焜炉
作者:ススキドミノ/しき


高橋 尚(たかはし なお)
岸 光太郎(きし こうたろう)



※この台本にはBL(ボーイズラブ要素が含まれています。
 わからない人は、調べてから読むのを推奨いたします。


※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)




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 <雪が降る無人駅の待合室>
 <高橋、焜炉付きのストーブに当たりながら本を読んでいる>

高橋:(しばらく本を読んでいる)
   ……(くしゃみをする)……。

 間

 <岸、寒そうに入ってくる>

岸:……あ。

高橋:……ん。

 <岸、高橋の隣に座る>

岸:(ため息)……つかれたぁ……。

 間

岸:……次、電車、いつ?

高橋:時刻表みろよ……。

岸:めんどくせえ。

 間

高橋:17分。

岸:あ?

高橋:電車。

岸:ああ……サンキュー。

 間

岸:(覗き込む)なに読んでんだ?

高橋:見んな……。

岸:いいじゃんかよ。
  なになに? 『水平線上のーー

高橋:いいだろ! 別に……。

岸:ふぅん。

高橋:部活は?

岸:別に、いつも通り。

高橋:……春、大会だろ?

岸:お。なんで知ってんだ?

高橋:別に……クラスのやつがいってたから。

岸:ふぅん……誰?

高橋:いいだろ、誰でも。

岸:ま、別にいいけど。

 間

岸:あのさ。

高橋:なに。

岸:尚。

 間

高橋:……だから、何?

岸:お前さ、俺のこと避けてんだろ。

高橋:はぁ?

岸:昼。昼休み、俺が声かけたらさ。
  「何か用? 岸くん」って……何あれ。

高橋:……別に、何か変だった?

岸:光太郎、だろうがよ。

高橋:そこかよ……。

岸:呼べよ。

高橋:はぁ?

岸:昼の分。呼べ。

高橋:何いってんだ、お前。

岸:今の『お前』の分も。

高橋:いい加減に――

岸:(本を取り上げる)

高橋:なっ……! オイ! 返せ!

岸:嫌だ。

高橋:いいから! おい! 返せよ!

 <岸、高橋の肩を掴む>

高橋:痛ッ……!

岸:呼べよ。

 間

高橋:(絞り出すように)……わかった、から……離せ。

 間

高橋:いうから、離して……。

岸:ダメだ。言うまで離さない。

高橋:……光、太郎……。

岸:もう一回。

高橋:光太郎……。

 <岸、ゆっくり手を離す>

高橋:(ため息)

岸:(本を差し出す)……返す。

高橋:ん、ああ……。

 間

高橋:どうすんの……俺たち。

岸:どうするって。

高橋:だって……俺、わかんねえよ。

岸:そんなん、俺だってわかんねえ。

 間

岸:尚は、どうしたい?

高橋:……どうしたいも何も……。

岸:間違ってるって、思うか?

高橋:思わない、っていったら嘘になる。
   常識って、あるだろ。無視は、できないだろ。

岸:そういうもんか……。

高橋:俺はさ。気にしちゃうんだよ。
   周りの目とか。

岸:俺は気にしてないってこと?

高橋:そうはいわないけど……。
   お前は、迷ったりとかしないーー

岸:(笑って)また、お前っていった。

高橋:いちいち……。

岸:わかんないよ、俺も。
  だって、こんな気持ち、初めてだしさ。

 間

岸:誰にどう思われたっていい、とか。
  覚悟を決めろ、とか。そんなの、俺にだって言えない。
  でも、それが原因で、尚といられる時間がなくなるのは嫌だ。

高橋:光太郎……。

岸:いいよ。お前に合わせる。
  でも、その分ーー

 <岸、高橋に優しく口づけをする>

岸:充電……頼むな?

高橋:……俺もーー

 <高橋、岸に抱きつく>

高橋:俺だって……さぁ!

岸:(微笑む)……ん?

高橋:違う……! 俺だって!
   もっと、光太郎と……!

 間

高橋:光太郎……俺ーー

岸:ふぅん。

高橋:……え?

岸:電車、来たぞ。『高橋』君。

高橋:……オイ!

岸:(笑って)ほら。

 <岸、高橋の手を取る>

岸:行くぞ、尚。

高橋:……うるさい。

 <二人は電車に乗り込む>

 <ベンチの上に、高橋の読んでいた本だけが置かれている>
















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