恋する乙女は極道娘
作者:紫檀




片桐 蒼汰(かたぎり そうた):男子高校生
際道 沙織(きわみち さおり):女子高校生。お嬢
君島(きみしま):沙織の世話役
安原(やすはら):君島の舎弟。ヤスと呼ばれたりする


※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)





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蒼汰M「俺の名前は片桐 蒼汰。極坂(きわみさか)高校に通う、ごく普通の高校生だ」

沙織「蒼汰くん! やっほー!」

蒼汰M「彼女の名前は際道 沙織。同じく極坂高校に通う同級生で、明るくて美人な
    クラスの人気者だ」

蒼汰「あ、際道さん。どうも」

沙織「蒼汰くん、今帰り?」

蒼汰「あ、はい」

沙織「私もちょうど帰るところなんだ。方向同じだったよね? 途中まで一緒に
   帰らない?」

蒼汰「あ、はい…いいですけど」

沙織「よし、行こう!」

蒼汰M「何故か最近、際道さんはやたらと俺に話しかけてくれる。彼女に比べて
    俺はクラスでも全く目立たない方だし口数も多くない。あまりに俺がボッ
    チだから気にかけてくれてるんだろうか」

沙織「そういえば、蒼汰くんは今期のアニメは何見るの?」

蒼汰「今期は……『臨界魔法少女ぷりぷり・キューピッド』が本命かなあ。あとは
  『オーバーワーク・スリー』と『ゆるゆるりん ~私と彼女とアスタロト~』く
  らいはチェックしようと思ってる」

沙織「あ、私も同じの気になってた」

蒼汰「今年は豊作だからなあ、どれ観ようか迷っちゃうよ」

沙織「たしかに!」

蒼汰M「唯一共通点があるとすれば、俺も彼女も相当のアニメオタクだというとこ
    ろだろうか」

沙織「あ、じゃあ私ここ左だから。また明日」

蒼汰「あ、あのさ、家まで送ろうか? この後特に用事ないし」

沙織「え゛」



沙織「そ、そんな! 悪いよ!」

蒼汰「でも、もう暗いし…」

沙織「大丈夫すぐそこだから!! じゃあねバイバイ!!!」

蒼汰「あっ」



蒼汰M「こんな感じで、間違っても脈はなさそうだ。おそらく彼女は普通に良い人
   なのだろう」



《際道家本邸 正門内側》

沙織「(溜息)」

<黒服の男衆五十名ほどが整列し、一同に頭を下げる

君島「おかえりなさいやせ!! お嬢!!」

↓※男性陣三名で交互に野太い声を出して何とかしてください
男衆「「「「「「おかえりなさいやせ!!! お嬢!!!」」」」」」

沙織「ああ、ご苦労」

君島「お嬢、荷物を」

沙織「ん」

<クソデカい家のクソデカいリビングのクソデカいソファに座る沙織

安原「お嬢ッ!! 肩おもみいたしやす!!」

沙織「ああ」

君島「お嬢、タバコを」

沙織「(差し出されたタバコをくわえて)火」

君島「へい、こちらに」

※これはフィクションです。タバコは二十歳になってから。

沙織「すぅー……ぷはぁー……。どこの銘柄だ」

※喫煙は、あなたにとって脳卒中の危険性を高めます。

君島「ブラック・ロイヤル・デビルのパラダイス・チョコレートでございやす」

※疫学的な統計によると、喫煙者は脳卒中により死亡する危険性が非喫煙者に比べて約1.7倍高くなります。
(詳細については、厚生労働省のホーム・ページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/tobacco/index.htmlをご参照ください。)

沙織「ふぅー……悪くない」

君島「へえッ!! 恐れいりやすッ!!」

安原(アニキ…ッ! 今日のお嬢は機嫌がいいっすね…ッ!!)

君島(ああ…ッ!! きっと何かイイ事があったに違いねえッ!!)

