団に顔を埋める>

ミッチ:やだ! どうしてこんなことしちゃったんだろう……!
    だって……! だって……だってえ!

 間

ミッチ:私ね……好きなの。ピカ君が……。

ピカ君:……ミチコさん。僕は君の――

ミッチ:わかってるよ!
    かや姉と婚約してた人だもん。知ってるよ……でも、好きになっちゃったんだもん……!

 間

ミッチ:最低なんだ、私……。ねえ……知らないよね?
    私ね、かや姉が死んじゃって、寂しくて、悲しくて……でも、ピカ君が私よりもずっと辛そうにしてたから。
    それで、私、ピカ君に会いに来てたんだよ。

ピカ君:僕が、辛そうだったから……?

ミッチ:自分より辛そうな人をみるとさ! 安心、するんだよ。
    私はまだ大丈夫。この人がいるんだからって。意味わかんないけど、そうなんだもん……!
    私とかや姉は家族で、ずっと一緒に暮らしてきて、それをぽっとでの男が現れて……かや姉連れ出して――なんでそれで!
    なんでそれで……! あんたなんかがそんなに辛そうにしてんのって! 意味わかんなかったけど……!
    けどね……! けど、わかったんだ……。
    一緒にいてね、わかっちゃった……! 人を愛するって、そういうことなんだって……。

 <ミッチは布団にうずくまる>

ミッチ:私がピカ君のこと……好きになって、好きになって……! でもそうなっていく度に!
    ピカ君がかや姉を愛してるんだってことが! わかっていっちゃうんだ!
    だから応援しちゃってんの! だから頑張って欲しくなっちゃうの!
    ピカ君が、かや姉のこと、乗り越えられられたらいいなって! でも、それが……嫌だ……!

ピカ君:……どうして?

ミッチ:だって……! そんなの、決まってるじゃん!
    ……この病室を出たら……もう、バイバイだから……。

 間

ミッチ:ピカ君は……新しい人生を手に入れる。新しい幸せを探しに行く!
    そうしたら、すべてが動き始めてしまう……! 私も、うちの両親や親戚も……きっと……!
    でもそうなったら……! ピカ君とは、バイバイだから……!
    そうなってほしいけど、そうなってほしくないの……。

 <ピカ君はミッチの頭を撫でる>

ミッチ:やめてよ……! 優しくしないで……。

ピカ君:ミチコさん。

 間

ピカ君:君はもう、ここに来なくていい。

ミッチ:……どうして……。

ピカ君:僕なら大丈夫だ。それに、君も新しい人生を生きなきゃいけない、だろ?
    それで僕は――

ミッチ:どうして!

ピカ君:いや、だから……!

 <ミッチは立ち上がってバッグを掴むと、駆け足で病室を出ていく>

ピカ君:ミッチ! 待って――

 <ピカ君は追おうとするが、身体が持ち上がらない>

ピカ君:クソッ! まだ……! 全部言えてないんだ……!
    (足を掴んで)……動けよ……! 動けよ! 動け! 動け!
    うご、けよ……! 後ろめたいとか……! 後悔とかそんなしょうもないもの……もう今は関係ないだろ!
    だから! だから……! 動いて……くれよ……俺!


 ◆


 <ひと月後・ミッチは自分の部屋に電話をしながら帰ってくる>

ミッチ:(ため息をつく)……ただいまー。
     何よう……ため息くらいいいでしょ? そっちと違ってこっちは独り身だしさ。
     寂しい気持ちを吐き出すのは自由でしょーったく。 ……何回聞く? それ……。
     ひと月前に会ったのが最後。うん……そう。……え? そうなの? ……いや、知らない。というか聞いてない……。
     何よ! そこまでいうことないでしょ! ……だぁーもうわかったよう!
     ……聞いてみる。……ん?……アイスは食べてない。
     (微笑んで)うるさいなぁ……切るよ。ほいほーい。じゃあねー。

