恋愛とは情報戦と見つけたり
作者:たかはら たいし

 =ルール=
 ・ミュート禁止。笑い声もオンマイクで!



日野 基哉(ひの もとや)
梶 裕香(かじ ゆうか)
赤羽根 健子(あかばね きよこ)



※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)




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ある日の昼下がり。
洒落たカフェのテラス席にて。
注文を済ませた梶が、赤羽根の下にやって来る。

梶「お待た〜。」

赤羽根「うん。それ、何頼んだの?」

梶「ん?グダバの新作。スイートハニーゴールデンタピオカミルクスイートハニーマッドマックスエターナルブレイズ。」

赤羽根「え?」

梶「だから、スイートハニーゴールデンタピオカミルクスイートハニーマッドマックスエターナルブレイズ。」

赤羽根「いま2回スイートハニーって言わなかった?」

梶「うん。だって新作のはスイートハニーにスイートハニーを重ねたやつだから。」

赤羽根「そもそもスイートハニーって何?」

梶「スイートハニーはスイートハニーっしょ。なんか甘いやつだよ、甘いやつ。」

赤羽根「ああ、甘いやつね。あと飲み物にあるまじき単語付いてない?」

梶「え?そう?よくわかんないけど、スイートハニーよりもマッドマックス度が高くて、悠久の炎的な意味なんじゃない?」

赤羽根「あっそ。」

梶「最近どうなの?」

赤羽根「どうって?」

梶「日野君。」

赤羽根「えっ?なんで?」

梶「こないだ一緒に帰ったって本人から聞いたけど。」

赤羽根「ああ・・・、まぁ、うん。一緒に帰ったけど。」

梶「一緒に帰っただけ?」

赤羽根「一緒に帰っただけ。」

梶「へぇ。」

赤羽根「雨降っててね。」

梶「うん。」

赤羽根「私、傘持ってなくてさ。」

梶「うん。」

赤羽根「したら玄関で日野くんと会って。」

梶「ほお。」

赤羽根「先輩もこれから帰りですか?傘無いなら入っていきます?って。」

梶「え?」

赤羽根「いや、だから。相合傘して帰った。」

梶が机を叩く。

梶「・・・どういう事?」

赤羽根「どういう事って、そのままの意味だけど。」

梶「一緒に帰っただけじゃないじゃん。」

赤羽根「いや、一緒に帰っただけだけど。」

梶「傘!傘入れてもらってるじゃん!という事は密着してるじゃん日野くんとさァ!」

赤羽根「いや、密着ってほど密着してなかったけど。」

梶「密着だよ!それもう零距離だよ!零距離!銃口を額に押し付けて引き金ひくやつだわそれは!」

赤羽根「いや零距離でもないし日野くんのおでこに銃口押し付けてもいないから!」

梶「一緒に帰っただけじゃないじゃーん・・・。」

赤羽根「だから!相合傘して一緒に帰っただけだって。それ以上のことはなんもなかったよ・・・。」

梶「零距離からそれ以上近づいたら、それは何になるの?」

赤羽根「いや知らないし。だから零距離まで接近してないって。」

梶「スーパーサイヤ人を越えたスーパーサイヤ人的なスーパー零距離2(ツー)じゃん!」

赤羽根「よくわかんないよその例え。そんな事言ったら裕香だって・・・。」

梶「え?」

赤羽根「クルマ、乗せてもらったんでしょ。日野君のクルマに。」

梶「あっ・・・。」

赤羽根「相合傘して帰ってるとき言われたんだから。こないだ梶先輩を乗せて駅まで送っていったって。」

梶「ああ、まぁ・・・、うん。」

赤羽根「助手席、座ったの?」

梶「え、まぁ・・・。」

赤羽根「密室じゃん。」

梶「はい?」

赤羽根「だから密室じゃん!一組の男女が密閉空間に籠って同じエアー吸ってんじゃん!」

梶「いや、まぁ、そうだけど・・・。」

赤羽根「それはある意味、私の相合傘よりも罪が重いよね!」

梶「え?そう?」

赤羽根「そうだよ!密閉空間に充満している日野君のエアー!通称日野スメルを吸って吐いて吸って吐いたって事じゃん!」

梶「いや、吸って吐かないと私、死んじゃうし。」

赤羽根「ひょっとして孕んだんじゃないの!?空気感染的な!!」

梶「日野君はそんなアウトブレイクな人じゃない!」

赤羽根「どうだか・・・。」

梶「ちょっと落ち着きなよ!」

赤羽根「そっちこそ!」



梶N「スーパー零距離2。」

赤羽根N「日野スメル。」

梶N「やっぱりバネちゃんも日野君のこと好きなんだ・・・。」

赤羽根N「やっぱり裕香も日野君のこと好きなんだ・・・。」

梶N「これはもう手段を選んでいられない。」

赤羽根N「どんな手段を用いても。」

梶N「どんな方法を使ってでも。」

赤羽根N「日野君のことを!!」

梶N「諦めさせねば!!」



赤羽根「そういえばさ。」

梶「なに?」

赤羽根「日野君の大好物、知ってる?」

梶「知らないけど・・・。」

赤羽根「福神漬。」

梶「えっ?」

赤羽根「だから、福神漬。」

梶「ああ、そうなんだ。中々渋いね。」

赤羽根「裕香、福神漬好き?」

梶「ふつう。」

赤羽根「今まで言わなかったけど、日野君の福神漬好きは常軌を逸してるよ。」

梶「どういう事?」

赤羽根「こないだ、相合傘して帰ったとき、日野君が言ってたの。」

日野N「僕、福神漬が大好きで常備してるんすよ。
家にいると冷蔵庫から福神漬取り出して毎秒食ってるんすよね。
まぁ、福神漬っていうと普通はカレーのトッピングぐらいの認識だと思うんですけど、
日野家では、鬼盛りにした福神漬にカレーをぶっかけて食うんすよね。
米を一切入れずに鬼のように盛った福神漬をカレーにかけて食うんですけど、これが旨いんすよ。
福神漬に関しては無限に食ってられますわぁ。」



