12月24日の恋人たち
作者:たかはら たいし
竹中 浩志(たけなか ひろし) :
杉本 義之(すぎもと よしゆき) :
運ちゃん:
※2019年1月18日 台本使用規約改定(必読)
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深夜の街中。道路脇で泥酔した杉本が吐瀉物を吐いている。
同僚の竹中は、杉本の背中を擦っている。
竹中「よっちゃーん、大丈夫?なぁ、大丈夫か?」
呻き声を漏らす杉本。
竹中「どう考えてもやっぱり飲み過ぎだよ。」
杉本「(聞き取れないぐらい小さい声で)大丈夫、大丈夫だって・・・。」
竹中「いまタクシー呼んでるから。」
杉本「大丈夫だってぇ。一人で帰れるよぉ。」
竹中「そんなにゲロ吐いてどこが大丈夫なんだよ。」
杉本「いいって。いいんだってば。」
竹中「良くないだろう。」
杉本「いいよもう!ほっ・と・い・てっ!」
竹中「ほっといてって・・・。よっちゃん、もう終電無いだろ。」
杉本「なんとかなる。なんとかなるって!」
竹中「ならないよ。終電無いのにどうすんだよ。」
杉本「・・・えっ?」
竹中「えっ、どうした?」
杉本「終電無いの?」
竹中「だからそう言ってるじゃん。」
杉本「いま何時?」
竹中「24時58分。」
杉本「えーっ・・・、そっか・・・、まだ10時ぐらいかと思ってた。」
竹中「もうとっくにてっぺん回ってるよ。・・・あ、来た。タクシー来たよ、よっちゃん。」
杉本「はい・・・。わかりました。乗りまーす!タクシーにー!」
竹中「うるさいって。」
2人の前に、タクシーが停まり、ドアが開くと後部座席に竹中と杉本が乗り込む。
竹中「すみません。お願いします。」
運ちゃん「どちら行かれます?」
杉本「杉本義之です!よろしくお願いします!」
竹中「よっちゃんうるさい!えーと、九段下の理科大前まで。」
運ちゃん「えーと・・・理科大、理科大・・・。あっはい。かしこまりました。」
竹中「お願いします。」
タクシーが静かに走り出す。
杉本「九段下ってお前・・・、なんで俺ん家知ってんだよォ。」
竹中「行った事あるからだろ。」
杉本「ええっ?お前来た事ないだろ!」
竹中「いや、何回も行ってるだろ。」
杉本「なんでお前がうちの場所知ってんだよ竹中。」
竹中「いや、だから」
杉本「(竹中の台詞を遮って)嘘だよ!うそうそうそ。」
竹中「・・・(小声で)よっちゃん、ちょっと。口にゲロ付いてるぞ。」
杉本「え?」
竹中「(小声で)いやだから、口にゲロ付いてる。」
杉本「やめろ馬鹿触るな!」
竹中「いや、でも」
杉本「(手で口元を拭き取りながら)お前、口にゲロ付くのが怖くて酒飲めるかってんだよバーロー!」
竹中「もううるさいな。ほら、ハンカチ。」
杉本「なんだよこれはぁ。」
竹中「ハンカチだって。」
杉本「おお、そうかー。木綿の、ハンカチーフってかぁ?」
一人でに笑い始める杉本。
竹中「(運転手に)すみませんねぇ、騒がしくて。」
運ちゃん「ああ、いえいえ。この時期はね。わたくし共はもうすっかり慣れっこですよ。」
竹中「あー、そうですよね。」
運ちゃん「お客さんは、今日は忘年会の帰りですか?」
竹中「いえ。仕事終わって、三丁目で二人でやってました。」
運ちゃん「ああー、そうでしたか。それなら、忘年会より楽じゃないですか?気が。」
竹中「ああー、まぁ・・・。」
運ちゃん「そういうのって。若い子も来るんでしょう?」
竹中「ええ。うちのところは今年、新卒多く採用したようで。若い子いっぱいです。」
運ちゃん「そういう若い子たちと話合います?」