沙織「くっ……ふっふっふっふっふ………」

安原「! どうされやしたか!?」

沙織「蒼汰きゅん…つったら分かるよなぁ?」

安原「へえ! あの片桐とかいうガキの事ですかい!?」

君島「ッ! 馬鹿!」

沙織「ッ!!(安原の腕を掴み)ぜりゃぁぁあああッ!!(背負い投げ)」

安原「ギャアアアアッ!!!!!」

沙織「さんをつけろよデコ助野郎!!!」

安原「し、失礼しやしたぁ!!」

君島「申し訳ございやせんお嬢!! コイツは新入りでして、俺がよく教育しとき
   ますんで、どうか!!」

沙織「チッ……次はねえぞ(座りなおす)」

君島「ありがとうごぜえやすッ!」

安原「お嬢、失礼ながらその…片桐さんというのは…」

君島「ヤスゥッ! 片桐さんはなァ、お嬢の想い人なんだよ!」

安原「なっ!!? そいつはとんだ失礼をッ!!」

沙織「……………ふっふっふ、正確には想い人『だった』んだがな」

君島「そいつは、どういうことで…」

沙織「今日、私との帰り道で蒼汰きゅんがなんて言ったと思う」

君島「一体、何と…」

沙織「『家まで送ろうか?』………ってさ」

君島・安原「!!?!?」

沙織「こりゃあよぉ……もう実質よぉ……」



沙織「『恋人』ってことだよなあ?」



君島「間違いありやせんッ!!」

安原「そいつはもうお付き合いが成立してますぜお嬢ッ!!!」

沙織「っかー! やっぱそうだよなあ!? 両想い通り越しちまったよなあ!?
   っかぁぁぁああ!!」

君島「(他の組員に向かって)おいお前らぁ!! 今夜は赤飯じゃあ! 今すぐ
   準備にかかれぇ!!」

安原「お嬢! ひとつ聞いてもいいっすか!」

沙織「何だ」

安原「お二人がもう付き合ったって事は、次はやっぱり……………………
  『キッス』……………なんすかね」

沙織「なッ!!?!?!!?!?!!?!?!??」

君島「ヤスゥッ!! テメェまた出過ぎた事をォ!!(ヤッスの胸ぐらを掴む)」

沙織「待て! 君島!」

君島「!? お嬢…!」

沙織「クソッ……! 私としたことが……完ッ全に頭から抜けてやがったッ!!」

安原「お、お嬢……!?」

沙織「まさかそんな……蒼汰きゅんと、『キッス』だなんてよォッッ!!!」


ほわんほわんほわん
《沙織、脳内》

蒼汰「おはよう、沙織」

沙織「おはよう! 蒼汰く……きゃっ! ど、どうしたの…?」

蒼汰「ごめん沙織、俺…もう自分を抑えきれねえ…」

沙織「!! …ま、まって! 私まだ心の準備が…!」

蒼汰「駄目だ。もう逃がさねえよ」

沙織「なっ……そ、蒼汰くん……」

蒼汰「まったく…ぷるんぷるんな唇しやがって……(顔を近づける)」

沙織「あっ………んっ……」


《現実》

沙織「――ンムゥッハァァァ"ァ"ア"ア"ア"ン"ンッ!!(手刀で机を叩き割る)」

君島・安原「お嬢ぉぉぉぉおおおッ!!!」

君島「ヤスゥッ!! この落とし前どう付けてくれるんじゃゴラァ!!?」

安原「すいませんでしたぁぁあ!! 指詰めてお詫びしやすゥッ!!」

沙織「落ち着けェ!!」

君島・安原「!!?」

沙織「そうだ……。感謝するぜ安原」

安原「お嬢……」

沙織「私はまだ、蒼汰きゅんの『キッス』に相応しくない」

君島「何言ってるんすかお嬢!」

沙織「事実を受け止めろ君島! 現に蒼汰きゅんとの『キッス』を想像しただけで
   、心の臓が胸を突き破りそうだ……!」

君島「お嬢………」

沙織「宴会はやめだ、今晩は修行に出る。……君島、安原」

君島・安原「へい!」

沙織「ついてきてくれるか?」

君島「ハッ…愚問ですぜお嬢」

安原「この命に代えても…最期まで御供しやす!」

沙織「…私は良い部下を貰ったな」

君島「ッ…勿体ないお言葉です!」

沙織「手に入れるぞ。蒼汰きゅんの『キッス』に耐えられる精神(こころ)を、な
   」

君島・安原「押忍ッ!!」




恋する乙女は極道娘 了


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