梶「いやいやいやいやいや!」

赤羽根「いやいや!これホントだから!」

梶「えっそうなの!?リアルに!?」

赤羽根「紛れもねぇリアルだよ!私引いたもん!」

梶「私、鬼のように盛ったご飯の存在しない福神漬カレー食べたくない!」

赤羽根「でしょ!?日野君は頭がちょっとどうかしてるんだって!!」

梶「そうかなぁ・・・。」

赤羽根「日野君とデートしても、ディナーはお洒落なイタリアンバルじゃなくて福神漬専門店だよ!!」

梶「福神漬専門店なんてあるの?」

赤羽根「あるよ!上野御徒町(うえのおかちまち)駅から徒歩5分ぐらいのところに多分あるよ!!」

梶「それはやだな・・・。」

赤羽根「だから!日野君のことはもう諦めた方がいいよ!もうやめよう日野君は!」

梶「うーん・・・。」

赤羽根「まぁでも、私は別に?福神漬の野郎の事はそこまで嫌いじゃねぇからさァ。」

梶「う、うん。」

赤羽根「(咳払いをして)だから裕香、私が日野君と付き合うね。」



梶「努力する。」

赤羽根「えっ?」

梶「私も福神漬好きになるよう努力する!」

赤羽根「は?」

梶「頑張って食べる。福神漬。」

赤羽根「えっ、マジで?」

梶「今日から毎秒、福神漬を口にする。」

赤羽根「そ、そう。」

梶「うん。無限に食べる。福神漬。」



赤羽根N「チッ。ダメージがいまいち浅かったかッ・・・!!」

梶「え?今なんか言った?」

赤羽根「ううん!別にィ!」



梶「・・・でも、」

赤羽根「なに?」

梶「私も、日野君のことで黙ってたことがある。」

赤羽根「えっ、なに?」

梶「ちょっと前に、私すごいもの見ちゃった。」

赤羽根「えっ?」

梶「大学の帰り、近くの公園を通りかかったの。」

赤羽根「うん。」

梶「ジャングルジムあるじゃん。」

赤羽根「えっ、うん。」

梶「日野君がいたの。ジャングルジムの一番上に。」

赤羽根「うん。」

梶「そこで、日野君が演説してた。」

日野N「この五丁目公園の未来。明日への希望を持つ為に、
この近所に暮らす僕たちは、明日に対しての責任を持ち、個性豊かな体制を作らなくてはなりません。
その為には独立が必要です!生きていく為に、個性豊かな存在にならなければなりません。
僕らの手で個性豊かな国を作りましょう!個性豊かな、僕らの日野共和国を作るんです!!」