杉本「いやいやいや、運転手さん!竹中はねぇ、これでも若いのに人気あるんですよぉ!」
竹中「いや、んなこたぁ無いだろ。」
杉本「こいつはねぇ!運転手さん!B'zなんですよ!」
竹中「いや、だから違うって。」
運ちゃん「えっ?B'zって、バンドの?」
杉本「そうなんですよ!こいつはねぇ!B'zなんですよ!」
竹中「いや・・・、私、B'zの稲葉と名前の漢字が一緒で。」
運ちゃん「ああー。」
竹中「それで今年入ってきた女の子にB'zの稲葉と名前の漢字同じですねって言われたもんですから。」
杉本「そうなんですよ!運転手さん!B'z乗せたことある?」
運ちゃん「うーん。B'zは流石に無いかなぁ。あれ、あれはありますよ。」
竹中「誰ですか?」
運ちゃん「AV女優のねぇ。名前なんていったっけなぁ?」
杉本「(アドリブでAV女優の名前を一人挙げてください)」
運ちゃん「いやぁ、確かそんな名前じゃなかった気がするなぁ。あー、でもね。ビデオで見るよりもずっと美人さんでしたよ。」
竹中「女優さんとか、間近で見た方が綺麗ってよく聞きますもんね。」
運ちゃん「そうなんですよ。礼儀正しくてねぇ。いい子でしたよ。」
杉本「えー、でもぉ。逆ナンものだったら良かったのにねぇ運転手さーん!」
運ちゃん「え?」
杉本「ジャンルによってはさー、女優さんとあわよくば・・・、(小声で)車内で一発やれたかもしんないのに。」
竹中「(遮って)よっちゃん!・・・もーう、ほんとにすみません。」
運ちゃん「いえいえいえ。いやぁでも、なんですかね。
そんな気は起きませんでしたけど、こういう娘が欲しかったなーって思いましたねぇ。」
竹中「あー。」
運ちゃん「お客さん達は、お子さんは?」
竹中「自分は独身です。」
杉本「はーい!13歳になる一人娘がぁー・・・、いまーす!」
運ちゃん「おお、13って事は、中学?」
杉本「来年からー、中2でーす!でも現在嫁と一人娘とは絶賛別居中でーす!」
またしても一人でに笑い始める杉本。
竹中「よっちゃんその話題はやめろよー、運転手さんすみません。」
運ちゃん「いえいえ、こちらこそ。申し訳ありませんでした。
いえね、その、ほら・・・もう日付変わって今、12月24日でしょ。」
竹中「ええ。」
運ちゃん「今日、クリスマスイブじゃないですか。」
竹中「あー、そういえばそうでしたね。」
運ちゃん「しかも今日、祝日でしょう。お仕事お休みで、お子さんいらしたら、サービスしてあげるのかと思いましてね。」
杉本「お子さんも嫁も半年別居中でーす!どうしてだと思いますかー!」
運ちゃん「えっ?」
竹中「もうその話題はやめろって、よっちゃん。」
杉本「運転手さーん。俺、今ねぇ、浮気してんだよぉ。」
竹中「よっちゃんやめろって。すみませんね。」
運ちゃん「いえ、いいんですよ。こういう仕事してるとねぇ。こういう話されるお客さんもいますから。」
杉本「だからさー嫁さんがー、嫉妬しちゃってさぁー、子供連れて秋田に帰っちゃったのよー。」
運ちゃん「そうですか。じゃあ今年は、淋しいクリスマスになりそうですね。」
杉本「ノンノンノン。そんなこたぁ無いよ。おれ、浮気相手と過ごすからさー。」
竹中「よっちゃん、そんなこと、声に出して言うもんじゃないよ。」
杉本「運転手さんはどう?あるぅ?浮気したことー!」
運ちゃん「いやいや、ありませんよ。」
杉本「浮気したいって思った事あるでしょ?」
運ちゃん「いやぁ。私はもう結婚して今年で30年になりますけど。うちの妻、空手やってたんですよ。極真空手。」
竹中「ああ、私も若い時分にやってましたよ。」
運ちゃん「うちの妻はね、黒帯。」
竹中「ほぉ〜、それは凄いですね。」