 <電話を切ってしばらくその場に佇んでいるが、ソファに座ってから電話をかける>

ミッチ:(電話をしている)……あのすみません。お伺いしたいんですけど……。
    そちらの七階に入院していた、阿光一郎さんって、まだ入院してますか?
    はい……わかります、その……教えていただけないというのもわかりますけど……。
    一応その……身内ではないんですが、はい……。入院しているかだけでも……はい。
    そう、ですか……。いえ、こちらこそ申し訳ありません。失礼します。

 <携帯電話を置いてソファに寝転がる>

ミッチ:(ため息)何してんだろ……本当。
    ……もう、最悪。最低……。消えて……なくなりたい……。

 <いつの間にか寝てしまうミッチ>

 <しばらくの時間が経ったころパタンという音がする>

ミッチ:え……。何?

 <ミッチは起き上がる>

ミッチ:何が倒れて――かや姉の、写真……?

 <ミッチは写真を手に取る>

ミッチ:何……? 何か言いたいのー? かや姉……。
    寂しいのー? うん……私もね……寂しい。かや姉がいなくて寂しいよー。

 <ミッチは写真を抱きしめる>

ミッチ:ごめんね……かや姉。私ね、かや姉の好きな人に、キスしちゃった……。
    ごめん……。好きになっちゃったからね……キスしちゃったよ。
    でも、かや姉が悪いんだぞー? かや姉が……そっちいっちゃうからさ……。
    うん……事件だよ、これは……。ふふふ……。
    私ね……恋なんてまともにしてこなかったからさ……本当……。どうしようね……。
    まだ、忘れられないんだ……。初めてのキスみたいで……あのレモネードの味……。
    ……ねえ……寒くない? 大丈夫? ……今日は一緒に寝よっか。ねえ……。

 <ミッチは写真を置いてから立ち上がる>

ミッチ:ゴミ、出してくるね。かや姉。

 <ミッチはキッチンのゴミ袋を持って外に出る>

ミッチ:一回寝たからかな……ちょっとさむー……。
    とっとと風呂入って寝るか――

 <ゴミ捨て場の前、マンションの駐車場に人影が見える>

ミッチ:……え?

 <そこには、車椅子に乗ったピカ君がいる>

ミッチ:ピカ君……どうして――

ピカ君:本当に、出てきた。

ミッチ:いつから、いたの?

ピカ君:一時間前くらいかな。

ミッチ:どうやって……!

ピカ君:友達が車で送ってくれた。

ミッチ:なんで、どうして、私の家――!

ピカ君:君のご両親に聞いたんだ。
    今日、退院するときに、わざわざいらしてくださってね。
    事情を説明したら、教えてくださったんだ。

ミッチ:事情って、何……?

ピカ君:それは……今から君に話そうと思う。

 <ピカ君はゆっくり腰を起こすと、車椅子に立て掛けてある松葉杖を手に取る>

ピカ君:結局……自分の足だけでは難しくてさ。
    杖を使うのは許して欲しい。

ミッチ:いや、そんな――

ピカ君:動かないで。……そこに、居て。

ミッチ:なんで……。

 <ピカ君は松葉杖を使ってゆっくりとミッチへ向かってあるき出す>

ピカ君:……ふう……。よっ……よし、イケるイケる……!

ミッチ:(涙がぐんで)……なんで……!

ピカ君:……どう? 少しは……歩けてるだろ?

ミッチ:なんで……! どうして、ここに……!

ピカ君:君は、何度も僕のところに来てくれた。
    だから――

ミッチ:ピカ君……!

ピカ君:今度は、僕が、僕から、君の――ミッチの側に――

 <ピカ君はミッチの前に立つ>

ピカ君:ほら……もう、病室の外で、僕たちは会ってる。

ミッチ:ぴかくん……!

ピカ君:ごめん……! 立ち続けるのはまだしんどいから、一回座っても――うわ!

 <ミッチは泣きながらピカ君を抱きしめる>
 <二人はゆっくりと地面へ座り込む>

ミッチ:うううう……! うううううう!