SE:拍手の音。



赤羽根「個性豊か過ぎるよ・・・。」

梶「個性豊かっていうかどうかしてるよね。」

赤羽根「なに?日野共和国って。」

梶「わかんない。ジャングルジムの事かな?」

赤羽根「狭い!狭いよ日野共和国ゥ!」

梶「ドン引きしたよね・・・。」

赤羽根「するよ!あとなに?最後の拍手の音!いるの?日野共和国の支持者が!」

梶「ご近所さんかな・・・。」

赤羽根「住みたくないよその近隣に!日野共和国にも!」

梶「でしょ?仮にさ・・・。」

赤羽根「うん。」

梶「バネちゃんが日野君と付き合って、同棲する事になったら・・・。」



赤羽根「私、連行されるね。日野共和国に。」

梶「間違いない。」

赤羽根「マジか・・・。」

梶「バネちゃんの方こそ、日野君のことは諦めた方がいいよ。どうかしてるもん、頭が。」

赤羽根「うーん・・・。」

梶「まぁ、別に俺はよ。ジムの野郎の事はそこまで嫌いじゃねぇよ?」

赤羽根「うん。」

梶「(咳払いをして)だからァー、私が日野君と付き合う事にするね!」



赤羽根「いや移住する。」

梶「えっ?」

赤羽根「私、個性豊かな日野共和国に住みたいってずっと思ってた!」

梶「いや、おめぇさん。つよがりは止しなって。」

赤羽根「そんな事ない!昇りたいもん、上に!」

梶「え、ほんとに?」

赤羽根「うん。明日不動産屋行ってこようかなー。」

梶N「ぐっ、致命傷を逃したッ・・・!」

赤羽根「えっなに?」

梶「ううん!なんでもない!」



赤羽根「そういえば裕香。」

梶「なに?」

赤羽根「裕香って、幽霊って信じてる?」

梶「えっ、わたし怖いのはちょっと・・・。」

赤羽根「ああそうなんだ。だったら日野君の事は諦めた方がいいね。」

梶「なんで!?」

赤羽根「ここだけの話、日野君はね・・・。今まで何度も心霊現象に遭ってるの・・・。」

梶「えーっ・・・、そうなの?」

赤羽根「うん。日野君はね、これまでの霊体験を基に月に1度、公民館を借りて怪談ライブをやってるの・・・。」

日野N「いやぁ、不思議な事ってやっぱりあるんですねぇ。
ついこないだ私、自分の通ってる大学の地下に潜り込みましてねぇ。
そこには戦争で亡くなられた旧日本兵の霊がいると古くから噂がありましてね。
私、正直そこまで乗り気じゃなかったんですが、気になって行ってみたんです。
大学の玄関を抜けて1階の女子トイレの脇に、地下に続く階段がありましてね。
階段の前に来ると、既に寒気がするんですね。
季節はもう冬だというのに、この学校、随分と冷房が効いてるなー、おかしいなぁと思った。
階段を降りようとするんですが、とにかく寒いんですねぇ。
寒いなぁ。寒いなぁ。ヒートテック持ってくれば良かったなぁ。
そうこうしながら私、意を決して階段を降りていったんです。
地下に続く階段を降りていくと、なんていうんでしょうか。もうこの世のモノじゃない気配がするんですね。
それにしても寒いなぁ。お腹下しちゃうなぁ。ヒートテック持ってくれば良かったなぁ。足が痛いなぁ。
地下50メートルぐらいまで降りた辺りですかね。私、ある事に気付いてしまったんですね。
