ギルクライム 第3話
作者:ススキドミノ


【※最初に】
 本台本は有料上演配信使用権付き台本の販売がございませんので、基本的には読み合わせや友人同士の声劇などでお使いください。



登場人物
チェルシー=リン:女性。ソムニシティ尋問官。
ジーク=キリアン:男性。企業犯罪者。




※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)




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 <ソムニシティ刑務所・特別独房3号>

チェルシー:こんにちは。

ジーク:どうも、お待ちしていました。

チェルシー:チェルシー=リン。ソムニシティの尋問官です。

ジーク:ご丁寧にどうもありがとうございます。
    私は、ジーク=キリアンと申します。

チェルシー:ええ。よく知っていますよ。

ジーク:光栄ですよ。凄腕の尋問官と握手できないのが残念でなりません。

チェルシー:私のこともご存知なのですか?

ジーク:もちろんですよ。貴方のブラックフィード事件での手腕は本当に素晴らしかった。
    すっかりファンになってしまいましたよ。

チェルシー:この独房には、外部の情報は入らないはずでは。

ジーク:ええ、そのようですね。

チェルシー:ではどうして――いえ、そのような質問は、貴方には意味がないですね。

ジーク:それはいったいどういう意味ですか?

チェルシー:大企業を幾つも裏から動かし、ソムニシティのあらゆる企業を転覆させた、企業犯罪のスペシャリスト。
      ジーク=キリアンなら、外の情報を得れたとしても不思議ではありません。

ジーク:評価して頂けるのは非常に光栄です。
    それで、今回の依頼についてですが。

チェルシー:詳細や条件については?

ジーク:もちろん、同意させていただきます。
    三つ、欲しい物を用意させていただくということで、お引き受けいたしますよ。

チェルシー:では早速ですが……見解をお聞かせ願えますか。

ジーク:この暗殺事件の背景には、このソムニシティが抱える、社会的問題が大きく関わっています。

チェルシー:と、いうと。

ジーク:ソムニシティは、この国の中でも最も混沌としています。
    貧富の差は激しく、権威主義に満ち、不平等がまかり通っている。

チェルシー:客観的な事実として聞いておきます。

ジーク:よく言いますね。光があるところに闇があると。
    実際は違います。闇があるところにはもっと深い闇が産まれるのです。

チェルシー:もっと深い闇……。

ジーク:そう。もっと深い闇の存在とは、正義ですよ。チェルシーさん。

チェルシー:正義はよく、光に例えられます。

ジーク:正義を抱える者にとっては、それは眩い光足り得る。
    それは間違いありません。ですが、実際にはどうでしょう。

 <ジークは机の上で積み木を組み立てる>

ジーク:私は多くの企業と関わってきました。
    彼らは眩い栄光と、富を目指し、より高く高く上を目指していきます。

チェルシー:自然なことのように思えますが。

ジーク:そう、自然なことです。だからこそ、欲望は留まらなくなる。
    無限に光を求め積み上げられた欲望はやがて――

 <ジークは積み木を崩す>

ジーク:崩れます。

チェルシー:それと正義、何の関係があるのですか。

ジーク:正義とは即ち、闇の力なのですよ。
    自分のしていることは正しく、自然であると考えることで、人はどこまでも欲望に忠実になる。

 <ジークは積み木をバラ撒く>

ジーク:正義を盾にし、剣と成す。
    正義を掲げれば、人は人をも簡単に傷つけることができる。

チェルシー:今回の事件も、それと同じことが起きていると?

ジーク:間違いなく、そうでしょう。
    暗殺という手段を選んだ犯人にとって、これは正義の行いです。

チェルシー:反社会的な正義が根底にあるのなら、もう少し行動に一貫性があると思いますが。

ジーク:一貫性ならありますよ。チェルシーさん。
    ……権力者を暗殺されたことで、貴方はまずどんな人物を疑いましたか?

チェルシー:それは……その暗殺によって利益を得るものです。
      政財界を中心に、調査を勧めています。

ジーク:それは結構なことです。実に論理的だ。
    何か大事を成す背景には、利益がつきまとう。

チェルシー:では――

ジーク:違いますよ。チェルシーさん。
    これは、権力者の派閥闘争なんてものではありません。

 <ジークは積み木を整列させる>

ジーク:この暗殺は、正義という名の大きな理由なき闇に導かれている。
    これは――革命ですよ。

チェルシー:革命……この事件は、このソムニシティの住民が行っていると?

ジーク:実行犯は間違いなく低所得者層であり、狙われた権力者とは直接の繋がりも、利害関係も薄い。
    強いて言うのならば、このソムニシティの体制を変えようとしているのでしょう。

チェルシー:もしそれが本当なら……。

ジーク:事実ですよ。確信が持てないのならば、事件後の四大企業の動きを確認してみるといいでしょう。
    彼らはまるで陸亀のように身を固めているだけで、目立った動きはしていないはずです。

チェルシー:……確認してみます。

ジーク:時間、ですか。もう少しお話していたかったですが。

チェルシー:ご協力、感謝します。それでは。

 <チェルシーは独房を出ていく>

ジーク:大衆とは、闇に蠢くネズミですよ。
    くれぐれも……毒をもらわないよう。チェルシー尋問官。





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