ピカ君:……ごめん。遅くなって。

ミッチ:ピカ君のバカァ! 遅いよぉ!
    ……ずっとずっと……! ミッチを一人にしてさぁ!

ピカ君:自分で歩けるようにならないと、君と面と向かって会えないと思って――

ミッチ:そんなの知らない……! どうでもいいもん!

ピカ君:そうだね……そうかもしれない。

ミッチ:もっとギュッと抱きしめろォ!

ピカ君:力が入らなくて……一度離れてもらっても――

ミッチ:やだ!

ピカ君:(微笑んで)うん……。

ミッチ:なんで来なくていいなんて言うのよぉ!

ピカ君:怖かったんだ。僕は一度……無くした人間だと思っていたから。

ミッチ:そんなの! ピカ君だけじゃないよ……!

ピカ君:うん。そうだ。だからこそわかったことなんだよ。
    ……無くしたからわかるんだ。目の前にあるものは、手放してはいけないんだって。

ミッチ:そうだよ……! 離しちゃダメなんだよ……。

ピカ君:これだけは言っておく。
    ……僕はね。ずっと、香夜子を愛してるんだ。
    きっと、これからも、ずっと……。

ミッチ:もちろん……。そうじゃなきゃ許さない。
    でも……前から言ってるよね……? ミッチは、ピカ君の一番になってみせる……。
    だから、それは心配しなくていいんだ。

ピカ君:(微笑んで)君は……本当に変わってるよ。
    勘違いしないで……。僕は君が、香夜子の妹じゃなかったとしても……どこか別の場所で会っていたとしても、君に惹かれていたと思うから。

ミッチ:……知ってる。
    でも、ちゃんと言って。

ピカ君:僕、阿光一郎は――

ミッチ:うん……。

ピカ君:円山路子さんのことが、大好きです。
    僕と……これからもずっと一緒にいてください。

 間

ミッチ:はい……いてあげます。

 <二人はしっかりと抱き合う>

ミッチ:ピカ君はぁ、私が幸せにしてあげます。

ピカ君:お手柔らかに。

ミッチ:パパとママにも、言ったんだよね?

ピカ君:うん。伝えたよ。
    ……良い顔はされないだろうと思っていたけど、なぜだか大手を振って送り出されてしまった。

ミッチ:わからない?

ピカ君:何が?

ミッチ:ミステリー小説ばっかり読んでても、そのへんはさっぱりですねぇ。

ピカ君:意地悪しないでくれ……僕は推理なんてできないから、小説を読んでいるんだからさ。

ミッチ:(微笑んで)だって……かよ姉も、私も好きになった人なんだもの……。
    ピカ君がいい人なんだってこと――みーんなわかってるってことだよ。

ピカ君:……そうか。

 <ピカ君は感極まってミッチの髪に顔を埋める>

ピカ君:(泣きながら)……そうか……そうだね。僕は……。

ミッチ:よしよーし……。よく、頑張ったねえ……。

 間

ピカ君:(鼻をすすって)……今日のところは僕は帰ろうか。

ミッチ:え? 泊まっていけばいいじゃん。
    アイスもあるよ?

ピカ君:アイスで連れ込もうとしないでくれよ……。
    すぐそこで、友人も待たせてるんだ。

ミッチ:じゃあ私が連れて帰るって言いに行く!

ピカ君:いや! わかった……じゃあ、それは僕が言う。

ミッチ:あのさ……もしかしその友達って……女の子?

ピカ君:め、メル友ってやつでさ……僕も今日、初めて会って――

ミッチ:はいダメー。私が行きます。

ピカ君:それはいいけど――

ミッチ:ピカ君! ……車椅子の押し方、教えてね。
    他にも、色々……身体が元気になるまでに必要なこと、全部。

ピカ君:……君は本当に――いや、そうか……。
    今わかった……君と出会ったことが……本当の、事件だったんだね。

 <ミッチはピカ君に手を差し伸べて笑う>

ミッチ:(笑って)……でしょ?
    解決、してみせてよ――迷探偵(めいたんてい)さん。



 完





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