この階段、降りても降りても終わりが無い。既に私の足は、限界を迎えていたなぁ・・・。
いい加減諦めて引き返そうとした時なんですがね。コツン、コツン。何かの音がした。
コツン、コツン。よく聞いてみると、どうやらそれは石を投げている音なんですね。
コツン、コツン。コツン、コツン。石の投げる音がどんどん近付いてくる。
コツン、コツン。コツン、コツン。私の直ぐ近くまで音が聞こえてきた。
私が、ハッと息を飲んだ次の瞬間、“大塚やめろ石を投げるの!止めないか馬鹿野郎!”
そのあと直ぐに別の男の声で“馬鹿野郎とはなんだい!”って聞こえてきましてね。
私そのとき思ったんですよね。これは、この世のモノじゃないって。
私、すさまじい勢いで元来た方向を引き返しました。あの怒鳴り声は、一体なんだったんですかねぇ・・・。
その後ですかね・・・。私、疲労骨折で救急車に運ばれたのは・・・。
もしかするとあの怒鳴り声は、都会の孤独が生んだ幻想だったのかもしれません。
いやぁ、不思議な事って、やっぱりあるんですねぇ。」

SE:拍手の音。



梶「なげーよ!!!!!」

赤羽根「丸々1本話しちゃったね。日野川ジュンジ。」

梶「地下50メートル以前におかしいって気付けよ!」

赤羽根「そりゃ疲労骨折するよね。」

梶「足痛い足痛いって言ってるのになんで降りるの!?こんなのっておかしいよ!!」

赤羽根「地下50メートルだもんね。」

梶「しかも最後拍手の音したよ!!」

赤羽根「いるんだよ。日野川ジュンジの熱狂的なファン。ヒノラーがさ。」

梶「やだなぁ、怖いなぁ怖いなぁ。」

赤羽根「うんうん。気持ちはわかる。だからバネちゃん日野君のことはやめた方がいいよ!!」

梶「いや!そしたら!そしたらぁ!バネちゃんって米派!?」

赤羽根「なんでぇ?いきなりやぶからぼうに。」

梶「答えて!米派!?」

赤羽根「まぁ、好きだけど。お米。」

梶「ああー!だったら日野君は無理だわ!だって日野君言ってたもん!」

日野N「基本ずっと米派なんですけど、ちょっと前からコーンフレークにハマってるんすよ。
いやこれ大学の奴に引かれたんですけど。コーンフレークにお茶漬けの素をかけるんですよ。
・・・で、ここでゲストの皆さんへ問題です。そこに何をかけると思いますか?」

赤羽根「お茶?」

日野N「正解は、ホットミルクです。」

赤羽根「深刻な味覚障害!」

梶「そうだよ!日野君は人としての味覚を持ち合わせてないんだよ!」

日野N「ここ一ヶ月ぐらいずっとこればっか食べてるんですけど、これがまた旨いんすわぁ。」

赤羽根「お願いだから米派に戻って日野君!お米食べよ?」

梶「ほら!バネちゃんはどう?悪魔のようなコーンフレーク食べれる!?」

赤羽根「無理だよ無理!」

梶「そうだよね!だから日野君の事は綺麗さっぱり最初からいなかったと思おう!?」

赤羽根「あーーーー思い出した!!」

日野N「僕はめんつゆにオリーブオイルとトマトケチャップを混ぜたドレッシングを入れますね。
そして仕上げにレモン。トッピングはパクチーですね。これでもかというほどパクチーを入れます。
日野家では熱帯雨林そうめんって呼んでるんですけど、夏場はずっとこれ食って生きていけます。」