運ちゃん「ええ。ですから、私が浮気なんてした日にはボコボコにされちゃいますよ。」
杉本「運転手さんの奥さんは武闘派なんだぁ。
・・・うちの浮気相手はね、虫も殺せないような奴よ。奥さんはぁー、もうほんとに性格悪い女だけども。」
運ちゃん「ほー、お優しい方なんですな。」
杉本「やさしい、やさしい。ついでにおせっかい!妻はエイリアン!」
竹中「いや、よっちゃん。尽くしてくれる人におせっかいとか、その言い方は流石に無いだろ。」
杉本「おせっかいだろうがよー。もーう、ねぇ。何かにつけていちいち心配して来るの。大丈夫だって言ってんだよ俺はさー!」
運ちゃん「いやぁ、でも心配して下さる方がいるってのはねぇ。いい事ですよ。」
竹中「そうですよね。大体よっちゃんが普段だらしないのがいけないんだろ。」
杉本「だらしなくねぇよー。ピシッとしてるらろ、ピシッと。でねぇ、運転手さん。聞いてよ、ちょっと聞いて。」
運ちゃん「はい。」
杉本「もーね。ほんとにいちいち口うるさいんだ。もーう、小姑みたい!」
竹中「小姑って。よっちゃん、その言い方は酷いんじゃないか。」
杉本「小姑みたいだから小姑みたいだって言ってんだよバカ野郎!」
竹中「ちょっと・・・、よっちゃん落ち着けよ。」
運ちゃん「いや、でも、今のお相手さんは世話好きなんですな。」
杉本「そうなんだよ。部類の世話好きだよ、ありゃあ。世話さえあれば生きていける!お金とかいらない!」
運ちゃん「でも、ほら?最近、身寄りの無い高齢者が孤独死するニュースよくやってるでしょ?
あれを見て、世話をしてくれる人間が身近にいるって事は幸せな事なんじゃないかと、私はしみじみ思いますけどね。」
竹中「そうだよ、よっちゃん。奥さん実家に帰っちゃって世話してくれる人いなくなっちゃったんだから、それはありがたい事だと思いな。」
杉本「思ってる、思ってる。俺だってそんな事は言われなくたって、ちゃんと思ってんだよ。」
竹中「そうなの?」
杉本「そうだよ。ねぇー、運転手さん。ちょっと聞いてくれよ。」
運ちゃん「なんですか?」
杉本「いや、もうね。今の相手はすごい優しい奴なのよ。もう妻とは雲泥の差。例えばさぁ、例えばだよ?」
運ちゃん「はい。」
杉本「俺が今日にみたいに酔っ払うとねぇ。介抱して、家までちゃんと送ってくれるの。」
竹中「ほら。そこまでしてくれるなんて、いい人じゃないか。」
杉本「あと!それから!料理がさぁ、これがまた旨ぇんだ・・・。」
竹中「ああ・・・、そうなんだ。よっちゃんはさぁ、いつも、ほら・・・。仏頂面で飲み食いしてるけど、美味しいと思う事あるんだね。」
杉本「冗談はよしこさんだよおまえ・・・、俺だってなぁ、物食べるときはいっつも思ってんだよ。」
竹中「なにをよ?」
杉本「えー?そりゃあれだよ。“おお・・・、こいつは凄い。米を盗んでいく泥棒、いわゆるメシ泥棒の味だ”って、思ってるよ。」
運ちゃん「ああ、そういえば、なんかそういうドラマ流行ってますよね。」
竹中「ああ。孤独の、」
杉本「(竹中の言葉を遮って)孤独じゃねーよ、お前ほら、俺には恋人がいるからよ。」
竹中「でも。よっちゃんもそういう風に、内心思ってるんだな。」
杉本「だからそうだって言ってんだろぉがよぉ。」
運ちゃん「お相手さんの得意料理とか、あるんですか?」
杉本「そんなもん、全部旨いに決まってんじゃないっすかァー。」
竹中「へぇ・・・、そうか。よっちゃんの口からそんな事はじめて聞いたよ。」
運ちゃん「料理上手なんですなぁ。」
杉本「卵焼きが一番好き。」
竹中「全部じゃないのかよ。」
杉本「一番はそりゃ、卵焼きだよ。甘めのやつ。あれはー、正直言うと、お弁当に毎回入れてほしい。」
