雀姫 -JANKI-
作者:紫檀




風間 綾人(カザマ アヤト):男子高校生。麻雀経験はほぼない
嶺上 花 (ミネガミ ハナ):謎の少女
高目 剛 (タカメ ゴウ):不良の一番強いやつ
不良A:不良
不良B:不良
男子生徒:かわいそうな生徒 ※誰かが気合いで兼ねることを推奨します


※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)





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綾人M:高校生活が始まって丁度1週間経った頃、俺の平穏な日々は突如として終わりを告げた

不良A:センパーイ、新しいの連れてきやしたー

剛:今終わっから、そこで待ってろ

不良A:ウッス

綾人:あの…これは…

不良B:はいローーーン。ド高目、バイマンね

男子生徒:あ、あ…

不良B:三連続ラスか。ツイてないなぁキミ。1万4千円ね

男子生徒:そんなお金…

 剛、机を蹴り上げる

剛:…払えねえってのか?

男子生徒:ひっ

不良A:センパイ怒らせるとマジやべーからな、気を付けろよ

男子生徒:………

不良B:そうそう、素直に出せばいいんだよ。行っていいぞ

不良A:チクったら殺すからな

剛:次、お前だよ

綾人:えっと……

不良B:座るんだよ、モタモタすんな

綾人:これ麻雀…ですよね?

剛:他に何に見えるんだよ

綾人:ルール分からないんですけど…

不良B:じゃあ適当に牌切ってればいいから

綾人:それ絶対負けるんじゃ……

剛:グダグダ言ってねぇで、打つんだよ

綾人:そ、そんな…

不良A:次から俺も入るわ。さっ楽しもうぜ、新入生クン

 不良A、綾人の肩に手をかけ椅子に座らせる

綾人(M):めちゃくちゃだ……こんなの

剛:始めるぞ

不良B:ルールはアリアリの、って言っても分かんねーか

 下品に笑いながら山を積んでいく不良達

不良A:ほら、お前の親番からだ

綾人:オヤバン…?

不良A:お前から切るんだよ

綾人:えっと……

綾人(M):どうする…お金なんか持ってないし、なんとかしてこの場を切り抜けないと…。麻雀って確か三枚ずつ揃えるんだっけ。でもなんか十三枚も配られてるしよく分かんねぇ。くっそー、親父の麻雀漫画とか、もっとちゃんと見とくんだったー!

不良B:おらさっさとしろよ。悩んだって一緒だろーが

綾人(M):ええいくそっ、もうここは適当に…!

 勢いよく教室の扉が開かれる。集中する3人の視線

花:牌(ハイ)が哭(な)いている

綾人:へ…?

剛・不良:あ?

 スタスタと卓に歩み寄る花

綾人(M):この子…確か同じクラスの

花:お前、代われ

綾人:えっ

花:席を代われ。私が打つ

綾人:えっでも

不良B:ナニコレ、乱入? なんか胸アツなんですけど

不良A:(ニヤニヤしながら)おいおい女が麻雀かよ

剛:そのネクタイ…お前も新入生か。打(ぶ)てんのか?

花:…レートは?

不良A:おいこら、無視すんなや

剛:構うな。テンピンだ

 花、不敵にニヤリと笑う

花:…テンリャンピンだ

不良A:このアマ……舐めてんのか

不良B:マジかよ…ケッサク

剛:……いいだろう

不良A:負けたら払えねぇとか言い出すんじゃねーぞ

不良B:あ、そうなったら俺が立て替えてやっからさぁ、あとで身体で払ってよ

 打牌の音

綾人(M):強かで、だが決して乱暴ではない、美しい打牌の音が響いた

 間

花:どうした。何をボケっとしている。早くツモれ

不良B:っ! ………コイツ、ぜってートばす

花:カン

不良B:えっ

花:ツモ。……(カンドラをめくり)4000オール

不良A:なっ…!?

不良B:嶺上(リンシャン)白(ハク)………ドラ3!?

剛:………

綾人(M):今、何をしたんだ!? もしかしてこの子、めちゃくちゃ強い!?

花:牌が哭いていた

綾人:え?