梶「マジ無理ーーー!!」

赤羽根「ほらー!熱帯雨林そうめん食べれないでしょ!?やめときな!アイツには手を出さない方がいい!」

梶「あーーーー私も思い出しちゃったーーーー!!」

日野N「最近夜遅く帰ってきて、黒魔術を唱えてるんすわ。
部屋の絨毯をどけて、ネットで購入した魔法陣を敷くんですけど」

赤羽根「もういいもういい!出だしから無理!黒魔術はハードル高過ぎっしょー!」

梶「きっと他にも悪魔像とかネットでポチってるよ!!」

赤羽根「じゃあぶっちゃげちゃいますけど!」

日野N「ぶっちゃげると俺、火炎放射器を5、6台所有してるんですけど」

梶「汚物を消化するやつー!」

赤羽根「放火魔と付き合える!?やめときなって裕香!!」

梶「じゃあ!」

日野N「最近は鼻に割り箸を突っ込んで大学通ってますね。」

赤羽根「なんのために!?」

日野N「地元にいた頃は幼馴染とドラゴンに乗ってました。」

梶「サラマンダーよりずっと早い!!」

日野N「僕の唯一の特技は、この筋肉操作なんですよ。」

赤羽根「やるねぇ!」

日野N「僕の前世、実はMJなんですよね。」

梶「ポゥ!」

日野N「ボールを割と遠くに投げれます。」

赤羽根「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

梶「はぁ・・・はぁ・・・」

日野「あれ?二人とも何してるんすか?」

赤羽根&梶「ギャーッ」

日野「いや出会い頭に恐怖漫画みたいなリアクション取らないでください。」

梶「ひひひひひひひひひ日野くん!!」

赤羽根「どどどどどどどどうしたの!?」

日野「いや、学校終わってコーヒー飲みに来たんですけど。そこ座ってもいいですか?」

赤羽根「え?う、うん・・・。」

梶「ど、どうぞ・・・。」

日野「ありがとうございます。よいしょっと。・・・え?どうかしました梶先輩。」

梶「福神漬。」

日野「えっ?」

梶「それ、福神漬入ってる?」

日野「いや・・・。コーヒーに入れませんよね。」

梶「入ってないんだ、福神漬。」

日野「いや、どう考えても入れないでしょ!?」



梶「バネちゃん?」

赤羽根「なっ、なに?」

梶「嘘付いた?」

赤羽根「・・・。」

梶「バネちゃん。私を見て。」

赤羽根「はいすみません。嘘でした。」

梶「っし!!」

日野「え?」

赤羽根「日野くん。それ、お茶漬けの素入ってる?」

日野「はい?」

赤羽根「それ、お茶漬けの素入ってないの?」

日野「いやいやいや。赤羽根センパイ、お茶漬けの素も入れませんよね。」

赤羽根「どうして?」

日野「どうしてだと思います?」

赤羽根「いやわかんない。」

日野「普通に考えてコーヒーにお茶漬けの素入れる奴どこにいるんすか!」

赤羽根「あぁ・・・。そっか。嘘か。」

梶「・・・。」

赤羽根「裕香。あれ、嘘?」

梶「うん・・・。」

赤羽根「っしゃ!」

日野「え?え?なんすか?」

梶「パクチーは!?」

日野「何言ってんだアンタ。」

梶「入ってない?そのコーヒーにパクチーマシマシで盛ったりするでしょ!?」

日野「盛らないでしょ!」

梶「ふぅ・・・。」

赤羽根「日野くん、このあとおうち帰るの?」

日野「えっ、そりゃ帰りますけど。」

赤羽根「日野共和国に?個性豊かを謳い文句にしてるあの国に帰るの?」

日野「いや、ふつーに家に帰りますけど。日野共和国ってなんすか。」

赤羽根「はぁ・・・。」

梶「これから大学に戻って地下50メートルまで階段降りたりしない?」

日野「なんすかその大学。どこに続いてるんすかその階段。」

赤羽根「おうちに帰ってネットで注文した魔法陣を」

日野「なんで魔法陣ポチってるんすか俺。」

梶「悪魔像は?」

日野「何のためにそんなもん買うんすか!」

