ギルクライム 第6話
作者:ススキドミノ


【※最初に】
 本台本は有料上演配信使用権付き台本の販売がございませんので、基本的には読み合わせや友人同士の声劇などでお使いください。



登場人物
チェルシー=リン:女性。ソムニシティ尋問官。
グレイ=ラッド:男性。盗賊。




※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)




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 <ソムニシティ刑務所・特別独房7号>

チェルシー:……盗賊グレイ=ラッド。

グレイ:……よう。チェルシー=リン。

チェルシー:今日は、話があって来ました。

グレイ:報酬の話か?

 間

グレイ:じゃねえみたいだな。

チェルシー:協力を依頼した暗殺事件についてです。

グレイ:ほお、どうだ。俺達の意見は役に立ったかよ。

チェルシー:ええ……とても。

グレイ:じゃあこれは楽しい報告会ってやつだな。

チェルシー:楽しいかどうかは、保証できませんが。

グレイ:聞かせてくれよ。

チェルシー:今回の事件は、非常に緻密な計算の元に練られた。
      先ずは協力者の用意、これは過去にこの街で起こった工場の爆破事故から始まります。

グレイ:ワクワクする導入だなァ。

チェルシー:この事故によって、就くはずだった職を奪われた貧困層は鬱屈した思いを抱えていました。
      これは大きな感情の揺らぎであり、犯人達にとっては操ることは容易かった。

グレイ:感情について、随分と詳しくなったじゃねえか。

チェルシー:犯人達はそれらの貧困層の生活の中に種を撒き、計画の為に動かします。
      彼らの欲しい物を少しずつ与え、行動を制御していった。

グレイ:まるで神の所業だ。

チェルシー:自覚なき協力者達と共に、実行犯が動き、暗殺を達成し、そして消える。
      協力者には共通点はなく、背景には曖昧な正義と、革命という不確かな理由だけが残った。

グレイ:なるほど。その革命自体が、用意されたシナリオだったってわけか。

チェルシー:最も惑わされた点は、実行犯にとって暗殺を行う明確な理由がなかったことです。
      彼らは、この暗殺事件自体をゲームだと考え、楽しんでいました。

グレイ:そうかそうか……そいつはやべえ。
    んなことを考えるのはどこの誰なんだ?

チェルシー:私はブギーに、犯人を捕まえることは不可能だと言われました。
      その意味は……もうすでに捕まっている人間を、捕まえることは出来ないということ。

 <チェルシーはゆっくりと顔をあげる>

チェルシー:犯人の名を読み上げましょう。
      グレイ=ラッド。
      フランツ=グレイヴ。
      ミリア=グレイヴ。
      ジーク=キリアン。
      ルビア=ルール―。
      一連の暗殺事件は、この五名によって行われました。

グレイ:ククク……! ハハハハ!
    なぁ、詳しく教えてくれよ! 俺達がどうやったのか!

チェルシー:協力者となる者たちは、ルビアが情報を持っているはずです。
      彼らの感情を利用し、操る術はグレイヴ兄妹が良く知っています。

 <チェルシーはギルクライマーの資料を出す>

チェルシー:幸福で従えるための資金はジークが用意できるでしょう。
      或いはそれぞれの力を合わせれば出来ないことはありません。

グレイ:なるほど、肝心の実行犯は誰だ?

チェルシー:実行犯は一度も姿を見られていない。衆人環視と警備システムをくぐり抜けての暗殺を実行できるのは……。
      貴方しかいません。グレイ=ラッド。

グレイ:……まあ、そうなるよなァ。

チェルシー:問題はどうやってあなた達がこの地下の独房から外に出たのかです。

グレイ:ぜひ、教えてくれ。

チェルシー:ジークは、私に会う以前から、外の情報を知っていました。
      この刑務所の看守にも、彼の息がかかっているということでしょう。

グレイ:そいつはちっと惜しい。

チェルシー:では、どうやって?

グレイ:なあ……俺達は全員、いつでもここから出れるって言ったら、信じるか?

チェルシー:それは……いえ、どちらでもいいことです。
      今晩のうちに、あなた達を移送します。

グレイ:そこなら俺達を抑えておけるって?

チェルシー:そうなれば、またゲームを仕掛けるつもりですか。

グレイ:さァ、どうだろうな。

チェルシー:その時は、私があなた達を殺します。
      今度は――私の感情に従って。

 <チェルシーは独房を出ていく>

グレイ:あーあ……残念だったな、チェルシー=リン。
    感情を覚えたまでは良いが、少しばかり素直すぎた。
    お前、ちょっと足りなかったぜ。





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第7話
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