花:白(ハク)アンコのイーシャンテン…こんな好配牌(こうはいぱい)が、お前によって流されかけた

綾人:お、俺っすか

花:そこで見ていろ

綾人(M):高校生活が始まってわずか1週間。この衝撃的な出会いが、俺の運命を大きく左右するなんて、この時は想像もつかなかったんだ


綾人:第一話、出会い


剛:リーチ!

花:ポン!

不良A:ちっ

不良B:安い仕掛けを…!

花:ロン! 5800は6100

不良B:んなっ!?

綾人(M):凄い……こんなガラの悪い人らを相手に一歩も引いてない。何者なんだ、この子

剛:チッ、馬鹿が

不良B:すんまへん………

剛(M):とはいえこの女……手順から見るに、俺の当たり牌だけでなく鳴きたい牌まで使い切ってやがる。なるほど、どうやら安い相手じゃなさそうだ。……だがな

不良A(M):お、やっとか……剛センパイも人が悪い

剛:ポン

不良B(M):へっへ、こうなったらこっちのもんよ

剛:カン

綾人(M):ん…? この感じ…何かおかしい――

剛:ツモ。倍満だ

綾人(M):なっ

剛:俺らにも面子ってモンがあるんでな。悪く思うなよ

花:………

不良B:やっと俺の親番っすね

剛:チー

綾人(M):っ! まただ…! 

不良B:ポーン!

不良A:ポン

綾人(M):間違いない…。方法は分からないけど、お互いに必要な牌をやり取りしている…! これじゃあまるで3対1……圧倒的に不利じゃないか!

花:………

不良A:なんだ、もうオリか?

剛:流石に大人しくなるか

不良B:勝負はまだまだこれからだぜぇ、可愛い子チャン

剛:ポ――

花:ロン

不良A:なっ!?

花:12000………終わりだな

不良B:あ……あ……

剛:この不自然な切り出し…まさかッ…!

花:手の顔に触れる位置でマン・ピン・ソー・字牌。鳴きたいときは脚を組む。卓に置いた手の形でスジ…といったところか

不良A:嘘だろおい…

剛:………

綾人:えっと、イカサマを見抜いた…ってことですよね

花:ただの通しだ。別に珍しくもない

綾人(M):すごい。すごすぎる

不良B:センパイ…もう俺無理っす…怖いっす

剛:クソッ!! ……持っていけ

 剛、卓に現金を放る

花:…金はいらない。代わりに…これを見ろ

 花、山から牌をめくっていく

花:サマをしなかった時のお前のツモ筋(スジ)だ。ここで聴牌(テンパイ)、そして当たり牌は……私のツモ番だ

不良A:おい…これって…

剛:四暗刻(スーアンコウ)……単騎(タンキ)……

花:愚かな真似をする打ち手に、牌は微笑まない

剛:……何故これを俺に

花:お前のためじゃない

 サッと身を翻し、教室の扉に向かう花

花:牌が哭いていたから。それだけ

 花、教室から出ていく

綾人:あ、ちょ…ちょっと! 置いてかないでよ!

 慌てて追いかける綾人

剛:………クソッ



 廊下

綾人:ハァ…ハァ…待って!

花:ん?

綾人(M):この子歩くの早っ!!

花:まだなにか用?

綾人:あの、嶺上(ミネガミ)さん…だったよね? 俺、風間(カザマ)、同じクラスの!

花:そう

綾人:……一応、隣の席だったと思うんだけど

花:興味ない。じゃ

綾人:あーっ! ちょちょちょ! 待ってってば!

花:なに……

綾人:さっきは有難う!

花:は?

綾人:その…助けてもらってさ。俺、麻雀のルールなんか全然知らないから、嶺上さんが来てくれなかったら、きっとすげえカモられてたなって

花:別に、助けたわけじゃない

綾人:へ?

花:だから、感謝される謂(いわ)れも無い

綾人:じゃ、じゃあ…なんで

花:牌が哭いていたから

 間

花:それだけ

 凛として、歩き去る花

綾人(M):「かっこいい」。素直にそう思った。正直何を言ってるのか全然訳が分からなかったけど、ただただ僕の脳裏には、彼女の牌を握る姿だけが焼き付いていた

綾人:麻雀……覚えようかな



「雀姫 -JANKI-」第一話、完。

 続く、かも



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