赤羽根「火炎放射器5〜6台持ってたりしない?」

日野「1台も持ってませんって!」

梶「そっか。」

赤羽根「そうだったんだ。」

梶&赤羽根「全部嘘だったんだーーー!!」

泣き始める梶と赤羽根。

日野「え?いや、ちょっ、どうしたんすか?」

梶「良かった・・・。」

赤羽根「ほんとに良かった・・・。」

日野「何がですか?」

梶「日野君が普通の味覚の持ち主でよかった。」

赤羽根「日野君が普通のおうちに住んでてよかった。」

日野「いやだから、僕は普通ですけど。」

梶「信じていたもの私・・・、日野君がそんな人じゃないって。」

赤羽根「私も信じてた・・・、日野君は至って普通の人だって。」

日野「いや、なんか寧ろ普通で申し訳無い気がしてきたんですけど。」

梶「バネちゃん。これからは正々堂々と勝負しよ?」

赤羽根「そうだね裕香。私たち、人として間違ってたね・・・。」

梶「私たち友達だもんね?」

赤羽根「うん。私達マブダチじゃない。」

梶「バネちゃん。」

赤羽根「裕香。」

固い握手を交わす梶、赤羽根。

梶「わたし、バネちゃんに負けないよ。」

赤羽根「私こそ。裕香に勝ってやるんだから。」

日野「なんかよくわからないので俺もう帰りますわ。お邪魔してすみませんでした。」

梶「ううん!全然そんな事無いよ!またクルマ乗せてね日野君。日野スメルを嗅がせて?」

日野「いやいいですけど。なんすか日野スメルって。」

赤羽根「私も、日野君とまた相合傘して帰りたい。スーパー零距離2まで日野君に近づきたい。
あっ、ごめん。つまらない話し合いに巻き込んじゃってごめんね。」

日野「いや、つまらない事じゃないっすよ!・・・まぁ、相合傘も構いませんけど。
スーパー零距離2ってなんすか2って。じゃあすみません。僕これで失礼しますんで。」

日野が足早に去っていく。

梶「ああー。」

赤羽根「やっぱり。」

梶&赤羽根「日野君って素敵〜!」

笑い合う二人。



その日の深夜、日野家のベランダにて。

日野「はっ・・・。見えた、見えたぞ。黒太陽だ。
創世神ジェネシックカイザー様が、お姿を見せて下さった!
創世神様のお慈悲だ・・・。良かった・・・。本当に良かった・・・!」」

両手を広げて祈りを捧げる日野。

日野「ジェネシックカイザー様ァ万歳!ジェネシックカイザー様ー!ばんざーい!」



日野「ヒヒヒッ、クケケケケ。いよいよだ、いよいよ。
我らの創世神様はご降臨の段階を迎えられた。ヒヒヒヒ、ウヒヒヒヒ。
人間どもよ!!貴様らの築いてきた歴史は一瞬にて無へと返るだろう!!
ジェネシックカイザー様のお力はこれすなわち万物!
お前ら凡俗が幾ら束になってかかろうと、創世神様の前では児戯に等しい!
見ていろ人間ども!!この世界は我々アポリジニー一族が支配する!!
フフフフフ・・・、アハハハハハハハハハハ!!!!アーッハッハッハ!!」



(※次回予告調に)
赤羽根「日野君ってやっぱりカッコいいね裕香!」

梶「天上より降り立つ神々、」

赤羽根「え?」

梶「黒い悪魔の群れは一瞬にて日常を破壊した。」

赤羽根「えっ!?ちょっと裕香!?」

梶「(※赤羽根の台詞を無視して)
偽りの平和は崩れ去り瓦礫埋もれしユートピアに人々の欺瞞が交錯する。
嗚呼、日野よ。神々を欺く運命こそお前の運命。
嗚呼、日野よ。それがお前の役目ならば。
日野の躰に染みついた硝煙の匂いに惹かれ、
やって来るのは禁断の獣(けもの)」

日野「次回、創世神ジェネシックカイザー第2話『目醒め』」

梶「日野が飲むパクチーのコーヒーは不味い。」

赤羽根「美味しいわけねーだろ馬鹿。」

日野「次もぜってぇ見てくれよな!」

-完-


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