竹中「へえー。」
運ちゃん「お相手さん。お弁当も作ってくれるんですか?」
杉本「そうだよぉ。お弁当だけじゃなくて、家事も全部やってくれる。」
竹中「全部やらせてるの間違いなんじゃないか?」
杉本「んな事は無いよ。あれは、善意の塊で出来てるような奴だから善意でやってんだろ多分。」
竹中「いや、相手も実は手伝ってほしいとか思っ」
杉本「(竹中の言葉を遮って)ないないないない!」
竹中「いや、内心どこかで思ってるって!」
杉本「無い!」
竹中「わかんないじゃないか。ねぇ、運転手さん。」
運ちゃん「えっ?まぁ、そうですねぇ。」
竹中「運転手さんも手伝ったりされますよね?」
運ちゃん「ああ、まぁ。私とか夜こうやって働いてますから、家事はかみさんに任せっきりですけど、休みの日とかは手伝ったりしますよ。」
竹中「ほら、聞いたかよっちゃん。」
運ちゃん「いやいや、必ずってわけじゃありませんけどね。まぁ、かみさんにはいつも感謝してますよ。」
杉本「そりゃ俺だって感謝してますよぉ。」
竹中「本当に?」
杉本「してるよしてるしてますってぇ。」
竹中「よっちゃん。もっと、そういう感謝の気持ちを相手に伝えた方がいいんじゃない?」
杉本「・・・。」
竹中「よっちゃん?」
杉本「・・・。」
竹中「おい、よっちゃん、どうしたんだよ。」
杉本「いやぁ、でもねぇ。俺は思ってる事がある!浮気なんてするもんじゃないと思った!」
竹中「え?」
杉本「やっぱりね。かみさんと娘の事をどこか気にしちゃうから浮気は良くない!」
竹中「・・・。」
運ちゃん「まぁ・・・、そうですよね。」
杉本「だから感謝してるんだけどさぁ・・・、後ろめたい。付いてくんの。後ろめたいのが後ろからずーっとついてくんだよ。」
竹中「まぁ・・・、そうだろうな・・・。」
杉本「あと!あとな!相手ももういい年だから!」
運ちゃん「ああ、お相手さんの事を考えちゃいますか?」
杉本「違うッ!加齢だよ加齢!」
竹中「は?」
杉本「運転手さん加齢ってあれね?カレーライスの事じゃないよ!加齢臭がプンプンなんだあいつ!」
竹中「ああ・・・。」
杉本「香水付けろって言ってんのに、いやそういうのは抵抗あるって、もーう頑なに付けようとしない!」
竹中「(自分のスーツの袖の匂いをかぐ)」
杉本「抵抗じゃないんだよ!そういうのはエチケットでしょう!エチケット!ねー?運転手さん!」
運ちゃん「ああ、でも、まぁ・・・。抵抗があるなら仕方無いんじゃないですか?」
竹中「そ、そうだよ。よっちゃん。嫌がってるならしょうがないだろ。」
杉本「(竹中を無視して)あとそれから髪の毛!最近、髪の毛がかなりかわいそうになって来た!」
竹中「えっ?」
杉本「もーうね!人の世話ばっか妬いてて自分の事はものすごい鈍感なんだあの馬鹿野郎!」
竹中「馬鹿野郎は無いだろ。それだけ尽くしてくれてる人に対して酷いじゃないか!」
杉本「お前なに怒ってんだ。」
竹中「よっちゃん。感謝してるって言ってたけど、全然感謝してないじゃないか。」
杉本「してるよ。」
竹中「全然伝わって来ないよ。」
杉本「してるよ。」
竹中「だからわかんないって。よっちゃんは、あれかい?感謝してる人間にハゲって言うのかい?」
杉本「ハゲてるんだから仕方ないだろ!頭が!」
竹中「そういうのが酷いって言ってんだよ!それに体臭が臭いとか、感謝の気持ちが伝わってこないよ!」
杉本「臭いんだから仕方ないだろ!体が!」
運ちゃん「まぁまぁ、お客さん・・・。」
竹中「よっちゃんがそんなだから。奥さん実家帰っちゃうんだよ!」
杉本「だからなに怒ってんだ竹中。」
竹中「・・・。」
杉本「竹中!」
竹中「・・・。」
杉本「このハゲ!」
竹中「(露骨に舌打ちする)」
杉本「なんで怒ってんだよ。」
竹中「・・・。」
沈黙。
運ちゃん「あのー・・・、そろそろ理科大ですけど。」
竹中「少し先にある教会の前で停めてください。」
運ちゃん「わかりました。」
竹中「こいつ降ろしたら、錦糸町の駅前までお願いします。」
運ちゃん「錦糸町の駅前ですね。」
杉本「なんだお前、帰んのか。」
竹中「帰るよ。」
杉本「なんだお前。泊っていかねーのか。」
竹中「当たり前だろ。あんな言い方してたら誰だって不快になるよ。」
杉本「なんだよいいじゃないかよ。」
竹中「やだよ。」
杉本「いいじゃん。今日も泊まっていけよー。味噌汁作ってくれ。」
竹中「それぐらい自分でやれるだろ。」
杉本「お前の作ったのがいいんだよ。」
竹中「よっちゃん、悪いんだけど。今日はもう帰らせてくれ。」
杉本「・・・わかった。」
間
杉本「じゃあ運転手さん!教会の前で停まらないでいい!」
運ちゃん「えっ?」
竹中「よっちゃん!」
杉本「錦糸町!このまま錦糸町向かっちゃって!俺、今日お前ん家泊る。」
竹中「ダメに決まってんじゃないか。」
杉本「だったらお前うち泊っていけよバーロー!」
運ちゃん「えっえっ?あのー、お客さんどうされます?」
杉本「錦糸町で!」
竹中「よっちゃんわかったわかったよ!行きゃいいんだろ!・・・そこの手前で停めてもらって結構です。」
運ちゃん「わかりました。」
竹中「すみません。よっちゃん、運転手さんを困らせるなよ。」
杉本「お前が素直に来ないからだろうがよ。」
竹中「だから行くよ、行くって。」
運ちゃん「そこの角でよろしいですか?」
竹中「はい。」
タクシーが停車する。
運ちゃん「ここでよろしいですか?」
竹中「あ、はい。えーと、じゃあ五千円で。」
運ちゃん「ありがとうございます。領収書は?」
竹中「あ、お願いします。」
杉本「竹中、コンビニでクリスマスケーキ買って帰るか。」
竹中「えーっ・・・。誰が食べるんだよ。」
杉本「二人で食べるのがいいんだろうがよ。」
運ちゃん「はい。じゃあこちらお釣りになります。お気を付けて。」
杉本「運転手さん、最後!最後に一つ言わせて!」
竹中「ちょっとよっちゃん、早く降りて。」
杉本「(竹中を無視して)さっき言った浮気相手の恋人ねぇ、こいつなんだよ!」
運ちゃん「・・・・・・えっ?」
溜息を吐く竹中。
杉本「俺たち、仲良すぎてなぁ。こいつをしょっちゅう寝泊まりさせてたら、嫁さん嫉妬して出てっちゃったんだ。」
運ちゃん「えっ・・・、あの、本当に?」
竹中「ええ・・・、まぁ・・・。よっちゃん、運転手さんに言う必要ないだろ。」
杉本「バカ野郎。お前恥ずかしいのが怖くて野郎と付き合えるかってんだバカ野郎。」
竹中「ああもうわかったわかった。ほらケーキ買って帰るよ。」
運ちゃん「いやぁー、びっくりしました。」
竹中「いやー、お恥ずかしい・・・。あの、どうもありがとうございました。運転手さんも、お気を付けて。」
杉本「メリークリスマース!」
杉本と竹中が、街中に消えていく。
運転席のガラス越しから運転手が二人を眺めている。
間
運ちゃん「いやぁ、クリスマスの恋人たちってのも、色々あるもんだなぁ。」
運転手が、ふっと笑みを浮かべる。
運ちゃん「・・・俺も、今日はケーキ買って帰るかな。かみさんに“あんた柄にも無い”って、きっと言われるんだろうなぁ。」
12月24日、深夜の街。
タクシーは、再び走り始めた。
完
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